維持期リハビリテーションと医療保険/闘病記・中間報告(9)
5月末に回復期リハビリの専門施設を退院し、在宅で外来という形で通院してリハビリ治療を受けている。
発症後の経緯を一般化すると下図のようになるが、もちろんその経緯は人によってさまざまである。
2010年5月 9日 (日):中間報告(5)回復期リハビリについて 5月末に退院して自宅へ戻ったということは、左図でいえば、回復期から維持期へ移行した、と一応は考えられる。
つまり、回復期のリハビリを成功裡に終了することができたわけである。
「めでたし、めでたし」と喜んでいいのであろうか?
どうも、そうはいかないようである。
回復期と維持期は、概念的には線引きできるが、現実に回復期はここまでで、これからは維持期だ、というように、明確に区分できるものではない。
しかし、2006年の診療報酬改定により、ある意味でその境界が明確化された。
医療・介護の両保険制度におけるリハビリの役割分担が、原則として医療保険は改善を主体に、介護保険は維持を目的とすることになった。
そして、改善とは、急性期と回復期であるとされ、脳血管疾患の場合、医療保険の標準的算定日数が180日と定められた。
私が発症したのは、昨年の12月23日だから、180日は6月20日になる。
標準的算定日数を超えた患者については、1月に13単位に限りリハビリテーションの所定点数を算定できる、とされている。
1単位というのは、20分のことである。
つまり、維持期とみなされる患者は、1月に20分×13=260分に限り、医療保険の適用を受けることができる。
言い換えれば、それだけしか受けられない、ということである。
13単位が何によって決まったのか、療法士もよく分からないらしい。
要は、標準的算定日数を超えて継続的にリハビリを行う場合は、介護保険によるべし、ということらしい。
しかも、介護保険を利用開始後は、医療保険を利用することはできない、とされている。
もちろん、次のような規定もある。
ただし、特掲診療料の施設別基準等別表第九の八第一号に規定する「その他別表第九の四から別表第九の七までに規定する患者であって、別表九の九に掲げる場合については、標準的算定日数を超えた場合であっても、標準的算定日数の期間と同様に算定できるものである。
そして、次のように補足説明がある。
特掲診療料の施設別基準等別表第九の八第一号に規定する「その他別表第九の四から別表第九の七までに規定する患者であって、リハビリテーションを継続して行うことが医学的に認められる者」とは、別表第九の四から第九の七までに規定する患者であって、リハビリテーションを継続することにより状態の改善が医学的に認められる者をいうものである。
一読しただけでは何のことかと思うようなもってまわった表現であるが、要するに、医者が必要と認めればよろしい、ということである。
しかし、現場では、それは例外中の例外らしい。
実際は、煩雑なリハの計画書が必要で、診療機関では面倒なことはしたくないということらしい。
そして、そうなっているのは、制限を撤廃すると、医療保険制度が破綻するおそれがあるというのだ。
逆に言えば、それだけ多くの患者がより充実したリハビリを望んでいるということだろう。
知り合いの医者に聞いてみると、ほとんどの医者がリハビリの期限や量に対する制限には反対らしい。
しかし、医療保険を維持するために、現行制度のような制限は止むを得ないと考えているとも。
しかし、素朴に考えて、制度は患者の治癒に寄与するように設計すべきものではないだろうか。
制度維持(医療保険の破綻を防ぐ)ために治療に制限を設けるようなことは、まさに本末転倒ではないかと思うが、如何だろうか。
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コメント
いつも楽しく観ております。
また遊びにきます。
ありがとうございます。
投稿: 生命保険の選び方 | 2010年8月 7日 (土) 23時28分