馴質異化と異質馴化/「同じ」と「違う」(27)
馴質異化と異質馴化は、共に創造性の技法ではあるが、反対の概念であるといっていいだろう。
⇒2011年1月18日 (火):馴質異化-地図の上下/知的生産の方法(7)
⇒2011年1月29日 (土):異質馴化-斎藤美奈子さん江/知的生産の方法(8)
「異質馴化」とは、自分にはまったく未知なもののことをヒントに自分の問題解決を着想する考え方であり、「馴質異化」とは、すでに知っているものを新しい視点からみることで新しい着想を得る考え方である。
http://tyuko.blog97.fc2.com/blog-entry-123.html
英語で言えば、馴質異化はmaking the familiar strange、異質馴化はmaking the strange familiarである。
「新しいカテゴリーの創出とは、今まで類似性がないと考えられていたものを1つのグループとして取り上げるわけだから、異質馴化そのものである」と書いたが、ふとこの両者は同じことではないかという気がしてきた。
考えてみれば、それは「分類」ということの本質に係ることである。
分類については、次のように説明されている(Wikipedia090724最終更新)
事物は多様である。それを扱う場合、ある特徴でもって共通であるものをまとめることで極めて多様である事象を多少とも簡略化することが出来る。これが分類である。
未知としてくくるか、既知としてくくるか。
それが両者の分水嶺であるが、未知のものの中に既知の匂い・香りを嗅ぎ分け、既知のものの中に未知の色合い・形状を見つけることが、これらのキモである。
とすれば、未知と既知とは相対的である。
それは「モノの見方・考え方次第ということになる。
市川亀久彌氏の等価変換という考え方を参照しよう(以下「創造的思考の方法論- 主に等価変換理論について」http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jpapers/Ichikawa010918/IchikawaET010918.html)。
まず、創造過程には次の3つの素過程があると考える。
(1) 創造的直観による問題の提起 (問題の発見)
(2) 問題解決のためのアイデアの獲得 (定性的)
(3) 確立したアイデアによる問題の実際的解決 (定量的)
市川氏は上記の(2)および(3)の素過程を科学的に究明しようとする。
筆者(市川氏)が1955年に提唱した <等価変換理論> なるものは, 上記にみたような, アナロジーという用語にまつわる創造理論としての論理的矛盾や, 思考技術上のあいまいさから脱出を計るため, 創造的発想過程における前述の第 2素過程と第 3素過程とを, 改めて純技術論的に検討して, 一つの体系にまとめあげたものである。あとから分かったことであるが, その論理構造は, 湯川秀樹博士が1965年に提唱された認識論としての, いわゆる 「同定理論」 なるものの, 方法論的なスペシャル・ケースとみなされるものである。
等価変換的思考のエッセンスは下図で表わされる。
この式はいささか難解であるが、最近はやりの「謎かけ」を例にすると分かり易い。
落語家の林家三平さんの婚約発表記者会見の様子である。
三平さん 婚約と掛けまして、時刻表と解く。その心はダイヤに思いを込めました。
--国分佐智子さん(婚約者)と掛けまして……。
三平さん 染物屋さんの手先と解きます。(その心は)いつでも藍(愛)で染まっています。
http://journal.mycom.co.jp/news/2011/01/24/010/index.html
つまり無関係と思われる2つのモノ・コトを、ある視点(心)でみると共通する。
市川氏は次のような例で解説している。
つまり、関係のないと思われる障子と鶯という2つのモノに共通性を見出すわけである。
このような「謎かけ」は、典型的な異質馴化と考えらるが、既に知っているものを新しい視点で捉えなおすのだkら、馴質異化ともいえる。
重要なことは、「心」にあたるものの発見である。
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