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2011年7月 1日 (金)

日本人のルーツと旧石器遺跡捏造事件/やまとの謎(33)

日本列島には、いつ頃からヒトが住み始めたのか?
私たちは、中学生の頃、人類が下図のような進化を遂げてきたと学んだ。
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果たして、日本列島には、旧人や原人がいたのだろうか?

明石原人という名前を聞いたことがあるが、標本の現物が戦禍で失われ、今では確認のしようがないらしい。
静岡県の三ヶ日というところから発掘された人骨を三ヶ日原人と称したこともあったが、縄文時代のものとされている。
そういう中で、東北旧石器文化研究所という民間団体が目覚ましい発掘成果を挙げているとされた。
しかし、2000年11月に、この研究所をの副所長による捏造事件が発覚したのだ。
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当時、「神の手」などともてはやされていた発掘の名人芸の持ち主・藤村新一が、予め用意しておいた石器を埋めている姿を、写真・ビデオという動かぬ証拠で、捏造していることを毎日新聞が11月5日の朝刊でスクープしたのだ。
この報道は01年度日本新聞協会賞、菊池寛賞、第1回早稲田ジャーナリズム大賞を受賞した。

事件は、一般人のこの学問に対する期待を根底から揺るがすものであると共に、日本人のルーツを探るというロマンに冷水を掛けるものであった。
1949年、アマチュア考古学者の相沢忠洋さんが、群馬県岩宿の切り通しの赤土層から、黒曜石で作られた鑓の穂先の形をした石器を発見して、日本の考古学は大きな画期を迎える。
日本で旧石器時代の存在が確認されたのだ。
旧石器と新石器は、打製すなわち石と石を打ちあわせて作るか、石と石とを摺り合わせて(磨いて)作るかによって区分される。旧石器は、さらに石器を木で作った柄に埋め込んで包丁のような使い方をするかどうかで、前期と後期に区分される。その境は、およそ3万年前だという。
相沢青年が発見した石器は、およそ2万年前のものであり、後期旧石器時代のものであった。
相沢青年の発見以降、多くの人が旧石器時代の研究にのめり込む。

しかし、石器は古い時代に遡れば遡るほど、加工の程度が低くなるから、人工的に作られたものか、自然のものなのかの判別が難しくなる。
そういう中で、藤村氏の活躍は目覚ましいものであった。

当時、講談社版『日本の歴史』が、「常識を覆す新しい日本像」の提示を目指すという触れ込みで、刊行が始まったばかりであった。
シリーズ第1巻の岡村道雄『縄文の生活誌/旧石器時代から縄文時代』の第1刷は、10月24日の日付がある。
同書から、藤村氏に関連する部分の記述を抜粋してみよう。

……当時会社員であった藤村新一氏の独壇場で、みんなで石器探しに出かけても第1発見者はほとんど彼であった。
……(座散乱木遺跡での第三次発掘調査の成果は)それまでの学界のかたくななまでの否定的な雰囲気をいっきょに払拭して、全国の研究者やマスコミに中期旧石器文化の存在を認知させた功績はきわめて大きい。
……彼が遺跡を探し求めて歩き回る範囲がそのまま、前期・中期旧石器文化が確認された範囲と同じであるのも、彼の業績のすごさを証明している。
……休日を迎えた彼が、やおら遅れて黙々と堀はじめる。すると発掘現場に緊張感が走り、やがて発見の勝ち鬨が上がってあたりが途端に活気づく。

最も権威ある人が、このような「絶賛」の文章を書いていた。
藤村氏が「神の手」ともてはやされていたことは、一般読者には十分に納得のできることのように思える。
思い込みが人の判断力を狂わせるのであろうか。
岡村氏は、全面的改訂を余儀なくされ、2002年11月10日の日付の改訂版が出版された。
藤村氏の捏造の動機および多くの専門家が捏造を見抜けなかったことは、旧石器研究に残された謎であろう。

それでは、現時点では日本最古の遺跡はどこまで遡るとされているのだろうか?
鳥取県出雲市の砂原遺跡らしい。
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http://haku1414.blog44.fc2.com/blog-entry-135.html

日本最古とみられる約12万年前の旧石器が出土した島根県出雲市の砂原遺跡について、同遺跡学術発掘調査団の団長で、同志社大の松藤和人教授は23日、都内で開かれた日本考古学協会総会で「国内最古級の石器であることには変わりないが、年代は約12万年前から7万年前までの可能性が出てきた」と発表した。
松藤教授によると、12万7千年前ごろにできた地層の上に石器が出土した地層があり、その層のすぐ上にあった火山灰層は、昨年の記者会見では三瓶木次層(約11万年前)と発表していたが、分析の結果、三瓶雲南層(約7万年前)と判明したという。

http://www.47news.jp/CN/201005/CN2010052301000347.html

捏造はとんでもない所業だが、“起源”についての興味は尽きない。

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