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2011年5月25日 (水)

誰を信じればいいのだろうか?/やっぱり菅首相は、一刻も早く退陣すべきだ(35)

1つの事象に対する複数の関係者の説明に食い違いがある場合、誰を信じればいいのだろう?
政府(公共)か、企業か、学者か、はたまた社会の木鐸を自任するジャーナリズムか?
いま、これらの既存の諸権威が、そろって信用を失墜しつつあるように見える。
例えば、東京電力福島第1原発1号機の炉心冷却のための海水注入中断をめぐって、今までの欺瞞的な説明のボロが露呈しつつある。

国会答弁などによると首相は「ありとあらゆる可能性を検討する」と呼びかけた。原子力安全委員会の班目春樹委員長が「海水を入れたら塩が結晶するかもしれない。配管の腐食が進むかもしれない」と指摘した。首相は「もっとないか」と納得せず、関係者は「再臨界は本当にないと言えるんだろうな、と強く迫った」と明かす。班目氏は「可能性はゼロではない」と応じた。
班目氏は23日、記者団に当時の状況を振り返り「首相に『何でもいいから可能性をあげろ』と言われた」と語った。福山哲郎官房副長官は同日の記者会見で、班目氏の再臨界の指摘を「大変重く受け止めた」と話す。首相らが班目氏の「ゼロではない」という発言を重視したフシがある。

Photo_3
日本経済新聞110524

斑目原子力安全委員会委員長は、「可能性はゼロではない」という言葉は、「事実上ゼロという意味だ」と国会で明らかにした。
世の中の事象は、たいがいのことは、「可能性はゼロではない」。だから、「可能性はゼロではない」という言葉は、直接的には何の情報的価値を含まない。
「事実上ゼロという意味」なのか、「無視しえない確率の意味」なのかは、場にいた当事者が文脈に応じて判断すべきである。
コトの重要性、緊急性を考えるならば、曖昧にしたままであること自体が、当事者として適格性を欠くと言わざるを得ない。

それを「大変重く受け止めた」と説明する福山哲郎官房副長官の言葉も、後知恵の匂いが強い。
「大変重く受け止めた」のなら、そういうことかどうか確認するのが常識であろう。
首相がフクシマへのヘリコプターによる現地視察に同行した斑目氏に、「原子力について少し勉強したい」と言ったことは、斑目氏自身が証言している。
とすれば、勉強したばかりの知識で、再臨界の可能性を「大変重く受け止めた」ということだろうか?
もっとも、菅首相は「役所や東電とは違うセカンドオピニオンがほしい」と有識者を内閣府参与等として任命したが、その有識者に「臨界ってなんだ」と聞いたという話もある。

政治ジャーナリストの角谷浩一氏は「菅首相は無知なのに思いつきで行動する。反対する人は排除し、ダメな結果でも自画自賛する。厚生相時代のカイワレ神話が自分のなかに残っており、根拠を示さなくても自分が『安全だ』『頑張ろう』と言えばみんな付いてくると思っている。いま、世界中で『菅首相に日本が壊される』と心配する声が上がっています」と危機感を募らせている。
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20110326/dms1103261530006-n1.htm

カイワレをぱく付いた意味のないパフォーマンスを成功体験だと考えているとしたら、絶望的である。
この人をサミットに行かせた衆議院議員、とりわけ民主党の議員たちは、責任は重い。
不可解なのは、毎日新聞の5月24日付の「海水注入問題 原発に政局持ち込むな」と題する社説である。

論戦を聞いて、二つの疑問を持った。まずは、海水注入中断問題の位置付けである。すでに1号機については地震発生翌日の3月12日朝の段階で燃料の大半が溶融したとの推測が一般的になっている。その日夜に海水注入が55分間中断したことが、事態の深刻化にとってどの程度本質的なものだったのか。
もう一つは、菅首相が日本を代表する形で、サミットの場で世界に対し今回の原発事故の原因、今後の対策をまさに発表しようとする矢先に、その信頼性をいたずらに失わせるような議論をすることが、日本の国益上いかがなものかという点だ。
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20110524k0000m070153000c.html

