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2011年6月26日 (日)

沼津は黒曜石研究のセンター

6月24日の静岡新聞夕刊に、沼津市の池谷さんが、日本考古学協会大賞を受賞したというニュースが載っていた。
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黒曜石が、石器の重要な原料であるというのは、漠然とではあるが知っていた。
同紙の解説によれば、黒曜石とは以下のようなものである。

黒曜石 ガラス成分を含む火山岩。旧石器、縄文時代に狩猟や調理などに使われる生活必需品だった。全国に80カ所の「産地」があり、成分の分析で特定できる。沼津市の愛鷹山麓の遺跡からは、箱根、信州、神津島、天城のものが多数出土している。近場の天城は産地としての規模が小さかったため、他産地から黒曜石を入手しなければならなかった地域事情が、愛鷹山麓で黒曜石が多様化した一因とみられている。

池谷さんの受賞の業績を記事から辿ってみよう。

遺跡の出土品の一部という位置付けにすぎなかった黒曜石に価値を見いだして18年。常識を覆す「全点分析」の手法で黒曜石考古学を一分野として確立した。
遺跡1カ所につき数十点の分析が通常だった「常識」に反し、沼津市足高尾上の土手上遺跡から出土した900点もの黒曜石の分析を研究者の望月明彦沼津高専教授(当時)に依頼した。
分布図を作ったところ、「神津島」「信州」「天城」など産地ごとの固まりが幾つかできた。
池谷さんは、「獲物をめぐる緊張関係を避ける場を設けるため、複数の集団が一時的に集まっていたのでは」と見立てた。
池谷さんは分析機を自費で購入。出土する黒曜石全てを分析し、産地から遺跡に残るまでの流れと、各地の状況を考察した。取り組みが注目度を高めるにつれて国内全体の分析量も大幅に増えるなど、考古学界に与えた影響は大きく、今回の受賞につながった。

上記記事中沼津高専の望月研究室は、黒曜石研究センターである。
同研究室の紹介をサイトから引用する。

私たちの研究室は静岡県沼津市大岡3600沼津工業高等専門学校(沼津高専) 物質工学科にあります。北には富士山、南には駿河湾を望み、東と南東には黒曜石産地である箱根山、伊豆半島があります。本校と富士山の間にある愛鷹山の南麓から箱根西麓にかけて、12,000B.P.から30、000B.P.の旧石器時代の遺跡が数多く分布します。
この地域一帯は富士山の火山灰が厚く堆積して、層位的な研究がしやすい地域でもあり、また、遺跡からは近隣の伊豆箱根の産地だけでなく、遠くは信州、神津島、高原山などの産地からの黒曜石も出土していて、交易などの研究にも適した地域といえます。
私たちの研究室ではこのような考古学的な情報を得るために、遺跡から出土する黒曜石の産地推定を主な研究テーマとしています。

池谷さんの受賞研究には、このような背景があったのだ。

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