行方不明高齢者
100歳を超える高齢者の行方が分からなくなっている例が、全国的に広がっている。
例えば、下表のようである。いささか食傷気味の感はあるが、所在確認のできない人の数は、調査が進展するに従って増えている。
最終的な数は、何を目処に判断するのだろう。
事情はそれぞれであると思われるが、例えば、川崎市の男性の状況は以下のようである。
川崎市幸区に住民登録され、所在不明になっている神奈川県で男性最高齢の百九歳について、男性の五女(74)ら家族四人が六日、埼玉県内で幸区の担当者に面会した。家族は「(男性は)一九八七年八月に出て行ってしまい、幸署に捜索願を出した。その後は音信不通。約十年前に失踪(しっそう)宣告を請求しようとしたが、捜索願を出したことを証明できなかった」と説明。埼玉への転出届は「事情があり出さなかった」と話したという。
東京新聞100807
これらの行方不明高齢者の中には、当該市区町村で最高齢である(はず)の人も含まれている。
私は、人口統計は最も信頼できる統計データだと思ってきた。
かつて、中国では戸籍があてにならず、正確な人口は分からないと言われていたが、これでは日本も同じことではないか。
東大阪市の場合、市役所の対応は次のように報じられている。
読売新聞100805
18人の所在不明が判明したのは、毎年実施する厚生労働省の統計目的の調査で、100歳以上の高齢者を対象に、6月から電話で所在確認調査を進めた結果、男女18人の行方がわからず、家族にも連絡が取れなかった。市はこの18人の介護保険の利用状況などを調査し、うち3人については今年度の介護保険料の納付やサービスの利用を確認した。しかし、残る15人中10人は長期間にわたって介護保険料の納付などはなく、長期所在未確認の事例として住民基本台帳から抹消するかどうかについて、以前から担当の市民課に相談していたという。
市役所の中の連携が悪いということであろうか。
100歳以上の高齢者が、全く介護サービスを受けた形跡がないとしたら不自然である。
ここにも個人情報保護法の問題が絡んでいるようである。
かつては、長寿番付というものが発表されていた。
「金さん、銀さん」の姉妹や泉重千代さんの名前は、全国的に知られていた。
行方不明にもかかわらず、年金が支払われ続けている例もある。
自治体の担当者は、死亡が確認されない限り、生存していると推定するようである。
しかし、もし故意に死亡届を出さないで年金を受給していたとすれば、詐欺罪に相当する。
厚労省は年金受給者については本人確認を実施することを決めたが、対象者は110歳以上という極めて狭い枠にとどめている。
「厚労省は、年金受給者と人口の数すら合っていないのを把握しているんです。これを全て調べたら莫大な規模の相違が出てしまい、職務怠慢を追及され責任問題にも発展するので小さいまま終わらせたいんでしょう」と同関係者。
http://www.cyzo.com/2010/08/post_5182.html
いったい、100歳以上というような年齢制限を外したら、生死の定かでない人はどれくらいいるのであろうか。
日本は長寿大国と言われてきたが、その実態も怪しくなる。
勝谷誠彦さんが指摘するように、死んだ人の死亡届が出されていない事実は、生まれた子供の出生届が出されていない可能性を暗示させる。
せめて人口データくらい精度の高い数値であってほしいと思う。
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