持統天皇(ⅲ)/やまとの謎(16)
NHK取材班編『ライバル日本史⑥』角川書店(9508)に、「持統天皇と九人の皇子たち」が取り上げられている。
「九人の皇子たち」というのは、実子の草壁を除いた九人の皇子である。天武の皇位の後継の有資格者という意味でライバル関係として捉えられているわけである。
天武の後継の有資格者という意味では、天智の皇子も可能性を持っていた。
持統は、当然自分の子供・草壁に天武の後継をさせたかった。
679年、天武は皇后持統と共に、皇位の有資格者と自他が認める6人の皇子たちと吉野の離宮を訪れる。
草壁、大津、高市、忍壁の自分の子供と、川島、芝基という天智の皇子である。
朕、今日、汝等と倶に庭に盟いて、千歳の後に事無からしめんと欲す。いかに
すぐに草壁が応じ、他の皇子が続いた。
皇后持統の眼前で盟約がなされたのである。
草壁が皇太子に選ばれたのは2年後、681年のことだった。
持統は、幼くして母を失い、姉の大田皇女も早くなくなった。
そのため、血縁にこだわりを持っていたのではないかといわれている。
天武の後継者として、草壁の立太子に執着したのも、複雑な人間関係の中で争乱の時代を生きてきたことを考えれば、それは当然のことともいえよう。
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