日本文明史と藤原京/やまとの謎(12)
藤原京への遷都は、694(持統8)年の暮のことであるが、別冊宝島『古事記と日本書紀』宝島社(1001)に載っている年表から、該当する時代を切り取ってみよう。
藤原京に密接に係ったのが持統天皇であることがわかる。
同時に、『万葉集』を代表する歌人・柿本人麻呂の生涯や、大宝律令の制定経緯などが、私たちの好奇心の対象として浮かび上がってくる。
藤原京は、短期間ではあったが、日本史上重要な時代であったといえよう。
上山春平『日本の成立』文藝春秋(9407)は、日本史の概説を「サラリーマンのための日本史」の視点を意識して取りまとめられたものであるが、上山さんは、「あとがき」に、「私が、日本史における最も重要なエポックとみる西暦七○○年あたり」という言葉を書いている。
上山さんが重要なエポックというのは、かいつまんで言えば次のようなことである。
日本列島において、「自然社会」から「文明社会」への変化がはっきり認められるのが、西暦700年のあたりである。
ここで、「自然社会」とは、人間が自然環境のなかに埋没するようなかっこうで、海の幸・山の幸の恵みに頼り切って生活しているような社会である。
これに対し、「文明社会」とは、田や畑を切り開いて米や麦を育てたり、人口度の高い都市や国家を作るようになった社会である。
ここで、梅棹忠夫さんの、文明の情報史観を参照しよう。
⇒2009年4月14日 (火):文明の情報史観
文明とは、人間と人間をとりまく装置群とでつくる、ひとつの系である。
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人類が発生した初期の段階では、人類は他の動物とおなじように、自然環境のなかで存在していた。その場合も、人間は自然環境とのあいだでシステムをくんでいた。そのような人間-自然系でつくりだしたシステムを生態系と名づけ、それに対して、その後の人類がつくりだした人間-装置系のことを、文明系とよぶことはゆるされるであろう。そして人類の歴史は、生態系から文明系への進化の歴史であった。
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文明の歴史は、人間・装置系の自己発展の歴史である。人工的につくりだされた環境としての装置群に着目すれば、それは諸装置の開発と蓄積の歴史である。
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人類史におけるひとつのおおきな飛躍は、農地という装置と制度をつくりだしたことであろう。農耕の発生は、人類の文明史における一大転換であった。農耕地と農業の確立によって、人間は、安定した食料生産を可能とする人工的環境をつくりだしたのであった。
このような「自然社会」から「文明社会」への変化は、メソポタミアやエジプトでは紀元前3000年くらいの時期に行われた。
現在の先進国である西欧や日本は、それから4000年ばかり遅れたのだから、たいへんな後進国であった。
この時期に、「日本の歴史の姿が、それ以前は深い霧に包まれたようにボンヤリとしか見えなかったのに、突然、ハッキリ見えはじめる」と上山さんはいう。
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