フクシマの現状と見通しは?/やっぱり菅首相は、一刻も早く退陣すべきだ(30)
予想通り、菅内閣の支持率が回復しているらしい。浜岡効果(マジック)は、菅政権延命のカンフル剤となるのだろうか?
浜岡を停めたことは功績とするにやぶさかではないが、それは市民運動家としては、という限定の範囲内のことである。
首相としての判断となると、それだけで評価することはできない。エネルギー問題だけをみても、短期的には今夏の問題をどう乗り越えるのか、中長期的に原発に依存するのか否か、まだ方向性さえはっきり見えない。
それより、喫緊の課題である福島第一原発(フクシマ)の事故の収束の見通しが立っていないのだ。
12日に、東電は核燃料の「メルトダウン(炉心溶融)」であることを、ようやく認めた。専門家や外国のメディアなどが、早い時点でメルトダウンを疑っていたにもかかわらず、当事者の東電は一貫して否定してきたのである。
しかも一たび認めると、今度は後出しジャンケンのように、次のように発表する。
東電は中央制御室の計算機などから回収した原子炉温度や圧力の記録を基に分析。震災45分後の津波で、電源が喪失し、すべての冷却機能は失われていたと仮定した。燃料の上端より5メートル上にあった冷却水は、3時間後に燃料の上端まで低下。500度を下回っていた炉心の温度はその2時間後、燃料が溶融する2800度に達した。この時点で燃料全体が露出し、その後も水位は下がり続けた。
地震から16時間後の12日午前6時50分ごろ、溶けた燃料の大部分が圧力容器の底へ落ちたとみられる。
12日午前5時50分ごろには1号機の炉心へ真水の注水が始まり、同日午後8時に海水に切り替えて継続したが、水位は燃料下端からさらに4メートルほど下回った状態が続いた。圧力容器の底は溶けた燃料で配管の溶接部などが破損し、穴が開いている可能性が高い。圧力容器の水位は低かったが、燃料が底に落ちたため結果的に冷却できたとみられる。東電は、現在の燃料の状態に関して「一部は底で水没せずに露出している」とみている。
東電は2、3号機でも同様の分析を行う。松本純一原子力・立地本部長代理は会見で「最悪の場合、2、3号機も同様になっていることが想定される」と述べた。
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2011051690020014.html
東電は今まではデータが回収できなかったのだというが、きわめて疑わしい。
「1、2号機でも中央制御室での電源復旧作業に着手、1号機で照明がついた」と報じられたのが、3月24日である。
→http://www.asahi.com/national/update/0324/TKY201103240166.html
それが今まで記録が回収できなかったとは信じがたい。
大前研一氏も早い時点でメルトダウンが起きていたと推測している。
ではいつ炉心溶融が起こったのか? 米ニューヨーク・タイムズ紙に出ていたグラフを見ると、なんと3月15日と16日に3回の大きな放射能の放出(サージ)が福島第一原発の正門付近の計測地で観測されている。
地震と津波の翌日12日には1号機で水素爆発が観察されているが、その時には放射能はほとんど検出されていない。つまり、15、16日の放射能のサージは水素爆発によるものではないことが分かる。![]()
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110404/265766/?ST=business&P=3
東電の説明と異なるようであり、政府を含めた最終的な見解を聞きたいところだ。
それはともかくとしても、最悪の事態を想定して対策を講じていたはずではなかったのか?
次々と最悪が更新されるのは、隠していたのか、分からなかったのか?
いずれにしろ、このような事故の場合、許されることではないだろう。
政府はどうか?
