海江田経産相の号泣に価値はあったか?
海江田万里経産相が、経産省首脳を更迭し、自らも辞任する意向だという。
海江田万里経済産業相は4日、経産省の松永和夫事務次官、寺坂信昭同省原子力安全・保安院長、細野哲弘同省資源エネルギー庁長官を更迭する意向を固めた。東京電力福島第1原発事故の対応や、原発のシンポジウムで原子力安全・保安院が電力会社に「やらせ」を要請したとされる問題の責任を明確にする。
海江田氏は松永、寺坂、細野の各氏に更迭の意向をすでに伝えており、菅直人首相も了承している。経産省首脳の更迭について、海江田氏は3日夜、記者団に「人事権者は私だ」と述べ、自らの判断で行う意向を強くにじませていた。
海江田氏自身はすでに辞任の意向を表明しており、3日夜には民放番組で「必ずどこかで辞めなければいけない。覚悟は決めている」と重ねて強調した。更迭後、速やかに自らの辞表を首相に提出する考え。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110804/plc11080409180008-n1.htm
一方、今日の日経新聞は次のように報じている。
海江田万里経済産業相は3日、原発賠償支援法が成立したことを受け、記者団から「一定の責任を果たせたと考えるか」と聞かれ「一定ということでは果たせた」と語った。菅直人首相(党代表)の後継を決める代表選への出馬に関しては「考えたこともない」と述べた。
海江田氏は同日夜のTBS番組で「必ずどこかで辞めなければいけない。その覚悟はできている」と強調。経産省所管の再生エネルギー特別措置法案に関しても「責任を持たなければいけない」と話した。辞任時期には触れなかった。
経産相はつい先日(7月29日)の衆院経産委員会で号泣したことが話題になった。
「なでしこジャパン」に見られるように、女性ははつらつとして元気がいいが、男は大臣まで草食系になったのだろうか?
それにしても、大のオトナの代表である大臣が、国会審議の場で泣きだすとは尋常ではない。
号泣するに至った事情は下記の通りである。
自民党の赤沢亮正氏が、海江田氏が辞任を表明しながら辞めないのは「菅直人首相とそっくり」となどと指摘すると、海江田氏は「もう少しこらえてくださいよ」、さらに「政治家としての価値を落とす」と追撃されると「自分の価値はどうでもいいんですよ、本当に」と声を絞り出し、席に戻ると顔を手で覆い涙をぬぐった。ペテン師・菅首相と同類扱いをされて悔しいのはよ~く分かるが、本当に泣きたいのは政治に翻弄される国民だ。
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20110730/plt1107301406001-n1.htm
まったく国民の1人として泣きたくなるような状況だ。
海江田氏は、辞任のタイミングを間違えたのではないか。
辞任のタイミングはいくつかあった。最も有力だったのは、首相が全国の原子力発電所のストレステスト(耐性検査)実施を唐突に表明した今月上旬だ。原発の再稼働に消極的な首相と、電力不足を回避するため前向きな海江田氏が盛んに綱引きを演じていた。
・・・・・・
だが、想定外の事態が起きた。海江田氏は臨時会見で「やらせ質問」を認め、この問題を調査する第三者委員会の報告時期を「8月いっぱい」と明言。「忍」の一字で首相の不条理な方針転換に耐える海江田氏には同情も集まっていたが、風向きは変わりつつある。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110730/stt11073011470000-n2.htm
まあ、私も辞任するとしたら、菅首相との意見の相違が明白になった時点だったと思う。
⇒2011年7月 7日 (木):原発迷走で、閣内不一致は明らか。海江田大臣は辞任すべき(かどうか)
閣僚の辞任は菅降ろしの有効なカードになったはずである。
タイミングは重要である。海江田氏は自らそのチャンスを逃した。
結果として、菅夫人からも次のように揶揄される始末である。
菅直人首相の妻、伸子夫人(65)が、国会で号泣した海江田万里経産相を「私だったら涙を流すような人とはさっさと別れる」と揶揄していたことが分かった。四面楚歌の夫に続投意欲を強く吹き込みながら、逆らう者は冷徹に斬り捨てる。その姿は、権力者を狂わせて世を乱した歴史上の“傾国の美女”にどこか似ている。
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20110802/plt1108021140002-n1.htm
海江田氏の「政治家としての価値」や菅氏の夫婦関係はどうでもいいが、首相の居座りの姿勢がはっきりしてきたのをどうする気か。
国会会期が残り1か月を切ったが、菅直人首相の退陣への道筋は不透明なままだ。「菅首相は退陣すべきだ」と「鈴を鳴らす」議員は多いが、押しつけ合って肝心の「首に鈴をかける」人物が見あたらない。民主党内はまとまっておらず、結局ずるずると菅首相ペースでことが進んでいる。
菅首相は2011年7月末、首相公邸で開いた自身に近い議員らとの会合で、退陣3条件のひとつ、特例公債法案が8月中に成立しなければ、9月以降も続投する考えを示した。今国会の会期は8月末で終わり、再延長はできない。
http://www.j-cast.com/2011/08/02103242.html
民主党執行部は、あくまで3条件を整えて、首相退陣としたいようだ。
そのスケジュール感は左図のようである。
しかし、首相の退陣条件というのが当たり前のように考えられているのがそもそもおかしいのではないだろうか。
詐欺師の手口で不信任案を乗り切ったつもりになっている人を、いつまでやりたいようにさせているのか?
⇒2011年6月 8日 (水):菅首相は一流詐欺師(ビッグコンマン)たりえたか?
自分で退陣条件を決めるなどという不合理に唯唯諾諾としている与野党の議員(特に民主党)は何を考えているのか?
⇒2011年7月25日 (月):菅首相のいわゆる「退陣三条件」なるものについて
小沢一郎元代表が、内閣不信任案を提出するという観測もある。一事不再議の原則は、提出者と理由が異なれば該当しないという解釈だ。
しかし、小沢氏が動けば、朝・毎紙などのマスメディアを中心として、批判が湧いてくるだろう。
私は菅応援団化して批判精神を失った朝・毎の論調など気にする必要はないと考えるが、世論に対しては一定の影響力を持っているだろう。
猫の首に鈴をつけるのに手間取っている間に、失われた国益は膨大なものになっている。
こんな体たらくで、この国は、果たしてどうなるのだろうか?
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