尖閣ビデオ問題の失敗学
尖閣ビデオの流出問題は、われわれにさまざまな問題を投げかけた。
否応なしに、われわれは、政府の対応に、YesかNoの判断を迫られることになった。
この問題に関しては、私は一貫して、Noの立場である。
まことに庶民的であるが、私の周りで、政府を支持する声はない。
YouTubeにビデオが流出してから、特にその傾向が強いようだ。
ビデオの映像をみて、海上保安庁の職員が危険な業務に従事していることを改めて認識したからであるし、中国漁船の体当たりを目の当たりにしたからだ。
一説では、政府がビデオを一般には公開しない方針にした理由は、「ビデオをみたら国民の怒りが納まらなくなるだろう」と予測したからだという。
偏狭なナショナリズムを徒に刺激するのはよくない、という一般論は正しいかも知れない。
しかし、今回の件にはまったく当てはまらないだろう。
もし、政府筋がそう考えたとしたら、ずいぶん国民をなめた話だ。
まさかそんなことはあるまいが、そういうカングリをさせてしまうことがそもそも間違いだろう。
当初、限定公開が許されたされた国会議員の感想だって、余り自慢できるようなものではあるまい。
議員のコメントの記事を見てもらいたい。
⇒2010年11月 9日 (火):政府は、誰に対し、何を謝罪するのか?
記者がとりまとめたのだろうが、コメントをみた限りでは、さして見識があるとは思えない。
参考になるのは、「ビデオを公開すべきか」「船長釈放は正しかったか」に対する○×の回答ぐらいである。
自分が動画を見たうえで、「公開すべきである」に×をつけたのは、以下の議員である。
今後の投票行動を考える材料として、煩を厭わずあえて記しておきたい。
衆院
民主=中井洽、小林興起、中川正春
社民=服部良一
参院
民主=前田武志、川上義博、水戸将史
社民=福島瑞穂
政府がビデオを公開しない方針をとったことは、一般的な意味で、明らかに「失敗」であった。
「失敗」とは、失敗学の先駆者・畑村洋太郎氏によれば、次のように定義される。
人間が関わって行うひとつの行為が、はじめに定めた目的を達成できないこと
重要なことは、失敗を失敗と認めて、再発を防ぐことである。
失敗学では、失敗の原因を分類しているが、私見では、今回の場合、次の2つの要因が大きいのではないか。
誤判断:状況を正しく認識しなかったり、認識しても判断を間違えたりした価値観不良:価値観が、周囲と異なっていた
前者は、Googleに対し、捜査令状を突き付けた対応に象徴される。
立花隆さんは、YouTubeなどによって、1人1人が放送局を持ったようなものだ、と表現している。
失敗の一因は、インターネットの有するオープン性に対する無知であるといえよう。
なんという無駄な虚勢であることだろう。
伴天連相手に十手風を吹かせていたドメスティックな岡っ引きそのまんまでははないか。
そして、多くの場合、さらにダメージは大きくなるものだ。
しかし、菅内閣には、真摯に反省する姿勢が決定的に欠如していると考える。
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コメント
いやあ、ダメですね・・・これが性分というものだから仕方がないのかも知れないとは思うのですが、世間の批判がこうやって、一つの対象に集中しちゃうと「なにを~」なんて思っちゃうんですよね。間違っているのは分かるんですけどついつい応援しちゃいたくなったりして・・・
だから、選挙の時なんか時代遅れの人気のない政党に・・・
分かってるんですが・・・
まあ、こんな存在も何かのブレーキになればいいかって思ってはいるんですけどね。
投稿: 三友亭主人 | 2010年11月15日 (月) 23時23分
三友亭主人様
コメント有難うございます。
貴ブログを拝見していて、写真の美しさと文章の巧みさを(羨ましくも)楽しませて頂いています。私も見倣って、もっと「ゆとり」を持って生きなければ、と思うものの、おっしゃるように性分のようで。
それにしても、自公政権が懐かしいとは思いませんが、政権交代の現実がこんなものだとは・・・・・・。
投稿: 夢幻亭 | 2010年11月17日 (水) 06時12分