民主党代表戦と西南戦争/「同じ」と「違う」(20)
民主党の代表戦をめぐって、次のような記事が目に入った。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2010090100977
菅直人首相は1日夜、都内で開かれた野田佳彦財務相のグループの会合であいさつし、不平士族に担がれ西南戦争で政府軍に敗れ、自刃した西郷隆盛に言及した。出席者によると、首相は「明治維新には西郷さんの力が必要だった」「西南戦争があって本格的な明治政府ができた」と指摘し、「政権交代以降、西郷さんはああいう末路を迎えた。これが大事だ」と述べた。
小沢一郎前幹事長に民主党への合流を勧めたのは首相自身。首相はかねて、その政治手法に疑問を呈しつつ、「小沢氏がいたからこそ政権交代できた」と話している。首相としては自身を大久保利通、小沢氏を西郷隆盛に例え、今回の代表選で同氏に勝利して、影響力を完全に排除することで、政権交代が完結すると言いたかったようだ。(2010/09/01-22:30)
菅首相の発言の正確な文脈は分からない。
しかし、この発言に接して違和感を感じたのは事実である。
それは、「代表戦が終わればノーサイド」という言葉との整合性を問題にしようということではない。
同一政党内の戦いであるから、ノーサイドが原則であるのは当然である。
菅内閣の発足時、みずからの内閣を“奇兵隊”になぞらえたことは記憶に新しい。http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100608/plc1006081924042-n1.htm
「私自身は草の根から生まれた政治家でありますので、草の根の政治という表現がひとつ浮かぶわけですが、もう少し元気が良いところで言えば、そうですね、まあ私の趣味で言えば『奇兵隊内閣』とでも名付けたいと思います。私は今は坂本龍馬が非常に注目されていますが、長州生まれであります。高杉晋作という人は逃げるときも早い、攻めるときも早い。果断な行動をとって、まさに明治維新を成し遂げる大きな力を発揮した人であります。今、日本の状況はまさにこの停滞を打ち破るためには果断に行動することが必要だ。そして、奇兵隊というのはまさに武士階級以外からもいろいろな人が参加をして奇兵隊をつくったわけですから、まさに幅広い国民の中から出てきたわが党の国会議員、これが奇兵隊のような志を持って、まさに勇猛果敢に戦ってもらいたいという期待を込めて『奇兵隊内閣』とでも名付けてもらえればありがたいと思っています」
よほど明治維新がお気に入りのようであり、政権交代を明治維新になぞらえたいようである。
私は鹿児島を本社とする会社の設立に関係していたことがあり、鹿児島には数えきれないほど足を運んだ。
特に、加治屋町の近くに事務所があったので、明治の英傑ともいうべき人物の多くが狭い町内で生まれ育ったことを知り、興味深かった。
さて、民主党代表選は、西南戦争と「同じ」であろうか?
小沢氏は、西郷隆盛のような最後をむかえるのだろうか?
菅首相が、組閣時には内閣を奇兵隊になぞらえ、代表選では自陣を官軍にたとえたことが違和感の主因のような気がするが、やはり西南戦争とは「違う」と思う。
ここでは、同じように小沢氏を西郷隆盛にたとえている勝谷誠彦氏のメルマガを引用しよう。
西南戦争では西郷は敗れた。しかし、平成の西南戦争ではあの時とは決定的に違うことがある。「幕府が生き残っている」のだ。幕府とは自民党のことである。
戊辰戦争では明治政府は徹底的に幕府を抹殺した。さきほども触れたようにだからこそ革命は成就したのだ。実は、小沢さんは民主党を掌握していた時には、同じことをしようとした。残酷なほどに自民党を追い込み、もう少しであそこは解党せざるをえなかったかもしれない。それは革命とはそういうものだと知っていたからだ。だが業半ばにして、菅・仙谷売国コンビは小沢さんを追った。
このことが明治の西南戦争とは違う複雑な展開を今後のことに与えると私は思う。
明治維新のころの幕府にも「いい幕臣、悪い幕臣」がいた。たとえば勝海舟とは西郷は気脈を通じて江戸開城に導いた。自民党もまたそうである。面白いことにいま、利権談合共産主義者たちが党内で急速に力を失いつつある。象徴的なのが森遅漏だ。息子の逮捕によって求心力がなくなり、安倍晋三さんの下克上が進んでいるらしい。日本国のためにはまことにいいことである。
2010年8月26日号。<自ら育てたチルドレン「私学校生徒」たちに迫られる小沢西郷は「平成の西南戦争」に決起するか>。
菅首相は、小沢氏を西郷に擬すとして、自分は誰をイメージしているのだろうか?
大久保利通?
小沢氏も尊敬する人物として大久保利通を上げていた記憶がある。
それはどうでもいいが、いつまでも明治維新気取りでいるのは終わりにして、喫緊の課題に全力投球してもらいたい。
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コメント
【言論と報道】ネットの影響力と民主党の取材拒否[桜H22/9/2]―外国人参政権を一足先に実現した民主党代表戦は憲法違反、よって無効です!!
ブログ名:「Funny Restaurant 犬とレストランとイタリア料理」
こんにちは。本日YouTubeで、チャンネル桜がかなりの人に見られているという内容の動画を発見しまブログに掲載した。チャンネル桜というと、数年前は、存続の危機にあって、少しの間ですが、放送を中止したこともありました。しかし、そこからかなり盛り返して、現状のような状況になりました。あまり、見ない人は、単なる右翼チャンネルと思っている方もいるかもしれませんが、彼らの報道姿勢には共感を覚えます。そうして、現在のマスコミ、今回の代表戦に関しても通り一遍の報道しかしません。少なくとも外国との比較からその異常ぶりを報道すべきと思います。いずれにしても、今回の民主党の代表戦の報道に限らず、このチャンネル桜のYouTubeでの視聴率高さ、何か現在のマスコミのあり方に最期の警鐘を鳴らしているように思えてなりません。詳細は是非私のブログをご覧になってください。
投稿: yutakarlson | 2010年9月 4日 (土) 00時35分