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2011年3月 9日 (水)

東京マラソンのインパクト

今年の東京マラソンは、2月27日に約36,000人の市民ランナーが参加して行われた。
フルマラソンは、応募抽選倍率が9.2倍という人気であった。
エリートの部男子(2時間23分以内の記録を有することが条件)は、川内優輝選手が2時間8分37秒で日本人トップとなる3位に入った。
これで「2時間9分30秒を切って日本人トップ」という日本陸上競技連盟の代表選考基準をクリアしたため、2011年世界陸上競技選手権大会のマラソン日本代表に内定した。

私はもっぱらTV観戦していただけだが、見上げるような都庁のビルを背景に、続々と選手が繰りだしてくる様子は圧巻だった。
丹下健三がこういう事態をも予想して設計したのなら、「さすが!」と思うがそんなことはないだろうなあ。
ふと、これがデモ隊だったらどうか、ということが胸中を過ったが、中東からの飛び火もあり得ようはずもない。

しかし、東京マラソンは、観戦しているだけでもさまざまなことを感じさせてくれるイベントだった。先ず、川内選手がゴールインした後、息も絶え絶えだった様子に、マラソンという競技の苛酷さを感じさせた。
ゴールイン後は自力で歩けず医務室に搬送されたが、「いつも死ぬ気で走っている」という言葉通りで、『走れメロス』もかくや、という気がした。

Photo
http://sankei.jp.msn.com/sports/news/110301/oth11030108250001-n1.htm

川内選手はいわゆる実業団の選手とは異なり、埼玉県の春日部高定時制職員で午前中2時間だけの練習だという。
それが一種の爽やかさとして受け止められたが、マラソンの練習法に新たな問題提起をするものともいえる。

見ていて、本当の実力勝負の持つ潔さを感じた。
およそ不正の入り込む隙はないだろう。
カンニングもしようがない。
琵琶湖毎日マラソンでも、世界陸上の残りの代表枠をめぐってデッドヒートだった。

東京マラソンの中継を見ていると、見覚えのある景色が映し出される。
銀座、浅草、ビッグサイト……。いながらにして、鳩バスツアーの気分である。
それにしても、東京というのは日本の都市の中で特別なポジションにあることを改めて認識した。
最先端のハイテクやデザインと古い情緒の混在。
人間というものがそういう性格を持っているのだろう。
沿道の声援が多いのは都市マラソンの特徴だろうが、東京マラソンの場合、圧倒的に数が多い。市民ランナーにとってはこたえられないだろう。
出走希望者の殺到するのも頷ける。

大会運営に携わるボランティアは、約1万人に上るという。
給水所などの市民ランナーへのサポート業務、沿道の見物客の案内・誘導を中心に大会の縁の下を支えている。
また、学生ボランティアと救急救命士によるAED隊が配備されているという。
その他、随所にボランティアの活動の場がみられ、日本でも機会さえあればボランティア活動が積極的に行われることを示した。

タイガーマスク現象にみられるように、人の役に立ちたいと考えている人は多いのだ。
国会は何をやっているのだろうと思うことばかりだが、日本社会もまんざらではないような気もする。

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