起承転結の論理/知的生産の方法(6)
作文の論理として著名なものに、「起承転結」がある。
起承転結(きしょうてんけつ)とは、物事の展開や物語の文章などにおける四段構成を表す概念。元々は4行から成る漢詩の絶句の構成のこと。起承転合とも言う。
一行目から順に起句、承句、転句、結句と呼ぶ。元の意味から転じて、小説や漫画など物語のストーリーや論理的な文章などを大きく4つに分けた時の構成、または各部の呼称としても使われる。起承転結の典型的な例として4コマ漫画の構成などがある。
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起承転結は、作文技法として中等教育以降で取り上げられることもある。単純な創作物語には適用可能だが、構成要素が四つと少ないため、同じ創作物語でもより綿密な構成を要するものや、説明文、実用文書などには向かない。起承転結はもともと「句」や「句切れ」の構成を端的に表す四字熟語であり、説明文、実用文書には段落(パラグラフ)や節を意識した構成が必要となる。さらには、複雑な事柄や、全く新しいことを記述する文書などは章を設ける構成も要る。
Wikipedia100503最終更新
「起承転結」については、有効性を評価する声だけでなく、否定論も少なくない。
文章を書くときに一番悩むのは、全体をどのように構成したらよいかだ。それが決まらないと、書き出すことすらできない。文章全体の構成を決める考え方として頻繁に登場するのが、起承転結である。いくつもの作文本で、文章の構成を決める指針として採用されている。例文を挙げ、起承転結に沿った構成方法を紹介することが多い。
これほど広く認められている起承転結だが、それを使った書き方の説明を読んで、本当に書けるようになる人はどれだけいるのだろうか。残念ながら、起承転結を用いた説明で書けるようになる人は非常に少ない。起承転結と言われても、自分が書きたい内容に対し、どのように適用したらよいのか分かりづらいからだ。
http://www.st.rim.or.jp/~k-kazuma/IE/IE052.html国語の時間では、起承転結を意識しなさいと教わってきたと思います。
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起承転結でレポートなどのビジネス文章を書いてしまうと、おかしなことになります。なぜかというと、起承転結というのは、論理の構成の話ではないからなのです。起承転結というのは「話の盛り上げ方」であって、論理的に話すための文章構成法ではないのです。
http://allabout.co.jp/gm/gc/295384/2/
上述のように、詩歌や物語に「起承転結」は有効でも、論文の構成には役に立たない、という意見が多い。
しかし、「起承転結」の技法が、詩歌だけではなくて文章構成の技法として、あるいは物語の展開の1つの「型」として活用されてきたことには、相応の理由があると思われる。
私は、「起承転結」は、文章作法というよりも、思考の運動の基本形を表現したものではないかと思う。
思考の運動法則といえば、「弁証法」が有名である。「弁証法」の説明をみよう。
ヘーゲルの弁証法を構成するものは、ある命題(テーゼ=正)と、それと矛盾する、もしくはそれを否定する反対の命題(アンチテーゼ=反対命題)、そして、それらを本質的に統合した命題(ジンテーゼ=合)の3つである。全てのものは己のうちに矛盾を含んでおり、それによって必然的に己と対立するものを生み出す。生み出したものと生み出されたものは互いに対立しあうが(ここに優劣関係はない)、同時にまさにその対立によって互いに結びついている(相互媒介)。
Wikipedia110119最終更新
つまり、「正-反-合」の運動ということになる。
それでは、「起承転結」と「正-反-合」の関係はどうか?
「起」は、イシューの設定と考えられよう。
⇒2010年12月25日 (土):イシュードリブン/知的生産の方法(1)
⇒2010年12月27日 (月):脱「犬の道」/知的生産の方法(2)
つまり、「起」は、対象とする問題を提示あるいは限定する局面である。
その問題について考えるプロセスが「承-転-結」の3段階であって、「正-反-合」に対応する。
「起と結」を、問題の設定と結論と考えれば、思考の運動としては、「承と転」である。
「承」は同じ視点、同じベクトルで考えるということであり、転」は視点を変えて、違うベクトルで考えるということである。
「承」を思考を垂直的に深めるプロセス、「転」を思考を水平的に拡げるプロセスとしてもいいだろう。
さらに言えば、「承」は合文法的すなわちアルゴリズム的思考であり、「転」は脱文法的すなわちレトリック的思考である。
特に、「転」は文章構成の場合において、拡がりとダイナミズムを生み出す重要な役割を果たすとされているが、思考においても「転-反」のフェーズが生産的(目的との適合性、他人への訴求性等)なアウトプットを生み出すキーになると思われる。
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