ウィキリークスの創設者・アサーンジの人物像
ウィキリークスに対しては、賛否両論が鋭く対立している。
といっても、われわれが目にする論調は、創設者を悪人と決めつけるものが多いようだ。
ウィキリークスのように機密情報を勝手に漏洩されては、秩序が保てない。創始者のアサーンジは犯罪者だ。何より、彼はインターポール(国際刑事警察機構)の指名手配を受け、ロンドン警視庁に逮捕されているではないか。
「週刊文春101223号」の上杉隆特別レポート『日本人が知らない「ウィキリークス」創設者アサーンジの「正体」』は、このような見方は、陰謀によるもので誤りだという。
世界の多くのジャーナリストが、アサーンジを支持している。彼の祖国オーストラリアでは、外相などの閣僚も彼を支持している。
アサーンジの逮捕容疑は、「強姦」である。
しかし、その中身は、性行為において避妊具を使用しなかったり、避妊具が敗れたものだという。
インターポール(ICPO)といえば、国際的な犯罪組織を摘発する組織といったイメージが強い。
Wikipedia(10209最終更新)の解説は次のようである。
主な活動は、国際犯罪及び国際犯罪者に関する情報の収集と交換、国際会議の開催、逃亡犯罪人の所在発見と国際手配書の発行である。 映画・テレビ・漫画などのフィクションでは「国際警察」のような描かれ方をするが、実体はそのような大規模な組織ではなく、各国法執行機関の連絡機関・協議体としての性格が強い。
それにしても、アサーンジの逮捕容疑とのギャップは大きい。
私のように、ウィキリークスの活動によって逮捕されたのだと誤解している人も多いだろう。
EUの取り決めでは、当事国への引き渡しは逮捕後90日以内である。
アサーンジの身に何かあれば、パスワードが自動的に発行され、機密資料が全世界にばら撒く用意ができているという。
そうなれば、パックス・アメリカーナの世界秩序は崩壊することになる。
だからこそ、米国と巨大企業は戦時体制のような体制を敷いているのだ。
にもかかわらず、日本人の大多数はあまりに無頓着ではないか、と上杉氏は憂慮する。
メディアは、海老蔵事件でもちきりである。
アサーンジは、オーストラリアの旅芸人の家に生まれた元ハッカーである。
彼がオーストラリア最大の新聞「オーストラリアン」紙に寄稿したウィキリークスの意義を訴えた主張を、上杉氏は紹介している。
ウィキリークスが編み出したのは、「科学的ジャーナリズム」という新しいタイプのジャーナリズムである。私たちが他の報道機関と連携してはたらくのは、人々にニュースを伝えるためもあるが、報じる内容が事実に間違いない、と証明するためでもある。科学的ジャーナリズムにおいては、ニュース記事を読んだその人が、記事のベースとなる元の記事までクリックしてみることができる。
アサーンジの原点は、反人権主義、非人道的政策への監視であった。
しかし、彼の活動は、アメリカ政府にとって許し難いものだった。
安全保障上の機密が漏れ始めたのだ。
米国政府は、アサーンジをテロリストとして糾弾するようになる。
有力議員や米政府の意向を受けてウィキリークスの関係を絶った大企業がサイバー攻撃の標的となった。
ウィキリークスに批判的な企業のサイトが次々に停止を余儀なくされた。
世界中で情報戦争が始まっている。
当然、それは日本にも及んでいる。
しかし、それに気づいていないのは当の日本人だけではないか、と上杉氏は危惧している。
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