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2011年9月15日 (木)

「サトウの切り餅」と 越後製菓の特許(2)/「同じ」と「違う」(30)

越後製菓(新潟県長岡市)が、同業の佐藤食品工業(新潟市)に、「サトウの切り餅」など5品目の製造・販売差し止めや賠償を求めた訴訟の控訴審で、知財高裁は7日、佐藤食品による特許権侵害を認める中間判決を言い渡した。
この訴訟は、地裁では「特許権の侵害には当たらない」と判断されたものである。
⇒2010年12月 1日 (水):「サトウの切り餅」と 越後製菓の特許/「同じ」と「違う」(24)

判断が結果的に逆転したわけで、知財争訟の難しいところである。
高裁の判断は次のようである。

知財高裁のジャッジは“正解は、越後製菓!”だった。09年4月、越後の提訴によって起きた、業界トップと2番手の訴訟。飯村裁判長は「佐藤の切り込みは越後の発明の技術的範囲に属する」と1審判決を覆した。
越後の切り餅には、焼き網に置いたとき一般的に側面となる面に、ぐるりと全周切り込みが入っている。焼けてもきれいにふくらむ技術として、02年10月に特許出願し翌03年から販売開始。特許登録は08年だった。
一方、佐藤の製品「サトウの切り餅 パリッとスリット」は、長い方の側面2面に各2本、上下面に十字形の切り込み。特許の出願は越後より9カ月後の03年7月だったが、04年11月には特許登録されていた。
特許の侵害を主張する越後側に対し、独自の技術開発とする佐藤側の言い分は真っ向から対立。越後の特許は「切り餅の底面や上面ではなく側面の切り込み」となっていることから、1審判決では「越後の特許は側面に限られる」と認定し、特許侵害には当たらないと判断された。ところが控訴審では「底面と上面に切り込みを設けるものを含まないという意味ではない」と判断された。

Photo_2
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2011/09/08/kiji/K20110908001577270.html

私見では一審の東京地裁の判断には違和感があったので、今回の知財高裁の中間判決は妥当なものであると思う。
越後製菓の特許の本質は、「焼いても形が崩れないよう」「切り込みを入れた」ことにあり、「佐藤食品は側面のほか上下の面に十字形の切り込みを入れていた」からといって、本質を侵害していることを回避できないと考えられるからである。
上掲記事によれば、佐藤食品のスタンスは下記の書き通りである。

製造差し止めを求められている5商品は佐藤の年間売上高約270億円のうち実に100億円程度を占めているといい、佐藤は「最高裁への上告を視野に争っていく」と徹底抗戦の構え。両者の“遺恨”は、餅の表面の溝よりも、はるかに深くなりそうだ。

佐藤食品も簡単には引き下がれない。
争いは続きそうである。

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