唐突に浜岡原発の運転中止要請/やっぱり菅首相は、一刻も早く退陣すべきだ(23)
昨日早めの時間に更新を済ませたら、19時過ぎに緊急記者会見の実況中継があり、菅首相が浜岡原発の運転中止を中部電力に要請した、と発表した。
菅総理大臣は、浜岡原発について、6日夜、緊急に記者会見し、東海地震に対する中長期的な対策が完成するまでの間、現在、運転している4号機と5号機を含めた、すべての原子炉の運転を停止するよう、中部電力に要請したことを明らかにしました。そのうえで、菅総理大臣は、全国で稼働している原発の中で、浜岡原発だけに停止を求めた理由について、「30年以内にマグニチュード8程度が想定される東海地震が発生する可能性は87%と、極めて切迫している。この特別な状況を考慮するなら、防潮堤設置などを確実に実施することが必要だ」と説明し、巨大地震に見舞われる可能性が高い浜岡原発の特殊性を強調しました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110507/t10015738781000.html
唐突な感じは拭えないが、この判断そのものは結構なことだろう。「英断だ」と言ってもいい。
それでは、退陣要求は撤回した方がいいだろうか?
静岡県は、長い間、東海地震の恐怖にさらされ、その想定震源域のまさに真ん中に浜岡原発が立地している。
http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/hantekai/q1/q1.html
フクシマよりもリスクのポテンシャルはずっと高かった。
東日本大震災が発生する前から、浜岡原発事故が起きた場合、静岡県東部地域は想像したくもない状況に陥るだろうと言われていた。
静岡県の川勝平太知事は「福島第1原発の事故を受け、安全性確保に対する地元の要望を最優先した英断に敬意を表する」と歓迎した。ただし、「国におかれては地元経済に対する影響についても適切に対応していただかねばならない」と注文も付けた。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110507k0000m040112000c.html
もちろん被害は静岡県に留まらない。西風が優越するから、首都圏も壊滅的だろう。
http://soba.txt-nifty.com/zatudan/2011/04/post-639e.html
首相に就任してから初めて市民運動家らしい意思決定をした。だから、ケチをつけるつもりは全くない。
にもかかわらず、菅首相がこのまま続投していいかと問われれば、やはり「NO!」と言わざるを得ない。
市民運動家とは異なり、首相としては、エネルギー政策の全体像を示すことも必要である。
民主党政権は、地球温暖化ガスの排出量削減を国際的にコミットしている。代替エネルギーをどう考えるのか?
さすがに現時点では、原発積極推進論は言いにくいだろう。
しかし、脱原発を目指すのか、安全性の向上を図りながら共存していこうとするのか?
唐突に発表された今回の方針からは窺い知ることができない。
東京電力が供給不足、中部電力も不安定ということになると、産業界はどう考えるか?
雇用に新たな問題が生ずる可能性もある。
以下のような声もある。
石原茂雄・御前崎市長は「話が唐突過ぎて言葉が出ない。海江田万里経済産業相と5日に会って話したばかりだ。地元の意見をよく聞いて3号機の運転再開を判断すると言っていたのに4、5号機も止めるなんて」と戸惑う。「原発交付金に依存する自治体財政はどうなるのか、困惑を通り越してあっけに取られるばかり。菅首相は選挙目当てでこんな思い付きを言うのかと勘ぐってしまう。国策に従い原発を受け入れてきた自治体はどうなるのか。中部電力はどうするのか聞きたい」と怒りをあらわにした。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110507k0000m040112000c.html
まあ、賛否両論があるのは織り込み済みとしても、親切ではないということは言える。
「人気取り」のにおいが濃厚であるのは、多くの人が感じているだろう。
「絆」をモチーフにした海外の支援に対する感謝の広告も疑問である。
発信すべきメッセージは、世界の人々が関心を寄せていることに応えるものであるべきだろう。
菅直人の署名で言うべきは、原発事故の収束に向けた具体的な見通しではないか。
見通しがない段階で情緒的に「感謝する」と言ったって……。
そう、フクシマはまさに現在進行形なのだ。
そういう状況の中で、唐突に浜岡に言及するのは、勘繰れば、フクシマへの視線を逸らすためではないか?
記者会見の設定時間からして、多分にパフォーマンスを意識したスタンドプレーと言わざるを得ない。
その後すぐに、仙谷氏らと中華料理店に会食に繰りだしたというのも何となく。
繰り返しになるが、結論は賛成ではあるのだが……。
記者会見を聞いていて違和感を持ったのは、運転中止を要請した根拠である。
「30年以内にマグニチュード8程度が想定される東海地震が発生する可能性は87%」についてである。
「87%」という確率をどう判断すればいいのだろう。
確かに、「いつ発生してもおかしくない」と言われてきた。
だから、「30年以内」にかなりの確率で起きるであろうということは分かる。しかし、「87%」と、あたかも有効数字2桁の精度があるような言い方には疑問である。
首相に近い閣僚の一人は6日夜、「今回の決断で国民の支持が戻れば、党内も落ち着くのではないか」と語り、倒閣に動いてきた小沢一郎元代表グループも首相を批判しにくくなるとの見方を示した。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110506-OYT1T00758.htm?from=main7
今までの実績(?)からすると、やっぱりホンネはこんなところか?
今回の要請は評価するが、それを花道にすることを提案したい。
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