QOLとQOM/「同じ」と「違う」(28)
QOLは介護や医療の分野で馴染み深い重要な概念であるが、QOMというのをご存知だろうか?
QOLは、Quality of Lifeの略であり、「生活の質」と訳されている。
しかし、その評価は難しい。
というのは、「生活の質」 をどう考えるかは人によって異なるからである。
「その人がこれでいいと思えるような生活の質を維持しようとする考え方」(http://www.ninjal.ac.jp/byoin/teian/ruikeibetu/teiango/teiango-ruikei-c/qol.html)が重要であることは理解できるが、それをどう具体的に評価するか?
QOLと一字違いのQOMは、Quality of Motionの略である。つまり「運動の質」。
小林寛道東大名誉教授の提唱する概念で、詳しくは小林寛道『運動神経の科学』講談社現代新書(0409)で解説されているが、以下のような考え方である
スポーツや日常生活における動作や身体操作の質のこと。合理的で、正しい身体の使い方にもとづく 動きを追求する認知動作型トレーニング理論で重視される考え方
http://www.spowell.co.jp/training_system_new.html
具体的にはどんなトレーニングをすればいいか?
運動を司っているのは「脳」である。
脳の回路を改善することにより、運動神経が変わる(はずである)。
小林名誉教授は、それを「認知動作型トレーニング」と名づけた。
これまでのトレーニングは主に筋や心臓・循環系を個別に鍛える方法でした。私が提唱する新しいトレーニングは、「脳を中枢とした総合的な運動神経機構を改善し、身体操作能力や身体諸器官の機能を回復・向上させることを意図」した方法です。
こうしたコンセプトによるトレーニングの実現には、それに見合う様々なマシンやトレーングの工夫が必要です。こうした新しいタイプのトレーニングマシンを含む、トレーニング方法を「認知動作型トレーニング」と呼ぶことにしました。
http://www.casti.co.jp/omoshiro/03_kobayashi.html
驚くべきことは、アスリートの競技力向上のために開発されたマシン(トレーニング・メソッド)が、高齢者の寝たきり予防にも効果的なことが分かってきたことだ。
日本人は世界的にも長生きで、我が国は長寿国といわれています。ここで寝たきり防止により、さらに「健康長寿国」を目指そうというわけです。私はこのプロジェクトを「生涯スポーツ」として考えています。
寝たきり防止には、持病などの病気の問題、加齢による体力低下、生活改善などの様々な局面からの問題があります。私はこれをトレーニングマシンによる身体向上による寝たきり予防、神経系・脳の活性、リハビリによってサポートしていきたいと思っています。
同上
QOLの基本はADL(Activities of Daily Living)である。
書いていて気になるのが、介護や医療の分野でも、アルファベットの略語が多いことである。
現場では当たり前のように使っている場合もあるが、被介護者や被療養者には親切とは言いがたい場合もある。
ADLもその1つであろう。
「ADL」というアルファベット略語は,患者にとってなじみがない(認知率29.7%)。また,意味を理解している人は極めて少ない(理解率9.3%)。
・・・・・・
「日常生活動作」と言い換えることが一般的だが,この言い換え語は場合によって誤解を生むおそれがある。例えば「ADLが自立している」などという文脈で,単に「日常生活動作」と言い換えると,日常生活動作が自立しているので,通常の日常生活が送れると誤解される場合がある。
私は体験的に自立歩行がQOLにとって重要なことだと考えている。
先日TVで直立2足歩行するゴリラの映像が報じられていた。
背筋の伸びたずいぶん姿勢の良い(?)ゴリラであったが、常時2足歩行のわけではない。
2足歩行こそQOMの、そしてQOLの根幹だと思う。
そして2足歩行は最もベーシックなQOMでもあろう。
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