理想と現実との乖離(2)/社民党の場合
社民党の辻元清美氏が、7月27日離党届を提出した。
今後については「まったく白紙」だという。
離党の契機は、社民党が5月に連立から離脱したことだった。
政党には、それぞれ活動のバックボーンに、理念がある。
特に、社民党は、「私たちには理念があります」とオフィシャルサイトで広言するくらい、理念を大事にしてきた(はずである)。
それは、ひと言でいえば「社会民主主義」である。
そこから、次のような政策の基本が生まれる。
http://www5.sdp.or.jp/policy/policy.htm
“改革”と称して格差・貧困・不平等を拡大させ、“自己責任”と称して支援を打ち切り、人々に未来への不安を与えてきた自公政権による新自由主義。こうした流れに対し、社民党は社会民主主義の理念で、まずは“壊れた”日本社会のセーフティネットを構築し、すべての「人」が、「人」として生き、安心して暮らしていける社会を作っていきます。
連立離脱に関しては、党として、次のような声明を発表している。
http://www5.sdp.or.jp/comment/2010/dannwa100530.htm
1.福島党首の閣僚罷免は社民党の意思の否定であるとともに、沖縄県民の声を踏みにじるものである。鳩山内閣がそれを強行したことは連立政権を自ら壊すものであり、政権を共有できないことは自明の理である。したがって、政権離脱を確認する。
2.10項目の政権政策合意等の実現は、向こう4年かけた3党の国民への公約である。これについて政府ならびに与党にその意思を確認する必要がある。その結果によって古い政治に戻したくないとの多数の国民の意思を踏まえつつ、選挙協力の是非も検討する。
福島氏が閣僚を罷免されたのは、日米合意書へ閣僚として署名できない、としたため。
これについて、「社民党の『1丁目1番地』の平和と基地の問題に関し、(沖縄県名護市の)辺野古の海に基地をつくる政治に加担することはできない」とし、「筋を通してよかったとみんなから言われた。新しい政治を切り開きたい。これからは『与党』というわけにはいかない」と記者会見で語っている。
いわば、理念に殉じて与党の椅子を捨てたわけである。
一方、辻元氏は、離党の経緯について、自身のブログで次のように説明している。
http://www.kiyomi.gr.jp/blog/2010/07/27-2007.html
この間、連立政権への参加、普天間問題をめぐる政権離脱、そして参議院選挙という一連の出来事がありました。振り返って社民党の政権離脱は基本方針に照らしてやむをえなかったことでありました。私は、政治の場で筋を通す意義を大切に思います。市民の運動と連携していく重要性も十分認識し、共に行動してきました。一方で小さな政党にとって政権の外に出たら、あらゆる政策の実現が遠のいていくことも心配でした。何がこの先、社民党の正しい方向なのか最後まで悩みました。
……
私は国土交通副大臣を経験させていただきました。それは現実の矛盾の塊への挑戦であり、利害調整の最前線でした。
……
そんな中で、私は、現実との格闘から逃げずに国民のための仕事を一つずつ進めていきたいという思いが強くなりました。
結局、理念をとるか、現実をとるか、が社民党と辻元氏の岐路だったといえる。
連立離脱の際にも言われたが、苦渋の選択だったはずだ。
社民党が連立離脱をして「筋を通してよかったとみんなから言われた。」というのも政治のあり方の1つだろうし、福島氏が「現実との格闘から逃げずに……」というのも、別の形での政治のあり方だろう。
私は、現実的な有効性を第一に考えたい。
理念は重要だが、常に現実により検証されなければならない。
理念の維持が目的化すると、教条主義に陥るだろう。
特に政権与党の場合は、柔軟に対処すべきだろう。
とはいえ、最近の民主党の動きには疑問に感じるところが少なくない。
余りに原則に欠けるのではなかろうか。
国家戦略室の位置づけもそうである。
確固としたビジョンがあってこそ、柔軟性が意味を持つ。
いたずらに状況に振り回されて、その都度弁解やら言い訳を繰り返すのは見苦しいというべきだろう。
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