『プリンセス トヨトミ』
奇想天外な大人のファンタジーと言えようか。
原作は、万城目学の同名の小説。
万城目(マキメ)というのは珍しい姓であるが、本名。京都大学法学部出身で、お笑い芸人の(というよりもクイズで有名な)ロザン・宇治原史規は大学の同級生にあたるという。
大阪全停止。
その鍵を握るのは、トヨトミの末裔だった。
上記のコピーからどんなことが想像できるだろうか?
大阪の機能が全停止したのは、7月8日。
その4日前に、会計検査院の調査官が東京から大阪にやって来た。国の予算が適正に使われているか否かを調べるためだ。
メンバーは、「鬼の松平」こと松平元(堤真一)とその部下の鳥居忠子(綾瀬はるか)、旭ゲーンズブール(岡田将生)の3人である。
3人は、財団法人OJO(大阪城趾整備機構)の検査に入る。
OJOには国から多額の支出が行われているが、その経営管理は完璧に適正なように見えた。
が、OJOの実態は……。
橋下大阪府知事と大阪維新の会によって、大阪都構想が提唱されている。大阪都構想の是非はともかく、東京への一極集中化が行きすぎであるとは言えるだろう。
複数の極が存在した方が、例えば東日本大震災等の国難に対する対応力は向上するものと思われる。
大阪は、歴史的にみても、東京に拮抗はできないまでも、カウンター勢力にはなり得るだろう。
もし、地方分権を極端に推し進めて、独立国にまで行ったら?
あながち空想的とは言えまい。
F1グランプリの開催で知られるモナコ公国は、人口3万2千人強の独立国である。
あるいは、日本にも秘密結社が組織されていて、何かを合図として一斉に蜂起するようなことはないだろうか?
最近の政治状況を眺めているとそんな夢想をしてみたくなる。
子供のころ親しんだ水滸伝や南総里見八犬伝のように、何かの縁で結ばれた組織。
いまの国家運営を非として、突如立ち上がる大衆。
外部には秘密にされていることを、生涯に一度だけ息子に伝えるとしたら、どういう機会を選ぶか?
その父の思いを知らずに、自分の都合で機会を失わせたとしたら、息子はどうするか?
私も父の死に立ち会っていず、生前に親しく話をする機会がなかったので、あるいは何か伝えたいことがあったのではないか、とふと夢想することがある。
あるいは、性同一性障害者が身近にいたら、どう接するか?
盛り沢山のテーマが詰め込まれたエンターテイメント作品なので、それぞれの立場で楽しめるだろう。
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コメント
お久しぶりです。
これ・・・面白そうな映画ですよね。まだ見ていませんが、ちょいと興味を惹かれます。原作者の万城目学ってたしか数年前テレビのドラマの「あおによし鹿男」ってやつの原作者じゃ無かったでしょうか・・・・?
投稿: 三友亭主人 | 2011年6月 8日 (水) 22時44分
三友亭主人様
奈良の散歩は羨ましく拝見しております。
この映画は、妻が、「堤真一がいい」と言うので、余り期待もせずに観たのですが、なかなか面白く、かつ考えさせられました。
万城目氏は、芥川賞作家の平野啓一郎氏の1学年下だそうで、平野氏が登場した時、ずい分若い人が出たなあ、と思ったことを思い出します。
アンチ東京の気分が溢れているのではないでしょうか。
投稿: 夢幻亭 | 2011年6月 9日 (木) 21時59分