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2011年7月 5日 (火)

官邸は誰の責任で情報を隠蔽したか?/原発事故の真相(4)

松本龍復興担当相が信じられないような失言(暴言?)によって、辞任に追い込まれた。

「一定のめど」での退陣を表明しながら閣僚人事に踏み切った菅直人首相が5日、東日本大震災対応の柱として起用した松本龍復興担当相の辞任に追い込まれた。1月まで官房長官として首相を支えた仙谷由人官房副長官には後任就任を固辞され、野党は首相の任命責任を追及して攻勢を強める構え。与野党が早期退陣圧力を強める孤立状態となった菅内閣は政権末期の色を日増しに濃くしている。
http://mainichi.jp/select/today/news/20110705k0000e010043000c.html

松本氏は部落解放運動で有名な松本治一郎氏の養孫であり、自身も部落解放同盟の副委員長を務めている。
菅内閣の中では期待できる人かと思っていたが、辞任はやむを得ないところだろう。
菅首相は、ますます末路を汚しつつあると思うが、それでもなお延命しようというのだろうか?

深読みすれば、自ら挙げた退陣の条件をクリヤーしないように、わざわざトラブルを起こすように仕向けているのではないか。
せっかく復興へ向かって本格的に動き出そうとかという歩みに、水を差すものであることは間違いない。

松本氏はともかく、震災の対応、特に福島の原発事故に関して、官邸の様子に不可解なことが多々ある。
当初から、情報開示が、恣意的というか隠蔽を窺わせるようなことばかりなのである。
⇒2011年5月 6日 (金):政府による情報の隠蔽と「見える化」/やっぱり菅首相は、一刻も早く退陣すべきだ(22)
⇒2011年5月26日 (木):情報を隠蔽していた(ウソをついていた)のは誰か?/やっぱり菅首相は、一刻も早く退陣すべきだ(36)
⇒2011年5月27日 (金):情報の秘匿によりパニックは回避されたのか?/やっぱり菅首相は、一刻も早く退陣すべきだ(37)

この問題について、フリー(記者クラブに所属しない)ジャーナリストの上杉隆氏は次のように言う。

記者クラブメディアがポスト菅の候補にあげる枝野幸男・官房長官だが、なぜいますぐ辞任すべき人物が次期首相なのか、はなはだ疑問である。彼は官房長官として、原発事故から3か月間、東電とともに「メルトダウンはしていない」「格納容器は健全に守られている」「放射能の外部放出はない」「放射能汚染水の海洋流失はない」などといい続けてきた。
それが、いまやどうだろう。1号機は3月11日午後8時頃にはメルトダウンしていた。それどころか、燃料が原子炉圧力容器の底に溶け落ち、容器に開いた穴から外側の格納容器に落下して堆積する「メルトスルー(溶融貫通)」まで起きていたのだ。事故から6日間の放射能放出は、4月に報告された数値の「倍以上」に訂正され、重いから飛ばないとされていたプルトニウムが原発敷地外から検出された。
結果として枝野氏は、東京電力とともに国民にウソをつき続けていたことになる。それだけではない。政府は情報を隠蔽することで、国民を重大な危険にさらしたのだ。
放射能拡散予測システム「SPEEDI」の結果などを公表しなかったことで、高放射線量を記録した飯舘村などの住民の被曝を招いた。また、半減期が長く、骨などに蓄積しやすい放射性物質ストロンチウム90の調査を怠り、最近になって原発から62キロ離れた地点から検出された。
さらに政府は、国際環境NGOグリーンピースからの海洋放射能汚染調査に関する協力要請を拒否していた。私はグリーンピースの調査をもとにした取材結果を『週刊文春』で発表したが、それがなければ国民は、海産物の放射能汚染の実態を知らされないままだったことになる。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20110613-00000012-pseven-pol

枝野氏は、ポスト菅の有力候補とされている人である。
作為か不作為かは別として、枝野氏の記者会見の内容が、結果的に被害の拡大を招いた(正確に情報が発表されていれば、避難したかも知れない)ことになる。
何のためのSPEEDIなのか?

昨夜放映されたTV番組「たけしのTVタックル」において、この一端が、須田慎一郎氏によって解説されていた。
須田氏といえば、コワモテでいかにもウサンくさいように見えるが、経済誌の記者を経て、評論家として活動している人であり、取材力のある人だと思う。

私が特に関心を持って視聴したのは、ERSS(緊急時対策支援システム)とSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測システム)の取り扱いである。
前者によって、官邸は11日の夜にはメルトダウン(定義については問題があるようであるが)の可能性を認識していたと思われる。
また、後者により、ベントを行った際の拡散予想図が、午前3時の気象状況と午後0時の気象状況により作成されていたという事実だ。
風向の関係で、午前3時の場合は海側に拡散し、午後0時の場合は内陸側に拡散することが予測されていた。

菅首相の原発視察は、12日早朝強行された。
⇒2011年3月14日 (月):現認する情報と俯瞰する情報
ベントを首相到着前に行うことは、東電の現場としては躊躇せざるを得ないだろう。
首相は、自分は与り知らぬことだというかも知れないが、少なくとも間接的には陸側に拡散する時間帯になる要因を作ったことは間違いない。

常識的には海側に拡散する時間帯に行うだろう。
番組中に、勝谷誠彦氏が「だから米原子力空母ジョージ・ワシントンが慌てて退避したのだ」と付言していたのは納得的である。
ベントの遅れにより被曝してしまった福島県内の人への償いは、誰の責任で行うのか?

ベントが遅れた原因の1つに首相の視察があったことは以前から指摘されていた。
⇒2011年3月30日 (水):原発事故に対する初動対応について
政府が情報を公開せず、自分たちだけが利用しているとしたら、これ以上の背信行為はないであろう。
政府ばかりではなく与党も、岡田幹事長が完全防護服を着用している時に、握手の相手方が平服であったという非対称性も疑いをもって見なければなないことになるだろう。
⇒2011年5月14日 (土):放射能汚染は、どこまで、どの程度?/やっぱり菅首相は、一刻も早く退陣すべきだ(28)

天網恢恢疎にして漏らさず。
いまや被害を拡大した責任者、復興の阻害要因となっているのが誰かがはっきりしたと言えよう。
与党幹部も菅首相に対して厳しい発言をしているが、どういうケジメをつけることになるだろうか。

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