「花背」の思い出と往時渺茫たる長期的記憶の秘密/京都彼方此方(2)
昨日、小中学校時代の同窓会があった。
小学校区と中学校区が同一なので、基本的には9年間を共にした仲間である。もともと110人余の集団であったが、既に19人が亡くなっている。まあ、年齢相応の率かも知れないが、やっぱり寂しいものである。
事前の情報では、奈良や松本に居る人も出たいということであったが、それぞれ欠かせぬ用事ができたということで欠席となった。
中には私の発病のことを初めて聞いたと言って、驚いていた人もいるが、多くの人は、昨年退院直後の集まりの時か1月の同級生の通夜以来で、「元気になった」と喜んでくれた。
⇒2011年1月 9日 (日):同級生の死(2)
出欠席通知のハガキの情報では、同級生の1人がやはり脳梗塞に罹り、現在リハビリ入院中だとのことである。
豪快な酒飲みだったから、彼の場合もなるべくしてなった、という気がしなくもない。
私たちの年齢になると、何かしら身体の不調を訴える人は少なくない。
しかし、同窓会に出席できるだけでも可と考えるべきかもしれない。
今朝の産経新聞に、安野光雅さんの「花背」が載っていた。「洛中洛外」の第4回である。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110807/art11080702430000-n1.htm
「花背」といえば、安野さんの絵のように、京都市の北部の山里である。
私にとっては、学生時代にスキーを初めて体験した場所であり、山好きの親友と低山徘徊した思い出の地である。 改めて地図を見ると、鞍馬よりさらに大分奥に入っている。
これでも左京区であるから、左京区域はずい分広い。
ネットで調べてみると、スキー場はずっと前に閉鎖されてしまったようだ。
私の記憶もすでにほとんど失われていて、スキーも体育の時間に行ったのか、友人と出かけたのかも定かではない。
往時渺茫である。
そういえば、立原正秋の『春の鐘』 に花背に天魚(アマゴ)を食べに行くシーンがあった。
⇒2010年12月26日 (日):「麗し大和」と法隆寺論争/やまとの謎(21)
主人公の鳴海と多恵は京都の八条口からタクシーで鞍馬を抜け、花背峠を越える。
奥山荘についたとき雨は小止みになっていた。車からおりたら、いきなり流れの音がきこえてきた。
「あら、この音、久しぶりだわ」
多恵は流れのそばに歩いて行った。降り続いていたので水は濁っていたが、水量が多かった。流れの向かい側は急斜面の杉林で、頂上の方は靄がかかっていた。雨後の濡れた風景が日本画になっていた。
昨日といい、懐旧的な気持ちが強い。
そう言えば栗本慎一郎『栗本慎一郎の脳梗塞になったらあなたはどうする―予防・闘病・完全復活のガイド』たちばな出版(0005)に、昔の記憶を思い出したら危険信号と思え、というようなことが書いてあった。
右海馬がやられると、長期の言語的記憶というものが強化されるらしい。強化というより、記憶の奥底から浮かび上がって.くるわけである。
長期の言語的記憶というとなにやら難しいが、要するに、昔の友達のだれそれはいい奴だったとか、中学校のあの教室は懐かしいなとかいうものだ。初恋のだれそれもよく出てくる「定番」らしい。
・・・・・・
「男は昔の仲間(や初恋の人)に無性に会いたくなると死ぬ」ということわざをを知っているだろうか。実は脳梗塞にやられた作家の永倉万治が、やはり、倒れる前、昔の仲間に会いたくなって、会いに行ってしまったら倒れたという話が私にも伝わってきていた。
私は発症前にそういう気になっていたかどうか、記憶はない。
なにやら都市伝説の一種かとも思うが、身に覚えのある人は要注意。
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