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2011年1月28日 (金)

菅首相の国債発言に唖然。だが閣僚は……

このところ菅首相および民主党に対する批判的なことに集中してきたきらいがある。
そろそろ他の話題に移りたいと思っていたが、さすがに昨日の国債に対する応答をTVで視聴して、黙ってはいられないと思った。
首相の「言葉の軽さ」を問うたばかりである。

菅直人首相は27日夜、米格付け会社「スタンダード・アンド・プアーズ」が日本国債の長期格付けを「AA」から「AAマイナス」に引き下げたことについて「初めて聞いた。本会議から出てきたばかり。そういうことには疎いので、改めてにしてください」と回答を避けた。
首相官邸で記者団の質問に答えた。

http://sankei.jp.msn.com/politics/print/110127/plc11012719420161-c.htm

「そういうこと」とは、文脈的にみて「国債の格付け」以外に解釈の余地がない。
「疎い」とは、辞書をひくと以下のように出ている。

うと・い【疎い】
その人(事)に関係のうすい状態をあらわす語。
(その人と)親しくない。(その事に)関係が深くない。疎遠だ。
うちとけがたい。しんから親しめない。
関心がうすい。無関心だ。そっけない。
よく知らない。不案内だ。
頭の働きが鈍い。愚かである。
目・耳などの機能が十分に働かない。
広辞苑第六版より引用

常識的に考えれば、菅首相は、④(もしくは③)の意味で使ったと考えられる。
(まさか、⑤とか⑥ではあるまい)
菅首相が経済学に明るくないのは、乗数効果について説明に窮したことで分かっていた。
「よく知らないこと」は必ずしも恥ずべきことではない。
しかし、今回は「素人だから」と大目に見るわけにもいかないだろう。
日本の財政はギリシャと同じで大変な事態になっている、という認識を説明されてきている。
(だから、消費税増税は不可避なのだ、という論理)

施政方針演説において示した「国づくりの三つの理念」の原点もそこにあると言っていいだろう。
特に、社会保障制度の問題は、税制の改革(すなわち増税)と一体的でなければならない、ということではなかったか。

国債については次のような説明がある。

国債は他の債券同様に発行された後でも市場で売買できるため、価格は常に変動している。国債:価格とその裏返しとしての国債金利(長期金利)は世界情勢や、国債を発行している国の社会動向、経済状態を反映するため、政治的にも非常に重要な要素である。
Wikipedia110127

「政治的にも非常に重要な要素」について、首相が「疎い」と言っていたのでは洒落にならない。
日本経済新聞(110128)によれば、S&P社は、「民主党政権には政府の債務問題に対する一貫した戦略が欠けている」と政府の財政健全化に向けた姿勢を疑問視した、ということである。
ちなみに、同社の各国国債の格付けは下表の通りである。
Photo


さすがに自分の発言をマズイと思ったのだろう、菅首相は以下のように釈明したと報じられている。

菅直人首相は28日午前の参院本会議で、日本国債の格付け引き下げをめぐる27日の自身の「疎い」発言について、「(衆院)本会議場を出た直後で聞いていなかった、情報が入っていなかったことを申し上げた」と釈明した。その上で、「財務相時代にギリシャ危機に当たって、財政、国債がいかに重要かは、嫌というほど認識させられた。大切なのは財政規律、市場の信認を維持することだ」と強調した。公明党の山口那津男代表が「危機感に乏しく、それを乗り越える決意も浅い」と発言を批判したのに答えた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110128-00000053-jij-pol

だがしかし、またしても得意の(?)強弁というべきであろう。
上記の辞書の説明からも、「情報が入っていない」という意味で使うのは不適切である。

このような釈明は真摯さの欠如の証明以外の何ものでもないだろう。
さすがに野党は下記のように、強い反発の姿勢を示した。

首相の答弁を受け、山口氏は記者団に「本会議中であっても、情報が届いていなかったこと自体が問題だ」と指摘した。
・・・・・・
自民党も首相の発言を厳しく追及していく方針だ。同党の石原伸晃幹事長は、党本部で記者団に「問題の重要性に気付いていない。国民がこの首相を仰いでいる限り、最大不幸社会だ」と厳しく批判した。

ところが閣僚はこぞって擁護発言をしている。

与謝野馨経済財政担当相は「国会が終わって(記者対応までに)そんなに時間があったわけではないので、その瞬間は疎かったというのは理解できる」とし、「レーティング(格付け)会社のレーティングについて首相がコメントするのは聞いたことがないので(コメントを避けたのは)あれはあれで良かった」と述べた。
江田五月法相は「しっかりした説明を聞いていないことを疎いと表現したのだから、問題になることではない」と指摘。北沢俊美防衛相は「格下げの意義を知らなかったように(報道機関が)書くのはフェアでない」と語った。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2011012800366

私も身びいきの心情は分かる。
バッシングを受けたらガードに回ろうとする気持ちは理解できる。
しかし、与謝野氏の「その瞬間は疎かった」という「瞬間」とは何だろうか? よく分からない擁護である。
また、私には、首相が与謝野氏の言うような意味で、意識的に「コメントを避けた」ようには見えなかった。
江田氏の、「疎い」が「しっかりした説明を聞いていないこと」の表現という説明は、首相と同様のムリな解釈だと思うし、北沢氏の言い分も状況からして通用しないことは、映像を見た人ならば明らかである。

「不条理」な擁護論はかえって信頼を損なう。
良識の人だと思っていた江田氏までもがこういう発言をするとは幻滅である。
菅首相の言葉を借りれば、「気持ちが萎える」のは国民の方だと言いたい。

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