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2010年10月 4日 (月)

国防委員会と党中央軍事委員会/「同じ」と「違う」(17)

金総書記の三男のジョンウン氏が、党中央委員と党軍事委員会副委員長に選出されたことについては既に触れた。
⇒2010年9月30日 (木):権力の世襲と権威の世襲/「同じ」と「違う」(15)
北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)における最高軍事指導機関は、従来国防委員会と位置づけられていた。
国防委員会はいかなる組織か?

朝鮮民主主義人民共和国国防委員会は、1972年12月27日採択の社会主義憲法により設置。当初、中央人民委員会傘下機関だったが、1990年5月、最高人民会議決定を通して中央人民委員会から分離した独立機関となった。
1992年4月、国家主席と国防委員長の兼職規定が削除され、金日成(国家主席)に代わり、1993年4月9日に金正日が国防委員長に就任した。
1998年の憲法改正によって国防委員会は、人民武力部(国防省)を中心とする国防・軍事系中央機関の設置・廃止、重要軍事幹部の任免、戦時状態の布告などを行うことが規定された。国防委員長は「国家の最高職責」とされ、一切の武力を指揮・統率し、国防事業全般を指導すると憲法でうたわれているが、実質的には「全ての権力を無制限に握る」といえるだろう。
2009年の憲法改正では国防委員長の権限が拡大されて、「国家の全般事業を指導する」、「外国との重要条約を批准又は廃棄する」、「特赦権を行使する」などが規定された。
中央政府傘下の国防委員会が、軍を一元的に掌握・指揮するのはソ連をはじめとするほとんどの社会主義国と一致していた。1990年に独立機関となったときから北朝鮮独自の仕組みに転じたと言える。軍の指令系統に関してソ連と違ったシステムを採用している国家としては中国、ユーゴスラビアなど挙げられる。

Wikipedia100901最終更新

ジョンウン氏が、国防委員会ではなく、党中央委員と党軍事委員会副委員長に選出されたのはなぜか?
産経新聞は、久保田るり子記者の署名記事で、次のように解説している。

韓国の情報関係者は「今回の人事の目的は、後継体制の指示命令系の整備だ」と分析する。同筋は「今後は党軍事委が中長期の戦略を決め、国防委員会がこれを権威付ける形になるのではないか」と予測する。
一方、日本の専門家は、ジョンウン氏の党側の肩書は重要と説明する。中国など共産国家で軍は「党の軍隊」である。胡錦濤国家主席は党総書記で党中央軍事委員会主席だ。党が軍を掌握できているかどうかは権力基盤の安定にかかわる。
今回の人事については「北朝鮮が党が軍を支配する権力構造を回復する証しとして、ジョンウン氏を党側軍事組織のナンバー2に据えた」と分析する。中国が北朝鮮の暴発を警戒して「党」の軍への支配再構築を求め、北朝鮮がそれに応じたという見方だ。「中国は今年に入り、北朝鮮の内政への言及も公表して圧力をかけていた」(北朝鮮専門家)。北朝鮮は支援の多くを頼る対中関係を最も重視、金総書記は今年2度も訪中した。
国防委員会の威光は、金総書記独裁体制下では維持されようが、金総書記の死亡など不安定期に入れば、機能するかどうかは不透明だ。また将来、ジョンウン氏が国防委員会入りして、両方の地位を占める可能性もある。北朝鮮で起きている変化の全容はまだつかめていない。

中央軍事委副委員長は正銀氏のために新設されたとみられるという。
正銀氏の後見役である金総書記の義弟、張成沢(チャンソンテク)国防委員会副委員長や、その側近とされる崔竜海(チェリョンヘ)氏も中央軍事委委員に選ばれた。
金総書記だけだった政治局常務委員には、金永南(キムヨンナム)最高人民会議常任委員長、崔永林(チェヨンリム)首相、趙明禄(チョミョンロク)国防委員会第1副委員長、李総参謀長が選出され、計5人となった。

正銀氏と金総書記の後継者としてのお披露目における違いを見ておこう。
毎日新聞によれば次のようである。

金総書記が公式の場に初めて登場した80年10月の第6回党大会で、政治局常務委員、書記、中央軍事委員という党の主要3機関に入ったのに比べると、正銀氏の後継体制作りはまだ初期の段階ともみられる。
一方、正銀氏がまず党中央軍事委に入ったことは、休眠状態だった同委を活性化させ、軍を党の指揮下に置くという本来の姿に戻す方針を明確にしたものといえる。金総書記が同じく委員長を務める国防委員会との関係は明確になっていない部分もあるが、今後は二つの組織が連携して軍を掌握することになりそうだ。
http://mainichi.jp/select/world/news/20100929dde001030007000c.html

「民意」に振り回されるのも問題だと思うが、「民意」にまったく関係なく国の指導体制が決まるよりは遥かにいい、とはいえる。

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