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2010年10月 8日 (金)

冤罪と推定無罪/「同じ」と「違う」(22)

法律にはそれぞれ立法の意図がある。
普通、それは法律の冒頭部分に書かれている。
検察審査会法も、「第1章 総則」で次のように規定している。
http://www.houko.com/00/01/S23/147.HTM

第1条 公訴権の実行に関し民意を反映させてその適正を図るため、政令で定める地方裁判所及び地方裁判所支部の所在地に検察審査会を置く。ただし、各地方裁判所の管轄区域内に少なくともその一を置かなければならない。
第2条 検察審査会は、左の事項を掌る。
1.検察官の公訴を提起しない処分の当否の審査に関する事項
2.検察事務の改善に関する建議又は勧告に関する事項

小沢一郎・元民主党代表の資金管理団体「陸山会」の土地取引事件で、東京第五検察審査会の判断-政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪で強制的に起訴すべきだとする「起訴議決」は、上記に照らして妥当なものと言えるだろうか?
東京地検特捜部は小沢氏を不起訴(嫌疑不十分)としているので、「第2条の1.検察官の公訴を提起しない処分の当否の審査に関する事項」について審査したわけである。

Tky201010040400_3左図にみるように、今度の検察審査会の審査は第2段階の審査である。
結果として、小沢氏は強制的に起訴されることになった。
世論は、小沢氏は灰色であり、裁判の場で黒白を明確にすればいい、という声が多数のようである。
確かに、法廷で堂々と自分の主張し、それで無罪を獲得すればいい、というのは1つの考え方であろう。
検察審査会の議決書においても、以下のように書かれている。

検察審査会の制度は……嫌疑不十分として検察官が起訴を躊躇した場合に、いわば国民の責任において、公正な刑事裁判の法廷で黒白をつけようとする制度であると考えられる。

審査の対象は何か?
陸山会が都内の土地を購入したことに伴う資金の流れを、政治資金収支報告書にどう記載したかをめぐる容疑。陸山会は04年10月に小沢氏からの借入金4億円を使い、土地を約3億5千万円で購入したのに、04年分ではなく05年分の政治資金収支報告書に支出として記載したことであり(そのこと自体は会計責任者の問題)、小沢氏は、その共謀者という位置づけである(と議決書は書いているように読める)。

私などは、小沢氏が収賄をしたとか、ゼネコンから裏金を不当に受け取っていたかのように錯覚してしまうが、政治資金収支報告書の記載が、2004年か2005年かという問題に「過ぎない」。
しかも、小沢氏が共謀者であるというのは、会計担当者が小沢氏を「尊敬し、師と仰いでいる」から、というようなことが根拠とされている。
虚偽記載は虚偽記載だ、ということであろうが、与党国会議員の半分近くが自党の代表に、言い換えれば総理大臣に、と投票した人物の容疑としては、肩透かしをくらったような気分である。

私も、小沢氏をクリーンな政治家だと思っているわけではない。
下図のようなグラデーションを考えた場合、相対的には右の方に位置するだろうと思う。
Img_2

「李下に冠を正さず」とも言われる。
しかし、真っ白な(有能な)政治家というのもイメージしにくいというのが大人の判断であろう。
状況によっては、李下であっても冠を正すことが必要になるかも知れない。
「推定無罪の原則」とは、「検察官が被告人の有罪を証明しない限り、被告人に無罪判決が下される(=被告人は自らの無実を証明する責任を負担しない)」ということを意味する(刑事訴訟法336条等)。
Wikipedia100910最終更新

説明責任ということがいわれるが、被告人に説明責任はないということだ。
「疑わしきは罰せず」という表現も同様の意であろう。
検察審査会の制度が、「議決書」に書かれている通りだとしたら、「推定無罪の原則」と相反することにならないだろうか?

この点に関して、保坂展人さんも違和感を表明している。
http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/54614101b0607380a6dd0692cf773a04

「有罪かもしれないから起訴すべき」「黒白つける」という記述には、私は違和感を覚える。「明らかに有罪と証明出来るから起訴する」「有罪は黒の証明された時に、シロは証明が不十分だった時に」というのが刑事裁判の原則ではないのだろうか。

政治家の説明責任は別だ、という考え方もあるだろう。
しかし、「ない」ことの証明は一般に難しい。
冤罪が後を絶たないことが「ない」ことの証明の難しさを示している。
取調べの状況を可視化しようという動きがあり、基本的にはそうすべきだと思う。
しかし、自分に不利なことについては、黙秘する権利も認められているのであり、透明化することが直ちに被疑者の利益に繋がるわけでもない。

検察審査会自体が、不透明な霧に包まれている。
どのような審議が行われたのか、プロセスは一切開示されていない。
審査申立人も「甲」と記されているだけである。
夕刊紙「日刊ゲンダイ」101007によれば、検察審査会11人の平均年齢は30.9歳であること「だけ」が明らかになった。
母集団は有権者すなわち20歳以上だから、有権者の平均年齢を考えると過半は20台の前半となるのではないだろうか?

民主党は、岡田克也幹事長が、党の機関で「処分」を議論するということだ。
つまり、「疑わしきは罰しよう」ということだろう。
クリーンであろうとすることが、白ではなく暗黒の社会を招いてしまいかねないのではないか。
推定無罪の原則が貫徹されれば、冤罪はぐっと少なくなると思われる。
しかし「魔女狩り」は大衆心理である。
誰か(決して自分はその中には含めて考えない)をスケープゴートにして、身を守ろうとする。
自分自身がそういう心的傾向があることを自覚しつつ、クリティカル思考に努めたい。

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 現在の我が国は、過度の少子化でで将来をあきらめつつあるのか?や、孤独な老人死、育児放棄、深刻な問題がたくさんです。現代社会は幸福なのか?それなのに与党の民主党を悪党と呼びながら議院連中のぶざまで、見苦しくもあわれな姿・情報を知り、毒舌風に青年の主張してみました。いつもの"おもしろ写真"では「民主党横峯良郎参議院議員のヤクザ(暴力団)がらみ」「民主党の女性大臣:蓮舫氏のファッションリーダーとしての賭け」「田中角栄元首相の弟子の小沢一郎氏」「離党も議員辞職もしない小沢一郎氏」等々を貼ってみたのです。この先の日本が心配になり始めた自分でありますが今後もたまに笑える様な写真でおもしろく分かりやすく記事にします。遊びに来て下さい。 (^_-)-☆ トラックバックをさせて戴きたく思っております。

投稿: 智太郎 | 2010年10月10日 (日) 18時35分

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