人心を失っても即退陣しない強大な首相の権力
菅首相が退陣することになった、と言って今回は間違いなさそうである。
6月2日の民主党代議士会で退陣表明したと思わせてから3カ月近く、まさに粘り腰というべきであろう。
この間、菅氏の必死の努力にもかかわらず、内閣支持率は浮上することはなかった。
時事通信が5~8日に実施した世論調査によると、菅直人首相が訴えた「脱原発依存」社会を目指す考えについて「納得できない」が47.7%で、「納得できる」の40.2%を上回った。また菅内閣の8月の支持率は前月比0.8ポイント増の13.3%でほぼ横ばい。不支持率は前月と同じ71.2%だった。
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一方、次期衆院選の時期について、「できるだけ早く」が33.6%、「年末までに」が21.3%。「来年」の16.4%も合わせると、来年までの衆院解散・総選挙を望む回答が7割に上り、「再来年夏の任期満了まで行う必要がない」の19.8%を大きく引き離した。
http://www.jiji.com/jc/v?p=ve_pol_cabinet-support-cgraph
私は異端好きというか、概して異端だから、という理由で排除はしないし、してこなかったつもりである。
だから、支持率が低いから退陣すべきだとは思わない。
しかし、菅氏自身の「1%になっても辞めない」という発言には、やはり「No!」と言わざるを得なかった。
⇒2010年11月28日 (日):菅首相の「支持率1%になっても辞めない」発言の真意は?
また、伸子夫人が、「支持率は、マイナスになることはないでしょう……」と言ったと報じられたが、それは傲慢であるというより誤った認識であると考える。
マイナスか否かは、支持率の数字ではなく、「支持-不支持」の正味の支持率で捉えるべきだと思うからだ。
⇒2011年3月 5日 (土):与謝野馨氏は疫病神か?
それにしても、首相の粘りによって、与党の執行部(幹事長)が8月の旧盆前、と想定した時期よりずれ込んだことは間違いない。
政府・民主幹部が26日、菅直人首相の早期退陣で足並みをそろえた。想定する具体的な退陣のタイミングは8月のお盆前。首相交代のバトンリレーの期間をこの時期に設定した背景には、首相による「脱原発」解散を封じる狙いがある。
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なぜ、「お盆前」か。
東日本大震災の発生によって、被災地の首長選や地方議会選が9月22日まで延期されている。これに伴って、常識的には9月22日まで国政選挙を実施するのは困難だとみられている。
ただ、憲法の規定によると衆院選は解散後40日以内に行うとされており、8月中旬以降の解散なら、大震災の影響を考慮せずに選挙を実施できる。逆に言えば、8月上旬までに首相にバトンを手放してもらわないと、「脱原発」解散の可能性が出てくる。
解散回避のために、お盆前までに首相を辞めさせなければならない。
【民主漂流】お盆前退陣目指す執行部 岡田氏「非常にくだらない選挙」の悪夢を懸念
与党の幹事長といえば、権力の中枢である。
二大政党制下では、野党であっても党執行部に権限が集中していくと考える。民主党では、政権交代前からが小沢一郎氏が党代表として、強力な権限を行使していた。特に、新人候補を大量公認した反面、岩國哲人元副代表ら現職候補や当時落選中だった海江田万里氏を「選挙区での活動量が少ない」として党の一次公認から外すなど、「公認権」「資金配分権」を存分に用いて党内権力を掌握した。
http://diamond.jp/articles/print/13585
だからこそ、菅氏は、「脱小沢」に執着した。
解散権は首相の手にある。
そのことが、与党執行部を敵に回しても延命が可能な首相の権力の源泉である。
⇒2011年8月 5日 (金):与党が首相退陣の条件を整えるためにマニフェストを放棄する不可解
小選挙区制では必然的に二大政党化が進む。同時に、二大政党の候補者でさえ落選のリスクが大きくなり、すべての政治家が総選挙を恐れるようになって、「解散権」の伝家の宝刀としての有効性が高まったのだ。
結果として、日本の首相は強力な権限を持っているのである。
次の首相には、そのことをわきまえた人になっていただきたい。
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