民主党におけるマネジメントの不在
企業という組織の運営管理において、マネジメント・サイクルの考え方は、いまや基本のキ、当たり前のコンコンチキの常識といっていい。
たとえば、次のように説明されている。
http://gms.globis.co.jp/dic/00225.php
企業が目的を達成するために、多元的な計画を策定し、計画通りに実行できたのかを評価し、次期への行動計画へと結びつける一連の管理システム。
そもそもは約100年前の、アメリカの鉄道建設に起源があるといわれている。当時は、過酷な労働環境のため鉄道建設従事者にストライキが多く、思うように建設が進まなかった。
その解決策として、作業目標を事前に定め、目標を達成できた者には、賃金が割り増しで支払われる能力給の制度が採用され、目標との間に差異が生じた場合には必要な修正が施された。
これにより、鉄道建設の生産性が向上したことから、次第に企業経営にも取り入れられるようになり、広く普及した。
ところが、政党という組織においては、このような当たり前のことが行われないらしい。
民主党の議員総会における参院選の総括の報道に接しそう思った。
総会で、執行部は、ひたすら平身低頭で陳謝を繰り返したという。
しかし、問題はその中味である。
民主党執行部は、参院選の結果について、次のような文書を用意した。
菅政権誕生で「V字回復」したが、消費税問題の提起が唐突感と疑心を持って受けとめられ、首相発言への信頼性、全体構想の生煮え感などを惹起させた。支持率の低落と「みんなの党」が無党派層を引きつけたことなどで議席を逸した。
確かに敗因の一面ではあるだろう。
消費税問題の提起の仕方は、戦術的にきわめて拙劣だったともいえる。
しかし、敗因の本質をこのように総括するのは、「分かっていない」と言わざるを得ないのではないか。
むしろ、財政再建は喫緊の課題であり、多くの国民は迅速に対処すべきだし、その中で消費税問題も避けて通ることができないと思っているだろう。
私は、民主党の敗因は、鳩山政権を含め、政権奪取後本当に真摯に国民の声に耳を傾けてこなかったことに尽きると思う。
個別の問題は多々ある。
口蹄疫への対処、高速道路の料金問題、子供手当て問題等々いろいろあるが、何と言っても「普天間基地問題」と「政治とカネ」の問題である。
社民党の連立離脱を招いた「普天間基地問題」は、菅政権になっても解決の道筋が見えてこない。
アメリカと沖縄の要求を両立させる解があり得るだろうか?
私には思いつかないが、菅首相は鳩山前首相の路線を継承しているようである。
最近の報道(産経新聞100731)によれば、自公政権下の現行案を下記のA、B2案の修正案に絞り込み、年内に最終案を政治決着させるという。
しかし、このシナリオ通りに行くのかどうか。
また、「政治とカネ」の問題については、首相と幹事長を辞職したことでケジメをつけたことになっているらしい。
まったく主体的な説明がないままに、である。
ケジメがついたと思っている国民は、圧倒的な少数に過ぎないだろう。
党勢の再構築は、マネジメントの原点に戻り、Planと現実とのギャップを的確に認識することから始めるべきだろう。
Planとは、昨年の衆院選のマニフェストであり、参院選における議席獲得目標である。
ギャップは何によってもたらされたのか?
真剣に問い直さないと、再び支持率が向上することはないのではないか。
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