「10シーベルトの放射線」の意味するもの/原発事故の真相(6)
今月1日の、東電福島第一原発で、10シーベルト/時以上の放射線を測定した、という発表には驚かされた。
事故後に測定された放射線では最高値で、一度に浴びると確実に死に至る量だ。放射線源は不明。発電所周辺のモニタリングポストの計測値は上がっておらず、環境中への放射性物質の漏れは確認されていないという。
東電によると、毎時10シーベルト以上が測定されたのは主排気筒の根元付近。原子炉格納容器の圧力を下げるためのベント(排気)の際に気体が通る「非常用ガス処理系」の配管が主排気筒につながるところで測定された。
1日午後2時半ごろ、がれきの撤去により放射線量がどれくらい下がったかを調べるため、防護服を着た作業員3人がこの部分の配管の表面を外側から測定したところ、器具の測定上限である毎時10シーベルトを示した。実際の線量は10シーベルト以上とみられ、管の内部はさらに高い可能性があるという。
http://www.asahi.com/national/update/0801/TKY201108010451.html
先ず、その強度である。
改めて、3月14日、3号機で水素爆発が起きた時のニュースを振り返ってみよう。
3号機近くにある中央集中制御室には13~15人残り、炉内へ冷却水を注入する作業を継続している。格納容器周辺の放射線量に大きな変動はみられない。午前11時30分現在、残存した原子炉内の燃料棒は、上部約1・8メートルが冷却水から露出し、危険な状態が続いている。発電所正門付近の放射線量は1時間あたり50マイクロ・シーベルトで、同44分には20マイクロ・シーベルトに低下した。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110314-OYT1T00313.htm
50マイクロシーベルトである。
マイクロは100万分の1を意味する。
それだけの強度の放射線が今まで測定されていなかった、というのが驚きの第一である。
私たちは、原発事故の真相について、何ほどのことが分かっているのだろう。
枝野官房長官は、「ただちに健康に影響はない」と言い続けてきたが、「ただちに」でなければ影響がある、という意味だろうか?
もし、そうならば、この言い方は欺瞞であろう。
メルトダウンを認めたのは、2カ月後の5月12日であった。
⇒2011年5月16日 (月):フクシマの現状と見通しは?/やっぱり菅首相は、一刻も早く退陣すべきだ(30)
誰の言うことを信じたらいいのか?
⇒2011年5月25日 (水):誰を信じればいいのだろうか?/やっぱり菅首相は、一刻も早く退陣すべきだ(35)
枝野氏は上記のような様子だし、細野原発事故担当相は、「パニックになる」という理由で、情報を開示しなかった。
⇒2011年5月26日 (木):情報を隠蔽していた(ウソをついていた)のは誰か?/やっぱり菅首相は、一刻も早く退陣すべきだ(36)
⇒2011年5月27日 (金):情報の秘匿によりパニックは回避されたのか?/やっぱり菅首相は、一刻も早く退陣すべきだ(37)
やはり、フクシマの危険性を「事前に」警告してきた人の意見を聞きたくなる。
その1人、高木仁三郎氏はもういない。
⇒2011年7月30日 (土):地震・津波による原発災害を予見していた高木仁三郎と市民科学者育成のための「高木学校」
広瀬隆氏も原発の危険性について指摘してきた人である。
広瀬氏は週刊朝日連載の『原発破局を阻止せよ!20』(8月19日号)で次のように言っている。
一体、この異様な放射能の発生源はどこだろうか……東電が言うように主排気筒近くだけであるはずはない。
・・・・・・
この放射線を発しているのは、2号機近くである。仮に最悪の事態を推測するなら……その格納容器は、爆発によって底が抜けて、メルトダウンした灼熱のウラン燃料が地底にめりこんでいるとも言われる。
・・・・・・
(東電の推測の通りだとすれば)事故直後からメルトダウンした燃料のかたまりが格納容器に流れ込み、トンデモナイ量の放射性物質が福島の大気中に放出されたことになる。
中部大学の武田邦彦教授は次のように整理している。
福島原発で10シーベルトが観測されたというのは、その辺の瓦礫や建物、地面などが「300億ベクレル」の放射性物質があるということです。
・・・・・・・・・
この300億ベクレルというのはどういう数字かというと、
1) 福島原発全体の放射性物質量 約6亥ベクレル(土偏と思う)
2) 漏れたと推定される量 100京ベクレル
3) 福島原発の近くに100分の1があるとして、 1京ベクレル
4) 今回の量 300億ベクレル
5) 福島原発付近にあると思われる量に対して、今回の量は、300万分の1
ということです。つまり、福島原発の掃除では問題になりますが、社会には影響のない量です。
http://takedanet.com/2011/08/10_1367.html
それにしても、政府や東電のいうような「順調に収束にむかっている」状況とは思えない。
作業員の労働環境や原子炉の安全性は、本当はどう考えるべきなのか?
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