浜岡原発に関心が集中する裏で……/やっぱり菅首相は、一刻も早く退陣すべきだ(27)
菅首相による浜岡原発の運転停止要請は、なぜ唐突に行われたのか?
もちろん、浜岡原発の地震対策、とくに津波対策は素人にも不十分と考えられたので、万全を期すことには賛成である。
しかし、なぜ5月6日という時点で唐突に要請することにしたのか?
菅氏が十分に説明を尽くしているとは言い難いだろう。
浜岡は現に稼働している施設を含めて停止を要請している。
中部電力が断れないのを見通した上での「要請」である。
この「要請」は、法的な裏付けのあるものではないが、実質的には強制力を持ったものだと理解すべきだろう。
法的な稼働要件を満たして運転中の施設を、法的な裏付けのない「要請」で停止させた。
普通に考えれば、事態がそれだけ切迫しているということであろう。
しかし、菅氏が挙げた根拠は、、「これから30年以内にマグニチュード8以上の想定の東海地震が発生する可能性は87%」という文部科学省の地震調査研究推進本部による予測情報である。
その予測情報は、以前から出されていたものであり、4月18日の参院予算委員会での問答を参照すれば、この時点では浜岡が極めて切迫した状態と認識していたとは思えない。
しかも、菅氏の根拠とした予測手法は、見直しすることになったものだ。
民間企業に超法規的に緊急対策を迫るに十分な根拠とは言えまい。
それとも、上記以外に、一刻を争う差し迫っているという情報が、直近に何かあったのだろうか?
とりあえず、マスコミを含め国民の関心は、浜岡問題に集中した。
しかし、フクシマは決して収束に向かっているわけではない。
たまたま、1号機の水位が、今まで公表されていたものと全く異なる状態であることが明らかになった。
今ごろなんで……、と絶句する思いである。
東電はこれまで、1号機の原子炉の核燃料の損傷度を55%とし、燃料を覆う被覆管が損傷して燃料の一部が溶けているが、燃料集合体としての形は維持していると説明していた。燃料が溶けて本来の形を維持していない状態と認めたのは初めて。
1号機では現在、原子炉を冷やすため、燃料の上部まで格納容器を冠水させる作業をしている。格納容器の水を外付けの冷却装置につないで循環させて冷やす予定だが、溶けた燃料が格納容器に漏れ出ているなら、超高濃度に汚染された水を循環させることになり、漏れがあれば汚染が広がる危険がある。
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201105120174.html
一般論としては、見込みが違うことがあるのは、人間だからやむを得ないとも言える。
しかし、これではもはや説明を信じろという方がムリだろう。
炉心溶融、いわゆるメルトダウンが起きていたのだ。今まで、その疑いが言われながら東電としては否定してきたものである。
それにしても、今までに注入した大量の水は、圧力容器からどこへ行ったのか?
東電によると、1号機へはこれまでに冷却水一万トン余りを注入。格納容器下部につながる圧力抑制室にも二千トン弱が残っていたとみられている。
・・・・・・
東電は、1号機原子炉建屋一階には水がないことから「建屋の地下階に漏れ、隣接するタービン建屋地下に抜けている可能性がある」とし、今後調査を進める。
漏れた水は溶融した核燃料に触れており、「非常に高濃度の汚染水の可能性が高い」(東電)との見方。今後も炉心への注水は続けるため、漏れる水はさらに増える。東電は水をくみ上げて浄化し、再び炉心冷却に使うことも検討している。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2011051302000190.html
フクシマは、重大な危機が現に進行中である。
一方で、一応トラブルなく運転していた浜岡の運転を唐突に止めさせた。
エネルギー需給の定量的な判断を示さずに、である。
やることがチグハグではないだろうか?
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