西田利貞氏と人間性の起源/追悼(12-2)
日本モンキーセンター所長の西田利貞氏が、6月7日亡くなった。
チンパンジー研究の第一人者。アフリカ・タンザニアでのチンパンジーの生態研究で、雄を中心としたチンパンジーの社会構造を解明した。国際霊長類学会や日本霊長類学会の会長を歴任。08年に、人類の起源に関する研究者に贈られる「リーキー賞」と国際霊長類学会生涯功労賞を日本人で初めて受賞した。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011060800396
今西錦司氏を始祖とする霊長類研究における京都学派の代表的存在だったといえるだろう。
私は学生時代に、『学者の森』 毎日新聞社 (1963) という本で同グループの研究スタイルを知り、個体識別という方法論に感動した記憶がある。
私などには同じように見える動物の顔(というか身体の特徴)を見分け、群れにおける個体の行動を明らかにして、動物の社会学というジャンルを確立した。
西田氏は、Wikipedia110608には、以下のように解説されている。
伊谷純一郎に師事し、当初はニホンザルのオスと群れの関係を調査した。1965年からタンザニアのマハレ山塊で野生チンパンジーの調査に着手し、1966年に餌付けに成功した。以後世界的にチンパンジー研究の発展に貢献している。
進化論は、人類はサルから分かれた、と教える。
しかし、ヒトはヒト以外の霊長類と、何が異なるのであろうか?
西田利貞『人間性はどこから来たか―サル学からのアプローチ (学術選書)』京都大学学術出版会(9910)は、人間性というものの多くがサルから引き継いだものであることを解説する。
たとえば「人はなぜ太るのか?」。それは、ヒトが、元来は食物を多量に食べることができない環境に適応した動物だったからである----私たちが人間独自の性質だと信じている事柄の多くは、ヒトが「サル」から引き継いでいる。
家族、政治、戦争、言語等々、人間性の起源をサル学から解き明かす。
それでは、ヒトは何によってヒトになったと言えるのだろうか?
進化論自体、誰も目で見て確認したわけではない仮説だが、好奇心をそそられるテーマである。
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