言葉の軽さが裏付ける首相の真摯さの欠如
民主党の総理大臣というのは、どうしてこうも言葉が軽いのであろうか。
谷垣自民党総裁の代表質問にたいする菅総理の答弁を聴いていてそう思わざるを得なかった。
自民党の総理はどうだったか?
今や朧である。が、鳩山-菅両氏の印象は強烈過ぎると思う。
鳩山前総理の、「最低でも県外……」や、「学べば学ぶにつけ……」といったフレーズは少々のことでは忘れることがないだろう。
「首相の経験者は辞めた後まで影響力を保持すべきではない」とも言って、引退を表明したこともすっかり洗い流してしまったつもりのようである。
「存在の耐えられない軽さ」を地で行っているような気がした。
妙に丁重な物言いが、マッチしているような、していないような感じで、宇宙人と呼ばれる所以でもあろう。
後任の菅現総理はどうだろうか。
与野党協議を呼びかける姿勢は、ちょっと見は低姿勢のようだが、実質は「熟議」に向かおうとする真摯がないことは改めて指摘するまでもないだろう。
ドラッカーのいうように、真摯さはリーダーの持つべき不可欠の条件であると思う。
⇒2011年1月21日 (金):政府・民主党における真摯さの欠如
真摯さの欠如しているリーダーはレッドカードである。
今朝の各紙に報じられている自民党の谷垣総裁とのやりとりは以下のごとくである。
谷垣氏が代表質問で訴えたのは、衆院解散・総選挙の一点に尽きる。首相が呼びかけている消費増税などの与野党協議について「国民の信を問うことをもって首相の覚悟と受け止め、税制抜本改革の与野党協議に真摯(しんし)かつ積極的に参加したい」と明言。解散前には協議に応じられないとの姿勢を鮮明にした。
・・・・・・
一方、菅首相の谷垣氏への答弁は、低姿勢を示しながら、政権への理解と与野党協議を求めるものだった。
「案作成の段階から超党派協議の進め方を含めて野党のご意見をうかがいたい」。6月に政府案を示すとした消費増税と社会保障の一体改革に向け、この日も早期の協議入りを要請。答弁の最後も「ぜひとも超党派の協議にご参加いただきますよう重ねてお願い申し上げます」と結んだ。
http://www.asahi.com/politics/update/0127/TKY201101260629.html
菅総理は、議員の資格にさえ疑問符をつけられている与謝野馨氏を一本釣りして、最重要閣僚として遇した。
いくら「ぜひとも超党派の協議に参加を」と呼びかけ、「協議に応じないならば歴史に対する反逆行為だ」と凄んでみても、当の相手の神経を逆撫でする布陣である。
履行できないマニフェストについては、「従来の政権ができなかった政策を転換したもの……」と言い、履行できないことについて深刻に捉えているふうではない。
朝日新聞は社説でも以下のように論評し、政権を追認する姿勢である。
民主党政権が思うように財源を捻出できず、マニフェスト(政権公約)をそのまま実現できていないのは事実である。率直に認め、謝るべきだろう。
だからといって、それがただちに「政権選択」をやり直さなければならない理由になるかどうかは疑わしい。前回の総選挙から1年半にもならず、衆院議員の任期半ばに満たない。
http://www.asahi.com/paper/editorial20110127.html?ref=any
毎日、読売の社説も大同小異である。
見出しだけ示そう。
毎日
「解散」とはまだ早すぎる
読売
対決だけの政治は機能しない
大新聞には批判的精神が失われてしまっているのだろう。
産経の阿比留記者は、「政論」欄で」「首相に信はあるのか」と題し、「「天に唾する」与謝野氏起用」と以下のように首相の言葉の軽さを的確に撃っている。
谷垣氏「首相は6月までに成案を得ることに『政治生命を懸ける』と明言した。なし得なかった場合は辞職する、もしくは信を問うため解散するのか」
首相「政治生命を懸けるというのは改革に向け最大限努力していきたいという覚悟を申し上げた」
随分軽い「政治生命」があったものだ。これでは首相が何を約束しようと「単に覚悟を示しただけだ」と逃げられることになる。菅内閣は「有言実行内閣」だったはずではないのか。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110126-00000626-san-pol
また以下のような巷の言葉遊びに込められた嫌菅感(?)を紹介している。
「虎のマスクで顔を隠すのが伊達直人 虎の威を借るのが菅直人」「贈与するのが伊達直人 増税するのが菅直人」
産経新聞は、正直に言って、今まで反面教師として閲読することが多かった。
3紙が批判的精神を喪失してしまったように見える現在、オピニオンの名に値する数少ない新聞のように感じる。
私はかねてから書いてきたように、民主党政権は詐欺により成立した(国民の過誤を意識的にマニフェスト等で導いた)ものだから、前回の総選挙は無効であり、一刻も早く解散総選挙をすべきだと考える。
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