菅首相の器のサイズと事態の深刻さのミスマッチ
大地震の発生から1週間が経った。
この間、家にいて寝ている時間以外はほとんどTVを見て過ごした。
先ず、津波の破壊力に圧倒された。
昨夜来は、福島原発への放水による冷却活動等の様子を固唾を飲んで見ていた。
画面を通してであっても緊迫した状況であることが伝わってくる。
そういう中で、文字通り「命がけ」の活動に携わっている人には頭が下がる。
首相等の政治家は安易に「命を懸けて」などと言わないでほしい。
2時46分は検査のためクリニックにいたが、待合室でTVを見ていると、救援活動に携わる人たちが黙祷をする姿が映し出されていた。
菅首相は、側近の土肥隆一衆院議員の竹島問題と自身の外国人献金問題で絶体絶命のピンチだった。
そうでなくても政権の命脈は既に尽きていたのにも拘わらず、天変地異に乗じて未だ最高指揮者のポジションに居続けている。
クリティカルな局面になると、人間の器というものが露呈する。
原発事故への対応を見ていて、つくづくこの人が将たる器ではないことを痛感させられた。
伝えられているところでは、地震発生の翌日午前中、現場第一主義を標榜して、「原子力にものすごく強い」と豪語して、福島第1原発の視察を行った。
現場が初期対応で大わらわの時だから、敢えて言えば障害以外の何ものでもないだろう。
その日の午後の党首会談で「危機的状況にはならない」と言い切ったが、1号機で水素爆発が起きて建屋が崩壊したのは、その会談中のことだった。
⇒2011年3月14日 (月):現認する情報と俯瞰する情報
以後、日を追って緊迫度が増している。
東工大応用物理学科の卒業という学歴が「ものすごく強い」という自負の根拠だとしたら、考え違いも甚だしいというべきだろう。
学部レベルの知識で専門の分野のことを「ものすごく強い」とは??
万事その程度の認識なのだろうか?
震災後の人事として、先ず蓮舫消費者相を節電啓発担当相に、辻元清美衆院議員を災害ボランティア担当の首相補佐官に任命した。
次いで、笹森清氏を内閣特別顧問に任命した。同氏は東京電力労組出身で日本労働組合総連合会会長だった人。
さらに、昨日、仙谷由人前官房長官を官房副長官に任命した。藤井裕久氏が高齢で激務に耐ええないからということだ。
いずれも違和感がある人事といえよう。
先ず、蓮舫氏は事業仕分けで名を高めた(?)が、実態は民主党の目玉予算の捻出に失敗した人だ。
その結果増税しようというのが首相の思惑だから、国民生活に苦難を強いることになる節電の啓発に相応しい人とは到底思えない。
辻元氏は阪神淡路大震災でのボランティア体験を買われたらしいが、社民党と喧嘩別れ(?)をした時の泣き顔を見ると、非常時に強いとはとても思えない。
タレント的なこの2人を起用した時点で「おやっ?」と思った。
この天災をも支持率回復に利用しようという魂胆か?
笹森氏は東電出身で民主党の支持基盤の連合会長という履歴のゆえの起用であろうが、おそらく労組専従の期間が長く、東電の業務を知悉しているわけではないだろう。
これは邪推かも知れない。
しかし次の事実をみると、内閣特別顧問として何をやるのか、と思ってしまう。
笹森氏は、首相と会談後に報道各社に、菅首相は福島第1原発が最悪の事態になった場合の対応について、
「東日本がつぶれるというようなことも想定しなければならない。そういうことに対する危機感が非常に薄い。僕はこの(原子力の)問題に詳しいので、余計に危機感を持って欲しいということで東電に乗り込んだ」などと述べたという。
http://www.j-cast.com/2011/03/17090755.html
首相の発言内容がこのようなものだとすれば大問題だし、それを報道陣に明かす笹森氏も如何なものだろうか。
先ずは、「そのようなことを口にすべきではない」と、首相を内密に諌めるべきであろう。
仙谷氏は、つい先日野党から問責決議を受けた人である。
まさに国難であり挙党一致で事に当たるべき時に、頭がどうかしているのではないかと思う。
問題になった「自衛隊は暴力装置」という発言自体は、私は「自衛隊は武力組織」とほぼ同義と考えるので大騒ぎするのは如何なものかと思うが、当の自衛隊をはじめとして反発をしている人が多いことは事実だ。
⇒2010年11月20日 (土):仙谷官房長官がまたもや失言?
