震災を耐え抜いた家族の絆
東日本大震災で、被災後10日目に救助された人がいた。
東日本大震災の被災地の宮城県石巻市で20日午後4時ごろ、倒壊家屋から祖母と孫の男女2人が救出され、市内の病院に収容された。地震発生から約217時間ぶりの生還。2人とも意識はあり、「(被災後は)冷蔵庫の中にあったものを食べて救助を待っていた」と話しているという。
救助されたのは同市門脇町2の阿部寿美(すみ)さん(80)と孫で高校1年の任(じん)さん(16)。
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110321k0000m040011000c.html
災害救助で72時間の壁ということがいわれる。
それを考えると、まさに奇跡的と言っていいだろう。
「助けてください」。午後4時すぎ、石巻市門脇町付近を4人1組で捜索していた石巻署員が子供のような声を聞いた。
絞り出すようにして出される声の方向を見ると、木造2階建ての1階部分が倒壊した屋根の上に、少年がしがみついていた。上半身に数枚のバスタオルを巻き付けた任さんだった。
屋根の上から救出された任さんは靴を履いておらず、寒さに震えていたが、「おばあちゃんがまだ家の中にいる。足が悪くて動けない」と署員に伝えた。
任さんは震災後、倒壊した家の中に寿美さんとともに取り残されたが、台所にできた空間にあったテーブルの上に任さんが、倒れたクローゼットの上に寿美さんが布団にくるまった状態で座った。
2人は同じ空間にあった冷蔵庫の中から水やパン、食べ物を取り出し、少しずつ食べながら飢えをしのいでいた。この日、初めて子供が通れるほどの隙間を見つけ、屋根裏を突き破り、がれきをかき分け、屋根にはい上がって家の外へ出たという。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/print/110320/dst11032021520099-c.htm
孫が祖母の命を救ったことになるが、孫も祖母と一緒なのが励みになっただろう。
救いのないような震災のなかで少しホッとしたニュースである。
想像を絶する震災によって、考えようとしていたことがどうでもいいような気持ちになり、逆に考えなければならないことが山のように押し寄せてきているような感じである。
3月10日のこのブログで、歌人の河野裕子さん・永田和宏さんの家族のことに触れた。
⇒2011年3月10日 (木):『家族の歌』と歌人の宿命
永田家は格別の存在であろうが、震災を機に家族の絆を再考してみてもいいのではなかろうか。
私たちは、先の戦争で山河荒廃の憂き目から再出発せざるを得なかった。
国民一体となっての努力の結果、平均寿命や1人当たりGDPにおいて、世界でも最もといえる豊かさを獲得した。
しかし、それは同時に、行方不明高齢者や幼児虐待が決して奇異なニュースではない社会でもあった。
⇒2010年8月18日 (水):戦後史と“家族の絆”の行方
いま再び多くの山河が荒廃した。
しかし同じ過程を辿るべきではないし、辿り得もしないだろう。
既に人口減少社会という有史以来初めてのゾーンに踏み込んでいるのだ。
新しい国づくりに向かうときとしなければならない。
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