原発報道の大本営発表/やっぱり菅首相は、一刻も早く退陣すべきだ(9)
福島第1原発事故の見通しが立たない。
状況がが予断を許さないことは理解できるが、見通しがないまま「計画的避難地域」に指定された住民が、口々に不安と怒りを顕わにするのも尤もだと思う。
問題の根幹に、政府の発表とマスコミの伝え方に、かつての「大本営発表」のような欺瞞性が存在すると感じているのは私だけでないだろう。
悪夢の始まりともいうべき3月12日の1号炉建屋の爆発について、枝野官房長官が記者会見で、「何らかの爆発的事象があった」と説明したことは忘れがたい。
「何らかの爆発的事象」とは、なんともってまわった言い方だろう、という印象だったことを覚えている。
それにしても、この時点では、津波によって広範な地域で「想像を絶する激甚災害」が起きていることは想像できたが、原発事故の深刻さについて、かくもひどいとは「想像を絶して」いた。
⇒2011年3月12日 (土):想像を絶する激甚災害へ対応するための体制を
実際、この日のマスコミの被害地図には、原発が載っていない!
「爆発的事象」という曖昧な政府の発表に、不安感はあった。
⇒2011年3月13日 (日):歴史的な規模の巨大地震と震災
しかし、事故のレベルについては、4~5という専門家の意見を信じるしかなかった。
それが理由はともかく、最終的にレベル7という最悪事態になってしまったのである。
⇒2011年4月12日 (火):福島はレベル7/やっぱり菅首相は、一刻も早く退陣すべきだ(5)
政府当局は、いつから事態のこれほどまでの深刻さを認識していたのか?
すくなくとも、12日に首相がヘリコプターで現地の迷惑も考えずに「視察」した時点では、楽観視していたものと思われる。
それが変わったのは何時か?
隠蔽していたのか、それとも認識する力がなかったのか?
いずれにしろ、しっかりと検証しなければならないだろう。
今の時点で思い当たるのは、3月15日の記者会見である。
以下は、首相官邸のサイトに掲載されている菅首相の記者会見である。
1号機、3号機の水素の発生による水素爆発に続き、4号機においても火災が発生し、周囲に漏洩している放射能、この濃度がかなり高くなっております。今後、さらなる放射性物質の漏洩の危険が高まっております。
ついては、改めて福島第一原子力発電所から20kmの範囲は、既に大半の方は避難済みでありますけれども、この範囲に住んでおられる皆さんには全員、その範囲の外に避難をいただくことが必要だと考えております。
また、20km以上30kmの範囲の皆さんには、今後の原子炉の状況を勘案しますと、外出をしないで、自宅や事務所など屋内に待機するようにしていただきたい。
・・・・・・
【質疑応答】
(記者)
総理、済みません、2号機への言及がありませんけれども、2号機はもっと深刻な事態なのではないでしょうか。
(菅総理)
今、申し上げましたように、何号機ということ等について、いろんな現象がありますので、全体を見て現在対応していますので、そういった意味で一つひとつがどうだという話は、場合によってはまた別の機会に東電の方から報告をすると、こういうふうに認識しております。
http://www.kantei.go.jp/jp/kan/statement/201103/15message.html
悪名高き屋内待機の指示が首相の口から出たのである。
「最悪事態を想定して屋内退避」と言ったが、すでに屋内退避自体が見直しせざるを得なくなっている。
首相たちの「最悪」というのは、次々に更新されるものらしい。
ここでは、質疑応答部分に注意したい。
「2号機」についての認識を求められているのに、明らかに説明を「逃げ」ている。
「逃げ菅」の面目躍如だが、この時、2号機はどういう状況だったか?
以下のような号外が出ていることは知らなかった。
私の居住地域では見ることのできない号外である。今回当時の情報を見直す中で、初めて号外が出ていることを知った。
http://sankei.jp.msn.com/pdf/2011/03/20110315_fukushima2go.pdf
上記の首相の態度から、このような状況であることを読み取るのは難しい。
私は、枝野官房長官の記者会見に、不自然さを感じたはしたが。
⇒2011年3月15日 (火):地震情報と「伝える力」
菅首相は明らかに、「何かから、何故か」逃げているように見える。
枝野官房長官には、何かを隠している節が窺える。
「裏でひょっとしたら」と想像をたくましくしたくなるが、それは疑心暗鬼、風評を生むものでもあろう。
結局、政府自体が風評の源になっているのだ。
⇒2011年3月31日 (木):政府が風評被害の発生源になっていないか?
私は大本営があった時代を知らないが、知識としては「大本営発表」を知っている。
今の時代にもか、と嘆息せざるを得ないが、幸いにしてインターネットによって、政府発表ではない情報も入手し得るようになっている。
マスコミもその真価を問われるときだろう。
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