« またしても菅政権の強弁/やっぱり菅首相は、一刻も早く退陣すべきだ(18) | トップページ | 私にとっての昭和と平成 »

2011年4月28日 (木)

永訣の悲しみ/私撰アンソロジー

今日は東日本大震災から49日目にあたる。
被災した各地で、四十九日の法要が行われた。
東日本大震災では、万で数えるほどの、数多くの命が失われた。未だ行方の分からない人も、届け出があっただけで、万を超えている。

長年身近にあった人がいなくなるということは、余人には窺い知れない悲しみをもたらす。
震災により失われた数多くの人は、それぞれの場で、それぞれの形で、周りの人たちに悲しみを与えたことだろう。
死の悲しみは、震災のように多数が一度に失われた場合においても、それぞれに固有のものであるに違いない。

歌人の永田和宏さんは、昨年の8月12日、妻で歌人の河野裕子さんを病気で失った。
その最期の様子は、河野裕子・永田和宏・その家族『家族の歌 河野裕子の死を見つめた344日』産経新聞出版(1102)に綴られている。私が同書に触れ、読後の感想めいたものを記したのは、震災の前日であった。
⇒2011年3月10日 (木):『家族の歌』と歌人の宿命
思えばあの日から、私においてさえ、目にする景色が一変してしまったような気がする。

永田さんは裕子さんとの永訣の悲しみを挽歌にして発表した。
永田和宏さんと河野裕子さんは、夫婦であると同時に共に歌人であった。
歌人としての二人は、互いに相手の力量を認めあっていたであろう。Photo
夫婦が共に同じジャンルの作家であることは、多分制作の喜びを倍増するであろう。
しかも、自他共に一流歌人と評価されている人の作品に、×をつけるなどというのはおそらく至福のひとときではないか。
しかし、もちろん生活は楽しいことばかりではあるまい。
創作というのは、基本的に属人的な作業であり、いかに親しい人であっても、気配そのものがわずらわしい時もあるはずだ(ろうと思う)。

ところが、協同的な創作の行為というものもある。
例えば連歌である。

連歌(れんが)は鎌倉時代ごろから興り、南北朝時代から室町時代にかけて大成された、日本の伝統的な詩形の一種。多人数による連作形式を取りつつも、厳密なルール(式目)を基にして全体的な構造を持つ。和歌のつよい影響のもとに成立し後に俳諧の連歌や発句(俳句)がここから派生している。
Wikipedia101214

上掲書によれば、永田家でも家族四人で連歌を巻いたことがあった。NHKBSの5時間生放送番組で放映されるものである。
1人の持ち時間は5分で、時間の経過を知らせるために砂時計が使われた。
紅さんによれば、創作の個性は次の如くである。

砂時計を見ているとますます焦る。辞書を繰って言葉を探したり、縁側で長考したり、寝ている猫を起こしたり、自分の句が無事にできると、次の番が回ってくるまでしばらく気が楽になり、ビールなど飲みながら、うだうだと他の二人と無駄話などしている。
順番が回ってくると、百科事典にあたって調べる兄、一瞬で作ってしまう母、どこかへふらりと歩いていって、よし出来たと戻ってくる父。それぞれの性格がよく出る。

掲載の日付は、21年10月14日である。
裕子さんが亡くなる10カ月ほど前である。
歌人一家らしい微笑ましい光景ともいえるが、裕子さんは20年7月に乳癌の再発が分かり、化学療法を受けている時である。
化学療法には副作用が伴うと思われる。
にもかかわらず、「一瞬で作ってしまう」のは、やはり類稀な才能ということになる。

ふとした日常生活に、もうその人はいないと気付かされる。
いや、永田さんにとって、日常生活は裕子さんと共にあったもので、もう戻ってこないものかも知れない。
掲出歌は「短歌」誌の3月号に『二人の時間』と題して掲載された。
表紙に「妻・河野裕子を悼む絶唱30首」とある。

4月18日の産経抄が、ある詩集の紹介とその反響について書いていた。

▼1週間前、『ときぐすり』という詩集を紹介したところ、作者の藤森重紀さんや小欄のもとに、少なからぬ手紙が届いた。そのほとんどが、5年前に奥さまを亡くした藤森さんと同じく、大切な人の死という形で、別れを経験した人たちからだった。
▼そのうちの一人は、10年前にご主人に先立たれた。周囲の人々の励ましに疲れ果て、体調を崩し、引きこもり状態になったこともある。最近ようやく「生きていてよかった」と思えるようになったという。
▼そんな経験から、親族の命と家財産の両方を失った、東日本大震災の被災者を思いやる。「今がんばりすぎていらっしゃる心の“バネ”が、働かなくなってしまう日がくるのではないか」。だからこそ、「ときぐすり」の存在をできるだけ多くの人に知ってもらいたい、と結んであった。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110418/trd11041803350001-n1.htm

私の幼馴染も、ご主人を交通事故で亡くしてから引きこもり状態になり、とうとう自ら命を断ってしまった。
自殺は良くないことだ、と言われる。たった一つの大切な命……。
しかし、生きている人間が自死を諌めることができるのか、と自ら死を選んだという報に接するたびに思う。
私には、彼女の心の奥は想像するしかないが、何となく理解できるような気がした。
生きていても、今までより楽しいことなど、金輪際起こりはしない。
彼女はそう確信したのではなかったか。

|

« またしても菅政権の強弁/やっぱり菅首相は、一刻も早く退陣すべきだ(18) | トップページ | 私にとっての昭和と平成 »

ニュース」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

私撰アンソロジー」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/395349/39791179

この記事へのトラックバック一覧です: 永訣の悲しみ/私撰アンソロジー:

» 今年流行!シャネルで人気のアクセサリーなどの通販!紹介します [今年流行!シャネルで人気のアクセサリーなどの通販!紹介します]
誰でも知っている一流ブランド品!!シャネル!!の今年注目されている人気アイテムから隠れ人気のアイテム、バッグ・財布・時計・アクセサリー等・化粧品まで紹介します。きっと欲しい物が見つかると思いますこんなものが欲しいとかご要望があれば言ってください(^0^)/ [続きを読む]

受信: 2011年4月30日 (土) 23時21分

» 自動車保険一括見積もり [自動車保険 等級]
自動車保険について解説しています。 [続きを読む]

受信: 2011年5月 6日 (金) 12時04分

» 乳がんを克服したい人必見 [乳がん 治療法]
乳がんは女性特有のがんの一種で、日本では約20人に1人の割合でかかるがんですが 早期発見することが可能で、がんの中では治る率が高いがんです。 早期治療を行うために、乳がんの症状や自己検診の方法などを知っておくことが重要です。 セルフチェックと、定期的な専門家による検診を受けて早期発見の機会を失わないようにしましょう。 ... [続きを読む]

受信: 2011年5月15日 (日) 19時41分

« またしても菅政権の強弁/やっぱり菅首相は、一刻も早く退陣すべきだ(18) | トップページ | 私にとっての昭和と平成 »