「閣内てんでんこ」の野田ドジョウ政権と言葉の力
野田内閣がまずまずの支持率でスタートしたと思ったら、閣僚やら党要職の失言(?)が相次いでいる。
一川防衛相に関してはすでに触れた。
⇒2011年9月 4日 (日):シビリアン・コントロールとは何か
平野博文国会対策委員長は、7日の与野党国対委員長会談で、臨時国会の会期を13日から16日までの4日間と提案した理由について「今の内閣は不完全な状態で、十分な国会答弁ができない」と説明した。
野田内閣は10人が初入閣。野党はシビリアンコントロール(文民統制)を巡って失言した一川保夫防衛相らを追及する構えをみせている。こうした中での平野氏の「不完全」発言に野党は反発。公明党の漆原良夫国対委員長は「与党国対委員長の言葉として非常に重い」とその場で抗議した。結局、会期を巡る与野党の主張は平行線のまま、結論を8日以降に持ち越した。
平野氏は会合後「内閣が発足したばかりで体制が整っていないという意味だった」と釈明したが、身内に「不完全」と指摘された政府側の反応も複雑。藤村修官房長官は7日の会見で「いちいちコメントしない。(答弁は)しっかりやれると思っている」と語った。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110908ddm005010202000c.html
国民からすれば、不完全であろうとなかろうと、すでに船出をしてしまっている内閣である。
しかも、稀に見る悪天候という条件下である。
適格性を欠いている人は、直ちに交代してもらいたいと思う。
平野氏はまた、閣僚のTV出演を自粛すべきだと要請したという。
野党側が「閣僚はテレビに出て発言している」と指摘すると、平野氏は、閣僚のテレビ出演の自粛を政府に要請したことを明らかにした。
自民党の石破政調会長は「政策を国民にご理解いただくべく、メディアに出るっていうのは、わたしは閣僚の責務だと思います。ぼろを出すのは嫌だから、テレビに出るのはやめろというのは、これをして本末転倒」と述べた。
これに対し、民主党幹部は「滑り出しの良い内閣だから、失言する場を与えないのは当然」と述べた。
一方、藤村官房長官は会見で、内閣として、テレビ出演を自粛する考えはないと述べた。
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00207099.html
三陸地方には、津波から逃げるときには、家族といえども「てんでんばらばら」に自分のことだけ考えないと逃げ遅れる、というような教訓を含めて「津波てんでんこ」という言葉があるそうである。
閣内不一致どころか、「閣内てんでんこ」のありさまである。
野田新首相は、代表選の演説で「どじょうがさ 金魚のまねすることねんだよなあ」と相田みつをの言葉を引用して好感されたらしい。
自身「大好きな言葉」ということで、自身をドジョウにたとえ、「(ドジョウは)金魚のまねをしてもできない。泥臭く国民のために汗をかいて(略)ドジョウの政治をやり抜きたい」と抱負を述べてもいる。
まあ、格調が高いとはいえないが、人柄を示しているとはいえる。
一種の「言葉の力」といえよう。
猪瀬直樹東京都副知事の『言葉の力 - 「作家の視点」で国をつくる (中公新書ラクレ)』(1106)が好評らしい。
思考は言葉を媒介にして行われるから、「言葉の力」とは「思考の力」ともいえよう。
そういう視点で考えると、鉢呂吉雄経産相の発言も、単なる失言とは言えないのではないか。
鉢呂吉雄経済産業相が9日午前の会見で、8日に視察した東京電力福島第1原発の周辺市町村について「“死の町”だった」と発言した。夕方の会見で陳謝したものの、夜になり、視察後に防災服を記者にすりつけ「放射能をうつす」という趣旨の発言をしていたことも発覚。野田佳彦首相は「不穏当」と強い不快感を示したが、野党は一斉に批判。13日召集の臨時国会でいきなり任命責任を追及されるのは必至だ。
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2011/09/10/kiji/K20110910001592190.html
確かに、立ち入りが禁止されている(立ち入れば処罰される)から、ひと気が欠けていたであろう。
それを“死の町”と表現するかとは思うが、表現力の欠如と言えなくもない。
しかし、「放射能をうつす」というのは、どういう神経かと思う。
「汚染で苦しむ皆さんのことについてマスコミの皆さんにも共有して頑張って難局を乗り越えていきたいということでありますので……」と弁解しているが、説明になっていない。
鉢呂氏も適格性に疑問符をつけたい。
と書いていたら、TVで「辞表を提出」の臨時ニュースが流れた。
一度発した言葉は、消しゴムで消したり、コンピュータでDELETEするようにはいかない。
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