第一の点は、12日朝の時点で燃料の大半が溶融していたと公式に明らかにされたのは最近のことであり、この時点では、政府も東電も否認していたのであるから、その状況判断を検証することは重要であろう。
もっとも、内部情報として、メルトダウンが共通認識になっており、それを隠していたのであれば話は別である。
そして、それはそれで大問題ということになるが。

第二の点は、事実の正確な把握と公表こそが信頼性の基礎であり、それを曖昧にしておくことこそ日本の国益上いかがなものかと思われる。
放射能汚染水の海への放出の連絡が遅れたことが、世界の不信感をかっているのを毎日新聞はどう認識しているのか?
東亜・太平洋戦争(大東亜戦争/太平洋戦争)の宣戦布告が遅れたことにより、「卑怯」の烙印を押されたことを思い起こすべきではないか。

開示については、故意か誤りかは別として、適切ではないことが明らかになっている。

福島第一原発事故で東京電力は2011年5月24日、2号機と3号機で核燃料が溶け落ちるメルトダウンが起きていたと発表した。1号機でも東日本大震災翌日の3月12日に福島第一原発1号機でメルトダウンが起きていたと認めている。共に2か月経過後の発表であり、情報公開姿勢が問われている。
・・・・・・
メルトダウンの発表遅れが故意による情報隠しか、分析の誤りかは議論がある。故意にしても誤りにしても問題である。故意ならば悪質であることは言うまでもない。誤りであるならば事態を正確に把握する能力に欠けていることになる。原子力発電所を扱う資格はないという結論になる。
しかも、この誤りには単にメルトダウンの発表が遅れたという以上の悪質さがある。従前はメルトダウンを明確に否定し、事故を過小評価して安全性を強調していたためである。メルトダウンの可能性を指摘する研究者もいたが、全く耳を傾けなかった。正しい根拠に基づかずに声高に安全性を強調した点は、故意の情報隠しに限りなく近い。
問題は発表遅れで政府が利益を得ていることである。震災翌週の3月14日の週は首都圏でも放射線量が高まるなど原発事故への不安が高まっていた。放射線量が高まった3月15日の日経平均株価終値は8605円で、震災後最大の落ち込みになった。このタイミングでメルトダウンを発表していたなら、社会に事態の深刻さを認識させることができたであろう。

http://www.pjnews.net/news/794/20110524_4

政府は相変わらず強弁を繰り返している。

枝野幸男官房長官は25日午前の記者会見で、東京電力福島第1原発1号機への海水注入が菅直人首相の言動を受けて中断したとされる問題で、東電が海水注入の準備を政府側に事前に報告していたことを認めた。 
枝野氏は、3月12日午後6時から首相官邸で開かれた会議について「東電から『海水注入の準備をしているが時間がかかる』という報告を受けた」と指摘。さらに「それに先立って、経済産業省原子力安全・保安院にそのような趣旨の報告があったことは報告を受けている」とも述べた。
首相はこれまで、東電の海水注入について「報告が上がっていないものを『やめろ』『やめるな』と言うはずがない」と国会で答弁しており、矛盾が明らかになったといえる。
枝野氏は、首相の言動について「まったく矛盾していない。首相は『実際に水を入れ始めた』という報告をまったく聞いていないということだ」と反論した。

http://sankei.jp.msn.com/region/news/110525/fks11052513180004-n1.htm

メルトダウンの開示では、かねてから、震災発生直後の記者会見で福島第1原発1号機でのメルトダウンの可能性を認めた経済産業省原子力安全・保安院の中村幸一郎審議官が会見担当から外れたことが、評判になっていた。
中村氏が震災翌日の3月12日の会見で「炉心溶融の可能性が高い」と発言した直後、保安院が会見担当を交代し、保安院は燃料棒の部分損傷は認めたが、メルトダウンに否定的な見解を示し続けていたのだから、誰が考えても「隠蔽」のための人事と解釈する。
枝野氏はこの問題でも、強弁している。

追及を受けた枝野幸男官房長官は「私の記者会見でも、炉心溶融は十分可能性があると言っている。可能性があるということで更迭されたなら、私が更迭されないとおかしい」と隠蔽を否定。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011052300917

事故調査のため、IAEA(国際原子力機関)の調査団が来日する頃になって、新しい事実が次々と公表されるのは、偶々であろうか?

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