『万葉集』を書いたのは誰か?/やまとの謎(34)
9日に聞いた『私の万葉集とことば』座談会でも、白村江の敗戦という時代背景が、日本語の表記とかかわって、万葉仮名が考案されたのだろう、ということが言われていた。
⇒2011年7月 9日 (土):「大岡信ことば館」における『私の万葉集とことば』座談会
日本語を書き表わすという営為が、いつ、誰によって、始められたかは、まことに興味深いテーマである。
発症前のことになるが、『白村江敗戦と上代特殊仮名遣い―「日本」を生んだ白村江敗戦その言語学的証拠』東京図書出版会(0710)の著者・藤井游惟氏の説を紹介したことがある。
⇒2008年4月15日 (火):藤井游惟氏からのコメント
⇒2008年4月16日 (水):藤井史観の大要…倭王朝加羅渡来説
⇒2008年4月17日 (木):言語学から見た白村江敗戦の影響
⇒2008年4月18日 (金):言語学から見た白村江敗戦の影響②
この度、藤井氏が、自説の紹介ビデオを作り、そのデモ版をYouTubeにアップされた。
⇒ http://www.youtube.com/user/Youwee5847?feature=mhee#p/a/u/0/xPvxfGA_ews
私には上記した以上の理解はできないが、少なくとも今までに唱えられたことのない新しい考えではないかと思う。
藤井説の適否については、いろいろな考えがあるのではないかと思う。
多方面から検証することが望ましいと思うが、藤井氏のように、在野の研究者の説は、陽の目を見るのに多大な時間を要することになりがちである。
わがブログは、もちろん現在も依然としてロングテールの先っぽの方の存在に過ぎないが、より広く藤井氏の説が批判の俎上に乗ることを願い、紹介する。
⇒2011年6月29日 (水):東電株主総会と民主党両院議員総会に対するコメント
なお、私などよりはるかに該博な知識を持っておられるDon Pancho氏のサイトに、より包括的な解説がある。
→『記紀万葉』を書いたのは白村江敗戦後の亡命百済人?
→廃仏氏族物部氏の寺のコメント欄
私としては、音の聞き分けが言語中枢によるとして、それがどのようにして形成されるかが興味あるところである。
⇒2011年7月10日 (日):失語症か構音障害か/中間報告(21)
英会話において、自分で話したことを理解してもらう方が、ヒヤリングよりずっと難しいようにおもう。
私たちの先輩は、日本語を文字として定着させるために、一方ならぬ苦労を重ねたと想像する。
結果として、漢字かな交じり文として、今日一定の体系を確立するに至っている。
漢字かな交じり文には、もちろん優位性と同時にデメリットがあるだろうが、私は、表意文字と表音文字の絶妙な組み合わせにより、世界でも稀にみる合理的な言語になっているように思う。
白村江という国家存亡の瀬戸際に立った日本人(と言っていいのかどうか)は、何を考え、どう行動したのだろうか?
もし、大震災によって日本人が文明史的な生き方の変容を迫られるならば、1350年前の敗戦体験を思うことにも意味があるのではないか。
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コメント
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投稿: backlinks | 2011年8月 7日 (日) 22時01分