« 拉致問題への菅首相の係わり | トップページ | 様々なる引き際-魁皇、湛山、菅総理 »

2011年7月23日 (土)

マニフェスト見直しをめぐって

民主党が雪崩をうったようにマニフェストの放棄へ向けて動き出した。
もともと無理なマニフェストで破綻しているのは明らかだったが、政権獲得から約2年、衆議院議員の任期のちょうど半分という時期である。

菅直人首相は22日の参院予算委員会で、民主党が政権交代を果たした2009年総選挙のマニフェスト(政権公約)について「本質的な方向は間違っていないが財源問題で見通しが甘い部分があった。不十分な点は国民に申し訳ないとおわびしたい」と述べ、公約不履行を陳謝した。
岡田克也幹事長も同日の自民、公明両党幹事長との会談で陳謝した。政権として赤字国債の発行に必要な特例公債法案の成立に向け、マニフェストの見直しを求める自民、公明両党の協力を得る狙いがある。
公明党の渡辺孝男、みんなの党の小野次郎両氏の質問に対し、首相は「埋蔵金やむだな費用の削減を図ってきたが、十分な財源捻出ができず、実現できていないものがある」などと答弁。マニフェストに掲げた政策の今後の取り扱いについて「東日本大震災対策をより優先する場合もある」と述べ、実現できない政策もあるとの考えも示した。

http://www.asahi.com/politics/update/0722/TKY201107220236.html

菅首相は「陳謝した」とされるが、例によって、「本質的な方向は間違っていないが」という弁解じみた言い方である。
「本質的な方向は間違っていないが」という条件をつければ、フーリエ、サン・シモン、オウエンらの空想的(ユートピア)社会主義でさえ是認されるだろう。
まったくこの人の言葉には、真摯さや誠意という重要な徳目の存在が感じられない。
⇒2011年1月21日 (金):政府・民主党における真摯さの欠如
⇒2011年1月27日 (木):言葉の軽さが裏付ける首相の真摯さの欠如

佐伯啓思京都大学教授が、「政策以前に、菅首相という人物にはほとんど人格上の問題がある」としているのは、この徳目の欠如があるからではないか。
佐伯氏は続けて次のように言う。

私は菅氏がどのような人物かまったく知らないが、民主党も含め、政権を支えるはずの側近までがこぞって菅おろしに走るのは、この人が首相として不適格だからだと解釈するほかあるまい。
                   ◇
そうすれば、先ほどの、「菅氏は国民の喜ぶことを何でもする」という批判と「菅氏は国民のことなど何も考えていない」という一見したところ対立する批判も理解できる。「菅氏は国民のために政治をするのではなく、自己の権力のために国民を利用しているにすぎない」ということだ。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110718/plc11071803080002-n1.htm

岡田幹事長は、原理主義者だといわれている。
原理原則を保持することは重要であると思うが、それも現実の状況に照らして柔軟に判断してこそ、であろう。

民主党の岡田克也幹事長が平成21年衆院選マニフェスト(政権公約)の見直しを表明したことにより、民主党は大混乱に陥った。マニフェストを「金看板」に政権交代を果たしただけに見直しは自己否定に等しい。鳩山由紀夫前首相と小沢一郎元代表のグループはさっそく反撃ののろしを上げた。原理主義者の岡田氏は「自爆ボタン」を押してしまったらしい。
http://sankei.jp.msn.com/politics/print/110723/stt11072300360000-c.htm

「政権公約を実現する会」という名称のグループを率いる鳩山前首相は、「命のように大切なものを投げ出してしまった。そもそも衆院選は何だったのかという話になる。納得するわけにはいかない。発言の撤回を求めたい!」と怒った。
しかし、破たんしているマニフェストを固守しようとするのは、それこそ空想的である。
まさに「そもそも衆院選は何だったのか」ということが問われているのだ。
閣僚らは、岡田氏の見直し発言を是認する大勢にようだ。

野田佳彦財務相は「与野党協議をしなければ政治が前進しない。適時適切な表現だ」と全面支持。玄葉光一郎国家戦略担当相(政調会長)は「マニフェスト作成時に財源の検討の甘さがあった。見直すべきところは見直すことが国民にとって正直な姿勢だ」と開き直った。
同上

正直だからいい、というものでもない。
マニフェストを否定する内閣というのは、無原則も極まっている。
自分たちが、マニフェストという旗を掲げて政権交代をしたのを、忘れてしまっては困る。

菅首相の「東日本大震災対策をより優先する場合もある」という発言も、当たり前だが、東日本大震災によって、マニフェストが実現できなくなったかのようにいうのも誠実な態度ではない。
震災対応は喫緊の課題であるから、優先するものもあるのは当然である。
しかし、マニフェストの破綻は震災以前の問題だったのではないか。
⇒2011年1月22日 (土):民主党の政治主導とは何だったのか?
⇒2011年1月25日 (火):民主党政権と詐欺師/「同じ」と「違う」(23)
⇒2011年2月10日 (木):マニフェストを履行するための消費税増税?
⇒2011年2月12日 (土):マニフェストを履行するための消費税増税?(2)

震災を言い訳に使うとは、それこそ、震災を政権延命として利用するもの以外の何ものでもないだろう。
絶体絶命的なピンチに陥っていた菅首相が、震災が起きて「これであと2年できる」といった話も、故のないことではないのである。

|

« 拉致問題への菅首相の係わり | トップページ | 様々なる引き際-魁皇、湛山、菅総理 »

思考技術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/395349/40922613

この記事へのトラックバック一覧です: マニフェスト見直しをめぐって:

« 拉致問題への菅首相の係わり | トップページ | 様々なる引き際-魁皇、湛山、菅総理 »