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2010年11月11日 (木)

ビデオ流出の正義と責任はどこに

尖閣ビデオのYouTubeへの流出元が、海上保安庁の職員だったらしい。
与野党やマスコミの間では、この「犯人」および「ビデオ」の扱いをめぐってさまざまな意見が交錯している。
私の意見はこれまでも述べてきたように、単純であり、ビデオを広く公開することが「正義」であり、公開を渋ってきた政府の意思決定者(特定するならば、菅首相および仙谷官房長官)に第一の責任がある、ということに尽きる。

Ws000000_2ビデオ流出の経緯は表の通りである。
論点は多様だが、中心は、海保職員の行為が国家公務員法の守秘義務違反にあたるかどうか、である。
構成要件的には、このビデオが「職務上知り得た秘密」に該当することが必要であり、最高裁判例では、国家機関が指定しただけでは不十分で、「①世間に知られていないこと、②秘密として実質的に保護する価値があること」の2つの要件が満たされなければならない、とされる。

私は、②に関して、秘密として保護する価値があるどころか、秘密を保とうとして重大な国益が毀損されつつあると考える。
守秘すべき理由は何か?
当初の説明は、「証拠物件だから」というものであった。
つまり、刑事訴訟法の手続き上、公開するのは具合が悪いということである。

それも容疑者を起訴するということが前提のはずである。
中国人船長を釈放してしまった現在では、実質的な意味を持たない。
「外交上中国に配慮する必要がある」という理由はどうか?
どうやらこれがホンネということのようだ。

しかし、中国に配慮することと「おもねる」ということは違う。
政府は、「正義」よりも上位に、配慮を置いているのではないか。
その結果得られる果実は何か?

ハーバード大学のマイケル・サンデル教授『これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学』早川書房(1005)という本が書店の平台を席巻している、と聞いたのは大分前のことである。
NHK教育TVで放送された「ハーバード白熱教室」という番組が火付け役のようである。
マイケル・サンデル教授ならば、この問題をどう捌くであろうか。
惹句では、次のように問うている。

1人を殺せば5人が助かる状況があったとしたら、あなたはその1人を殺すべきか? 金持ちに高い税金を課し、貧しい人びとに再分配するのは公正なことだろうか? 前の世代が犯した過ちについて、私たちに償いの義務はあるのだろうか――。

百歩譲って、海保職員の行為が国家公務員法に違反するものだとしよう。
それでも、その違法性は可罰的ではないと考える。
ビデオを多くの人が見て、政府がなぜ公開を渋っていたかを考えることができる状態の方がはるかに、社会にとっては良いだろう。

それにしても、もっと早く公開していれば、こんな騒ぎにならなかったはずである。
こともあろうに、仙谷官房長官は、政治家の責任と行政職の責任は別だとして、責任はもっぱら海上保安庁などにあるかのような物言いである。
都合のいい時だけ「政治主導」を振りかざす。何とも気楽なものである。

馬渕国交大臣の責任も云々されているようだが、トカゲの尻尾切り(失礼)で収束させようとしたら大間違いというべきであろう。
馬渕大臣には、八ツ場ダムの対応をしっかりしてもらいたい。「脱ダム」はムダな公共投資見直しの「一丁目一番地」だったはずである。
もし「脱ダム」が間違っていたとするならば、再度総選挙をやりなおすべきである。

「尖閣問題での政府の対応はベストだった」と語った蓮舫大臣は、流出ビデオを見てもなお、前言を修正する気はないのだろうか?
⇒2010年10月 3日 (日):尖閣問題に対する蓮舫大臣の強弁
「過ちて改めざる是を過ちと謂う」という古典的な言葉もある。

政権交代はしたものの、「(国)民は依らしむべし、知らしむべからず」を地で行くような政府が出現しようとは。
この期に及んでも、政府に異を唱える(つまり脱藩の)志ある民主党の議員はいないのだろうか?

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