権力の世襲と権威の世襲/「同じ」と「違う」(15)
28日に開かれた朝鮮労働者党代表者会と党中央委員会総会は、金総書記の三男のジョンウン氏を、党中央委員と党軍事委員会副委員長に選出するなどの人事を決定し、一日で閉幕した。
いかにも慌ただしい。
関係者らによれば、水面下で「軍」「党」「親族」の3つの勢力の駆け引きがあったようだ。
結果的には、「党が管理する先軍政治」ということだ。
先軍政治は、次のように解説されている。
Wikipedia100511最終更新
北朝鮮で出版された文献をみると、ほかの社会主義国は、労働者階級の党(共産党など)がまず建設され、それに基づき軍が建設されるという「先党後軍」の「先労政治方式」を採っているが、北朝鮮では逆に、金日成によって朝鮮人民軍の前身である朝鮮人民革命軍がまず創建され、祖国解放を成し遂げた後に朝鮮労働党が創建され、続いて軍を正規武力に強化発展させ、建国偉業を成し遂げたとしている。また、ソ連やルーマニアの社会主義政権崩壊を例に挙げ、それらの国々では軍事の問題を正しく解決しなかったことで、軍が反革命に同調してしまい、政権崩壊に導いたと分析している。
つまり、先ず「軍」というこである。
この結果、経済分野でも軍の影響力が大きくなり、傘下の企業を通じて正規の輸入から密輸までを手掛けるようになり、市場に出回る物資を握った。
相対的に「党」の力は弱くなる。
党が主導した昨年11月のデノミは、軍が物資流通を減らしたために失敗したといわれる。
軍の肥大化を警戒し、党が軍を監視する枠組みを、実妹の金慶姫氏や彼女の夫の張成沢氏が進言した。
昨日の図にも示したように、実妹らが党内要所に配置され、先軍政治の旗は降ろさないが、党が管理する体制になったというわけである。
しかし、軍にも相応の配慮をしている。
李英浩軍参謀総長を政治局常務委員とする一方で、張成沢氏を政治局員候補にとどめた。
微妙なバランスである。
日本経済新聞100929
ところで、このような「最高権力の世襲」というのは、近・現代国家としては異例である。
世襲を正当化するものは何か?
その家系が他に比べ、特別に秀でているということであろう。
言い換えれば、貴種の存在を認めるということである。
わが国でも、憲法で次のように元首の世襲が規定されている。
第二条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範 の定めるところにより、これを継承する。
大日本帝国憲法では次のようであった。
第1条 大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス
第2条 皇位ハ皇室典範ノ定ムル所ニ依リ皇男子孫之ヲ継承ス
皇室典範の見直し論議は沈静化しているが、世襲によって地位が受け継がれるというのはどう理解すべきだろう。
天皇は権威であって権力ではない、ということのようだが。
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