トヨタのリコール問題と検察審査会による強制起訴
アメリカにおけるトヨタ車の事故続発問題が一応決着した。
米運輸省は8日、トヨタ車の急加速問題について最終的な調査結果を発表し、「トヨタ自動車製の車の電子制御システムには急加速を引き起こす欠陥は見つからなかった」と結論づけた。ラフッド米運輸長官は会見で「トヨタ車は安全だと我々は感じている」と宣言、トヨタ車の急加速問題は収束する見通しになった。
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電子制御上の問題はなく、すでにリコールが実施されたアクセルペダルの2種類の欠陥が原因だったと結論づけた。また、苦情の申し立てがあった急加速の原因の大半は、運転手がブレーキとアクセルを踏み間違えていた可能性が高いとした。
http://www.asahi.com/business/update/0209/TKY201102090047.html
トヨタの車への「嫌疑」は濡れ衣だったことになる。
トヨタは冤罪の被害者と言えよう。
疑いは晴れたが、トヨタの被った損害はどうなるのだろうか?
ビジネスを展開する上で当然負うべきリスクとするには、余りに巨額であり、これからの事業活動で取り返すのは容易ではないだろう。
このニュースに接して、小沢一郎氏の検察審査会の議決に基づく強制起訴のことを連想した。
検察庁が起訴しない(できない)のは不当であると、検察審査会で2度にわたり議決したことにより、小沢氏は強制起訴された。
マスコミは、起訴されたら、裁判結果が得られるまで議員辞職すべきだ、とする論調が多いようだ。
大手新聞紙5社は揃って、書き方に差はあれど、起訴されたからには「小沢氏は議員辞職しろ」と主張している。政界の成熟への期待も書かず、小沢氏が無罪と証明された後の復帰についても語らず、ただ辞任しろと主張している。
http://blog.livedoor.jp/yukemuriippai/archives/3646593.html
私は、政治家といえども、あるいは「政治とカネ」の問題といえども、あくまで「推定無罪の原則」を貫くべきだと思う。
今度のように、どうもあやしいから裁判であきらかにすべきで、裁判で白がはっきりするまでは身を慎むべきだ、という論理には疑問である。
裁判結果が無罪になった場合、その間に失われたものは回復できない。
「李下に冠を正さず」の心構えは持つべきだろうが、李下で冠を正したようだから裁判にかけろ、というのでは暗黒社会ではないか。
オウム真理教事件の時に大活躍した記憶が強く残る江川紹子さんは、厚労省局長事件などの冤罪事件を追跡しているが、検察審査会制度について、次のように述べている。
「嫌疑不十分」で不起訴となった人が、検察審査会で2度の「起訴相当」を経て強制起訴された場合、裁判で無実が明らかになったら、どうするのだろう。検察審査会によって、間違った起訴がなされた場合、いったい誰が責任をとり、誰がどのように謝罪するのか。損害を回復するための措置を、誰がどのようにしてやってくれるのか。
強い権限と重い責任を担っている検察審査会のあり方が、果たして今のように不透明でいいとは思えない。
http://www.egawashoko.com/c006/000326.html
また小沢氏の元秘書の裁判を傍聴して次のように書いている。
石川議員が、保釈後に受けた取り調べを録音した内容も印象的だった。検察官がしきりに、捜査段階の供述を変更すると小沢一郎民主党元代表に不利になる、という趣旨の話を執拗に繰り返している。石川議員が、いくら「(小沢氏に借り入れた)4億円を隠すために時期をずらしたわけではない」と説明しても、検察官は聞き入れない。3時間半後には石川議員も「分かりました。忸怩たる思いが…仕方ないです」と主張を通すことを諦めたようだ。
こうした状況からは、検察側の筋書きに沿わない調書は絶対に作成したくないという検察側の強い意志が伝わってくる。大阪の郵便不正事件でも、検察の筋書きに合わない供述は調書にしてもらえない、という問題があった。特捜検察に共通する問題かもしれない。
今後の公判では、取り調べ検事も出廷する。被告人3人だけでなく、特捜検察の捜査手法も同時に裁かれている、と言えるだろう。
http://www.egawashoko.com/c006/000327.html
菅首相は、直談判の結果、自発的な行動を求めたが小沢氏が応じなかったということだ。
民主党執行部は、小沢氏の処分を世論の動向をうかがいながら決定するようである。
しかし、小沢氏の政治活動の保全を図るべきではないのか。
私には、首相として、あるいは民主党のリーダーとして、取り組むべきイシューの優先度が違うと思う。
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