民主党政権と詐欺師/「同じ」と「違う」(26)
菅首相が施政方針演説を行った。
持論(?)の、三つの「国づくりの理念」、すなわち「平成の開国」「最小不幸社会の実現」そして「不条理をただす政治」である。
具体的に言い換えると、それぞれ「TPPへの参加」「消費税増税」「小沢排除」ということになる。
TPPは先の臨時国会で首相が交渉参加に意欲を示したのに、党内外の反発であえなくトーンダウンしてしまった。「省益」に固執する省庁だけでなく、担当閣僚の足並みさえ乱れたお粗末さは記憶に新しい。
社会保障と一体で論議すると言う消費税の問題は、昨夏の参院選で「10%へ引き上げ」を打ち上げたかと思えば、大敗を喫して「唐突な提案だった」と自ら一時封印してしまった。
小沢一郎元代表をめぐる政治とカネの問題は、政権交代に対する有権者の幻滅を招いた主因の一つである。
鳩山由紀夫前首相の退陣を受けた党代表選から参院選、小沢氏との一騎打ちとなった再度の党代表選を通じ、首相が小沢氏に説明責任を果たすよう求めてきたにもかかわらず、衆院政治倫理審査会出席すら実現できていない。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/222974
どうやら勢い込んで再び大風呂敷を広げてみたものの、結び方はおぼつかないようである。
首相には、かつて社民党の重野安正幹事長が、「説得力がない。『大風呂敷を広げた』といわれないだけの実績を残せるかどうかだ」と批判したのに対し、「(所信表明は)率直に申しあげて大風呂敷を広げたんですよ」と開き直った実績(?)がある。
繰り返しになるが、マニフェストの基幹部分もしくは精神(魂)を実行し得えないとしたら、国民に謝罪して下野すべきではなかろうか?
マニフェストについての認識はどうか?
菅直人首相は24日行った施政方針演説で、09年衆院選で掲げた民主党マニフェスト(政権公約)に関し「実現したものもあるが、公表から2年を区切りに、国民の声を聞き検証する」と述べ、今夏に見直すと明言した。首相は演説で、税と社会保障の一体改革や貿易自由化などの実現に意欲を示したが、高速道路無料化や東アジア共同体など公約で掲げた目玉政策は抜け落ちたりした。野党は公約を撤回するよう強く求めており、首相が求める与野党協議入りの条件として公約見直しが焦点になりそうだ。
・・・・・・
しかし、政権交代の原動力となった年金記録問題は実績に触れず「解消に全力を尽くす」と述べるにとどめ、天下りあっせんも「温床の独立行政法人や公益法人改革に取り組む」と述べる程度。鳩山由紀夫前首相は昨年の施政方針で「(年金記録に)国家プロジェクトとして取り組む」「無駄遣いの最大の要因の天下りあっせんを根絶する」と意気込んだが、トーンダウンした形だ。鳩山氏は記者団に「(東アジア共同体の)メッセージが消えてしまった」と指摘した。
・・・・・・
マニフェストの影が薄くなった首相の演説に、共産、みんな、改革の各党は「自民党政権と変わらない」と酷評。自民党の谷垣禎一総裁も「マニフェストとずいぶん違ってきた。あれだけ言った『国民との契約』がうまくいかないならリセットすべきだ」と求め、公明党の山口那津男代表は「財源論も破綻しており、欺まんを国民におわびすべきだ」と批判した。共産党の志位和夫委員長は「国民の願いを反映した要素が完全になくなった」とし、首相が連携相手と期待する社民党の福島瑞穂党首でさえ「マニフェストから思えばはるか遠くに来たもんだ」と皮肉った。【田中成之】
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110125ddm001010038000c.html
私は首相の施政方針演説から、詐欺師の手口を連想した。
かつて詐欺と虚業の違いについて、次のように書いたことがある。
詐欺は、「人を欺いて」ということが基本的な要件である。
相手からの騙しとろうとする意図が最初からあり、当初から違法性がある。
これに対し、虚業は、当初から違法性を含んで行うとは限らない。
商取引上の駆け引きや、自社商品の強調・誇張を社会通念上の許容範囲を超えて行った結果、虚業となったという場合が少なくない。
⇒2009年5月 4日 (月):詐欺の第一段階としての錯覚誘導
比喩的にいえば、小沢氏をめぐる「政治とカネ」の問題は虚業の問題であり、鳩山-菅政権の実績は、詐欺の問題ではなかろうか。
政治が虚業化するのも困るが、詐欺は言語道断であろう。
| 固定リンク
「ニュース」カテゴリの記事
- スキャンダラスな東京五輪/安部政権の命運(94)(2019.03.17)
- 際立つNHKの阿諛追従/安部政権の命運(93)(2019.03.16)
- 安倍トモ百田尚樹の『日本国紀』/安部政権の命運(95)(2019.03.18)
- 平成史の汚点としての森友事件/安部政権の命運(92)(2019.03.15)
- 内閣の番犬・横畠内閣法制局長官/人間の理解(24)(2019.03.13)
「思考技術」カテゴリの記事
- 際立つNHKの阿諛追従/安部政権の命運(93)(2019.03.16)
- 安倍トモ百田尚樹の『日本国紀』/安部政権の命運(95)(2019.03.18)
- 平成史の汚点としての森友事件/安部政権の命運(92)(2019.03.15)
- 横畠内閣法制局長官の不遜/安部政権の命運(91)(2019.03.12)
- 安倍首相の「法の支配」認識/安部政権の命運(89)(2019.03.10)
「「同じ」と「違う」」カテゴリの記事
- インテンシブとエクステンシブ/「同じ」と「違う」(106)(2017.09.15)
- 切れ者とキレる人/「同じ」と「違う」(105)(2017.08.17)
- 「戦闘」と「武力衝突」/「同じ」と「違う」(103)(2017.02.12)
- 「計画:PLAN」と「実行:DO」/「同じ」と「違う」(104)(2017.02.14)
- 不時着と墜落/「同じ」と「違う」(102)(2016.12.26)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント