尖閣諸島事件の船長を釈放
何とも釈然としない感じが残った。
尖閣諸島の事件で逮捕されていた中国人船長が、唐突に釈放された。
尖閣諸島沖の日本領海内で中国漁船と石垣海上保安部の巡視船が衝突した事件で、同保安部が公務執行妨害の疑いで逮捕した中国人船長について那覇地検は処分保留のまま釈放した。中国のチャーター機で帰国の途に就いた。
日ごとに両国の関係が泥沼化するのは双方に不利益をもたらす。日中両国にとって早期決着が求められる事案だったわけだが、解決の在り方には疑問が残る。
那覇地検は「国民への影響や今後の日中関係を考慮すると、これ以上身柄の拘束を継続して捜査を続けることは相当でない」と日中関係に言及した。捜査機関が外交問題を理由に挙げるのは異例である。高度な政治的判断があったことをうかがわせる。
拘置期限前の決定だが、那覇地検は福岡高検、最高検と協議。巡視船の損傷は航行に影響がない、乗組員が負傷していない、衝突はとっさに取った行動で計画性は認められない―ことなどを挙げた。
……
仙谷由人官房長官は釈放決定を検察の判断としているが、検察が外交問題に口を挟むのは常識では考えられない。民主党外交の危うさを露呈してしまった。
尖閣諸島は歴史的にみても、日本固有の領土である。
1885年以降再三、現地調査を行い、無人島で清国の支配が及んでいないことを確認した上で、95年1月に閣議決定し、正式に日本領土に編入したというのが政府の見解である。
……
今回の決着は、国際社会に日本外交は中国の圧力に屈したと映ったのは間違いない。
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-09-25_10513/
釈然としない理由はいくつかある。
その第一は、那覇地検の説明である。
説明の通りだとすると、地検が政治的判断をした、ということになる。
これまでの報道では、検察ならびに政府は、日本の法律に照らして、証拠に基づき粛々と処分するという方針だった。
フジタの社員が河北省で拘束され、人命の危険もあるとの判断だったようだ。
しかし、本来全く別の事象であるはずである。
そこに真因があるのならば、内閣の判断で行うべきであり、結果的にバーターの材料とするにせよ、交渉の過程をオープンにすべきである。
仙石官房長官は、地検独自の判断であり、それを了とする、と説明した。
柳田法務大臣も、指揮権は発動していない、と話している。
しかし、常識的に考えてそんなことはあり得ないだろう。
法と証拠に基づき捜査を進めるとしていた検察当局が、「国民への影響や今後の日中関係を考慮」し、独自の判断をした?
明らかに政府の意向が反映しているはずである。
そうだとすれば、官房長官は重大な虚偽の説明をしていることになる。
「検察一体」という言葉がある。
那覇地検の説明は、検事総長の説明でもある。
検事総長に指示できるのは、指揮権を持った総理大臣と法務大臣である。
海上保安庁も気の毒である。
事実上、自分の職務を否定されてしまったのだ。
那覇地検も同じである。
苦しい説明を強いられただけでなく、ハシゴを外されてしまった。
たまたま(?)菅総理大臣も、前原外務大臣も海外滞在中である。
外交のトップ2人が不在の時に、かくも重要な問題を決定してしまっていいのか。
国家の要件は、領土、人民、主権である。
今回の決定は、国家存立の基盤に係わるものである。
三たび、「菅首相続投で、本当にいいのだろうか?」と問いたい。
⇒2010年9月11日 (土):菅首相続投で、本当にいいのだろうか?
⇒2010年9月21日 (火):再び問う、「菅首相続投で、本当にいいのだろうか?」
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コメント
尖閣衝突事件も押し切られたら・・何もかも?
尖閣諸島は日米安保の範囲内のハズ?
中国と長年対峙して来た東南アジアとも相談すべき!
圧力に屈しないように自衛隊は増強すべき。
ダメですか?
投稿: 太郎 | 2010年9月26日 (日) 08時45分
太郎様
コメント有り難うございます。
日米安保条約の適用範囲と適用条件については、直ちにはそうだとは言えないようです。東南アジア諸国とは積極的に連携を考えるべきだと思います。
この問題によって、菅政権の脆弱性が明らかになったと思います。
投稿: 管理人 | 2010年9月30日 (木) 19時02分