福島第一原子力発電所1号機で、燃料棒が溶け落ちる「メルトダウン」が起きていたことについて、細野首相補佐官は13日、事故対策統合本部の会見で「想定外だった」と述べ、事故の収束に向けた工程表を見直す考えを示した。
http://news24.jp/articles/2011/05/14/07182715.html
この期に及んで「想定外だった」はないだろう、と言いたいが、私を含め多くの国民はメルトダウンだったこと自体は、やっぱり、ということだろう。
今頃何を言っているのだ、と思う。
その上で、産経新聞の次の「主張」はどう理解すべきだろう。
1号機の燃料の損傷が最も激しいことは、3月中から分かっていたことだ。炉心の部分的溶融も起きていると推定されていた。
その推定が今回、事実として確認された。作業者が内部に入って水位計を調整した結果、圧力容器の正しい水量が分かるようになったことによる前進といえる。
形としては厳しい現実の再確認だが、修理に欠かせない貴重な情報の把握として受け止めたい。
http://www.sankei.jp.msn.com/affairs/news/110514/dst11051402590007-n1.htm
東電も政府も、間違った説明をしていたのが、事実として確認された、とすべきであろう。
東電や政府の言うことをそのまま信じてはいけないということを再確認したことは、「前進」だろうか?
「工程表」は細野補佐官も言っているように、全面的に見直すことにならざるを得ないだろうが、問題は今後どうなるか、である。
一番の問題は格納容器からも冷却水が漏れていることだ。水漏れ個所を特定し、それを修理しないと、格納容器に水を満たして圧力容器ごと冷却するための冠水作業が難しくなる。だが、漏れた冷却水は高濃度汚染水になっていると十分に考えられるため、修理作業は難航することが予想される。
東電は、1号機の冠水がうまくいけば、それをモデルケースにして3号機も同様の作業を行う予定だった。4月17日に発表した「工程表」では3カ月程度で1、3号機を安定的に冷却するとしていただけに格納容器からの水漏れは痛手だ。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110514/269872/?ST=ecology&P=3
目途が立たないようにも受け止められる。
汚染はどうなのか?
また、13日、原子炉建屋の1階に無線で遠隔操作するロボットを入れて調査した結果、建屋の南東部分にある二重扉の近くで、最大で1時間当たり2000ミリシーベルトと、これまでで最も高い放射線量が測定されました。
この付近には原子炉につながる配管が通っていることから、東京電力は、「メルトダウン」の影響でこの配管が傷み、高濃度の汚染水が流れ込んで高いレベルの放射線を出しているのではないかとみています。
福島第一原発1号機では、原子炉建屋の地下に大量の水がたまっているのが見つかったことに加え、1階でも極めて高い放射線量が測定される場所があることが新たに分かったことで、17日に予定されている工程表の見直しを前に、作業の難航が避けられない情勢です。
http://www3.nhk.or.jp/news/genpatsu-fukushima/20110514/index.html
震災の発生から2カ月以上経っているのに、これまでで最も高い放射線量が測定されたというのである。
しかもその程度は驚くようなレベルだ。 http://radiation.goo.ne.jp/
もちろん、日常生活での基準とは比較にならないが、上図の単位は、マイクロシーベルト/年であり、今回測定されたのはミリシーベルト/時間である。
<1年=365日=365×24時間=8,760時間>であるから、2,000ミリシーベルト/時間は17,520,000ミリシーベルト/年=17,520,000,000マイクロシーベルト/年である。
放射線を短期間に全身被ばくした場合の致死線量は、5%致死線量(被ばくした人の20人に1人が死に至る線量)が2シーベルト(2000ミリシーベルト)、50%致死線量が4シーベルト、100%致死線量が7シーベルト……
http://gigazine.net/news/20110315_sievert/
問題は、その影響範囲である。
既に300km離れた南足柄市の茶葉が基準を超える放射能も検出されているのである。
⇒2011年5月14日 (土):放射能汚染は、どこまで、どの程度?/やっぱり菅首相は、一刻も早く退陣すべきだ(28)
14日朝、東京電力の福島第一原子力発電所で、協力企業の60代の作業員の男性が作業中に意識不明になり、福島県いわき市内の病院に運ばれましたが、死亡が確認されました。男性は全身を覆う防護服を着て作業に当たっていて、放射性物質の付着はなかったということで、死因については、まだ分かっていないということです。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110514/t10015889071000.html
放射能はともかく、劣悪な作業環境が影響していないはずはない。
東電には当事者能力が欠如していることがはっきりしている。電力の配電はお手のものだろうが、トップは原発のことについては素人同然である。
政府は「想定外だった」などと言わずに、もっとしっかりした見通しを立てられる体制を築くべきではないか。
そして、正しい情報を隠すことなく開示すべきである。
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