現に、福島原発の現場で「命がけ」の活動をしているのは自衛隊員等であり、自衛隊の力なしには危機的状況から脱け出すことは不可能だろう。
このような非常事態には、臨時に野党も含め救国的な体制を組むべきである。
⇒2011年3月12日 (土):想像を絶する激甚災害へ対応するための体制を
例えば、ボランティア担当には、阪神淡路大震災でボランティア体験を有する田中康夫新党日本代表とか、党首クラスの活用を考えるべきだ。
仲間内の人事にしかならないのは、度量を示すものだろうし、菅氏の人脈の限界でもあるだろう。
余りのお粗末さに、「福島原発問題は重大で深刻な事故」とウィーンから天野IAEA事務局長が駆け付けた。
業を煮やしたのだと思われる。
国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長は18日午後、海江田万里経済産業相との会談後、記者団に対し、東京電力<9501.T>福島第1原子力発電所について、重大で深刻な事故だと受け止めていると述べた。
事務局長は、海江田経産相に今回の問題を国際社会と連携し取り組む必要性を伝えた、と述べた。また、「国際社会からみると、もっと速く、もっと数多くの情報、もっと正確な情報を欲しいというのがあるので、協力をお願いした」と話した。
http://www.asahi.com/business/news/reuters/RTR201103180100.html
「平成の開国」はどこへ行った?
「国際社会からみると、もっと速く、もっと数多くの情報、もっと正確な情報を欲しい」と言われれてしまうのも菅首相の内向きの姿勢を如実に示しているが、国民も同様の気持ちをもっているから支持を失うのだということを理解しないのだろうか。
実際に外国の見る目は厳しいようだ。
在日米大使館は17日付で、第1原発の半径80キロ以内に住む米国民に対し、予防的措置として避難するよう勧告した。航空機を運用する米軍兵士らには、同原発から約112キロ以内に近づく際は、ヨウ素剤を服用することを義務づけた。
外務省関係者は「米政府は何度も菅政権に対し、『本当に第1原発は大丈夫なのか?』と問いただしていた。同盟国だけに、政府対応と異なる動きはしづらかったのだろうが、菅政権の危機管理能力のなさにあきれ果て、ついに退避勧告を出したのだろう」という。
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/print/20110317/plt1103171610002-c.htm
「東日本がつぶれるというようなことも想定しなければならない」という認識ならば、「半径20km以内は避難、20~30kmは屋内退避」という指示との整合性は?
言葉に信憑性がないのは今に始まったわけではないが。
⇒2011年1月27日 (木):言葉の軽さが裏付ける首相の真摯さの欠如
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コメント
緊急、切迫したこの事態と、政府の動きは本当に乖離したものとなっていると思います。
首相にあっては、姿を隠してしまって、‘乖離’も極まった状態です。
計画停電が実施された道路は、信号の点灯もなくなり、あたかも戒厳令が布かれたかのような有様になってしまうのに、その安全を見守ってくれる警備員(警官)が配置されていないことも しばしば です。
革命を起こした訳でもない、日本列島のほぼ半分に住まう善良なる国民の、危機に瀕した状況を、何故、政府は、先頭に立って救済しようとしないのか ー ー ?。
日本のことを二の次にするクセが、この期にも及んでいるのではないでしょうか。
投稿: 五節句 | 2011年3月28日 (月) 13時47分
五節句様
コメント恐縮です。
静岡県内でも、計画停電による交通事故が多発しています。計画停電による損失をどれくらいと見ているのでしょうか。蓮舫節電啓蒙担当相は、セリーグへクレームをつける以前に、より損失の小さな節電方法を実行できるよう啓蒙すべきでしょう。パフォーマンス志向では、何ともならない事態だということが未だ分からないのでしょうか。
投稿: 夢幻亭 | 2011年3月30日 (水) 00時08分