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2011年6月24日 (金)

地震直後にどうすべきだったか/原発事故の真相(3)

西村さんと神足さんは、雑誌「現代化学」11年6月号に、『理論物理計算が示す原発事故の真相』の続報を掲載している。
副題に、「地震直後にどうすべきだったか」とある。
取り返しのつく事故ではないが、後付けで「どうすべきだったか」を問うことは重要である。
いわゆるマネジメント・サイクルで、「see」もしくは「check」は不可欠であるが、それがないのが、民主党迷走の根本的な要因ではなかろうか。
⇒2010年8月 1日 (日):民主党におけるマネジメントの不在

続報では、前報後に明らかにされたデータ等により、前報の変更すべき点とより明確になった点が報告されている。
海域への放射性物質の放出量を、前報では3月21日の1日分しか利用可能データがなかったが、その後4月11日までの公開データを用いて推算した。
その結果、1ヵ月間の海域への放出量は、大気への放出量の1日分程度と修正された。

より重要な検証と思われるのは、水素爆発に至る経緯についてであろう。
前方で明らかにされた重要な結論は、「緊急エンジンは津波の浸水で作動しなかった」という刷り込みを否定したことである。
そして、続報では、緊急エンジンが3時間動いていたという確証を示している。
前報では、炉内の圧力を0.3MPaとして設定したが、圧力制御機構が作動していないならば、炉内は大気圧だっただろうと推測して再計算を行った。
結果は、下図の通りである。
Photo_2

前報(昨日の図)とは、沸点が異なる。
初期水温40℃は、緊急エンジンが作動し続ければそのままの温度で推移したはずである。
冷却水を冷やすいわゆる2次冷却水系が津波で破損したのが、深刻事態の原因か?
西村さんたちは、復水器の水を使えば、水位低下は40時間延ばせたであろう、と推測している。

結論的に、事故の拡大を防ぐためには、どうすべきだったか?
1.現場の責任者
水素爆発を防止するために、以下の努力をすべきであった。
①緊急エンジンを動かし続ける努力
緊急エンジンが作動を停止したのは、ディーゼル油に海水が混ざったのであろうから、1~2時間で復旧したのではないか
②復水器の水を冷却水につなぐ努力
③復水器冷却用の海水ポンプモーターの復旧
④海水ポンプ駆動用の外部電源の敷設
外部電源の敷設には東北電力の架電線からの導入で、架線新設に3日を要した。
200Vに降圧した配線を地上に置くという方式ならば、自衛隊をもってすれば3~5時間でできたであろう。

2.会社としての東電
事故直後、GE社と相談すべきであった。
東電は、電車でいえば運転手であり、電車の修理の専門家ではない。
一定の廃炉は必要だったかも知れないが、1000億円程度で処理できたのではないか。
西村さんたちが、炉の資産価値を東電に問い合わせても、「分からない」という回答だったという。
分からないが本当だとしたら、ずいぶんいい加減な話だ。
建設当時東電から東芝に支払われた代金は、2千~3千億円/基だから、減価償却を考慮すると簿価は5千億円程度ではないか、とする。

3.政府
事故直後、付近の海域にいた原子力空母ロナルド・レーガン号が支援を申し入れしたが、首相は断っている。
この判断は、間違っていた。
原子炉を独自開発した米国と、運転法を知っているだけの日本の実力差をわかっていなかったのである。

西村さんたちの計算は、かなりアバウトな感じがするが、こういう場合、桁が合っているか否かが重要なのである。
菅首相のように、87%などと、有効数字2桁のようにいう方がミスリードしやすい。
「俺は原子力に強い」などと見当違いの自負心をもって、現場の作業をdisturbした菅首相の責任は大きい。
現場視察の間中、吉田所長は対応に付きっ切りだったという。
⇒2011年3月14日 (月):現認する情報と俯瞰する情報
⇒2011年3月30日 (水):原発事故に対する初動対応について

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