台風15号と国土の条件/花づな列島復興のためのメモ(5)
台風15号は、北海道東方においてさえ、かなり強い勢力を保っていた。
結果的に軌跡をみると、東日本大震災の被災地を狙い撃ちしたかのようである。
http://www.yomiuri.co.jp/weather/typhoon/
沖縄付近で停滞しながら1回転していたときの様子は、どこから日本列島を攻めようかという意思を持った生物のように思われた。
あげくに浜松付近に上陸した。ど真ん中である。静岡県に上陸したのは4年ぶりだとか。
その後は上図のように、東日本大震災の被災地の方向に進路をとった。
被災地では、地震で低くなった土地は水が漬き、仮設住宅への浸水もみられた。
また、15号以前の雨でダメージを受けていた紀伊半島などでは、水害の追い打ちにあった。
⇒2011年9月 6日 (火):台風12号による降水被害/花づな列島復興のためのメモ(3)
15号台風は、国土の弱った箇所に集中攻撃を仕掛けたとしか思えない。
その中で、名古屋市がいち早く100万人の避難体制を敷いたのが注目される。
河川の増水が激しかった名古屋市では20日から21日にかけて、市人口の約半数にあたる100万人超に及ぶ住民に、異例の避難指示・勧告を出した。決断の背景には平成12年に死傷者51人を出し、対策が後手に回った「東海豪雨」の教訓があった。市は被害を最小限に食い止めた「早めの対応」を肯定的にとらえる。一方で、実際の避難者は5千人弱にとどまっており、広報体制や避難先の確保などで課題も残った。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110921/dst11092123580081-n1.htm
「東海豪雨」は、まさに高橋裕『国土の変貌と水害』岩波新書(1971)が指摘していたことが起きたといえよう。
国土が都市化するのに伴い、排水条件が悪くなる一方で、水害を受ける人間の活動や物件は増大するので、水害は深刻化する。
寺田寅彦の戦後版である。
もともと名古屋は治水条件の悪いところである。
太古(約2万年前)、濃尾平野は海だった。
http://www.cbr.mlit.go.jp/kisokaryu/chisui/01noubi.html
それが沖積平野が形成され、人間が集積した。典型的な国土の変貌である。
濃尾平野の治水で名高いのは、宝暦治水と薩摩義士の話である。
伊藤信『宝暦治水と薩摩藩士』鶴書房(1954)等の書籍がある。
なぜ遠隔の薩摩が木曽三川の治水に?
この背景にはお庭番の情報で薩摩が中国・琉球との密貿易などで莫大な富を得ている噂、その力をそぐ狙いもあったと見られる。他に関が原の報復との説もある。薩摩は関が原で石田三成の西軍に組み、敗戦の最中、敵中突破の敗走を成功させた経緯がある。さらに御三家尾張との縁談失敗もありました。吉宗公の姫君との縁談など資金の浪費で藩の財政破綻を虎視眈々と狙われていた。
http://www.finvic.com/syumi-18.html
木曾三川の流路が固定されるまで、東海道は熱田から桑名へ、いわゆる「七里の渡し」と呼ばれる海路だったのだ。
木曽三川渡河は東海道開設1601年(慶長6年)には幕府防衛政策で内陸路から海路(七里の渡し)に定まり、桑名~熱田の宿場が正式になっていったのです。「※船の苦手な者、女・子供連れは熱田からの陸路の脇街道:佐屋街道を利用した」。江戸期の後半、熱田・桑名の繁栄は街道一とかで、旅籠の数でも両方で500軒に近かったとも言われている。
http://www.finvic.com/syumi-18.html
私も桑名を訪れたことがあるが、すっかり変貌していて往時を偲ぶのは難しかったことを覚えている。
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