理念と現実の乖離-日本振興銀行の場合
日本振興銀行の検査妨害事件で、前会長の木村剛氏が逮捕された。
木村氏は、金融維新の旗手として知られる。
東京大学経済学部卒業後、日本銀行に入行。営業局、企画局、ニューヨーク事務所、国際局など主要部局を歴任。
日本銀行を退職後、金融・企業財務に関するコンサルティング会社「KPMGフィナンシャルサービスコンサルティング」を設立、社長に就任した。
2002年に、金融庁金融分野緊急対応戦略プロジェクトチーム(通称竹中チーム)のメンバーと、金融庁の顧問を務めた。
また日本振興銀行の設立に携わり、社長に、後に会長に就任したが、2010年に辞任した。
日本振興銀行は、木村氏と東京青年会議所の有志らが、平成16年に、中小企業向け融資の専門銀行として設立。
大手銀行が手を出せなかった中小零細企業の資金需要に応えるため、無担保で年利7から15%で融資する。
「ミドルリスク・ミドルリターン」の新しい銀行のビジネスモデルのはずだった。
同行の主要な財務指標を、HPから引用する。
金融庁は、新規参入行に、開業3年目の黒字化を義務づけていた。
同行は、上記のサマリーのグラフに見るように、3年目の19年度に黒字化を果たした。
しかし、規模の拡大とウラハラに、21年度の経常損益が大幅に赤字化していることからも、実態は多分にムリを重ねていたことが窺える。
報じられているところでは、悪名高い旧商工ファンド(SFCG)との間で、債券売買の形をとって、出資法の上限金利を大きく上回る手数料を取得していた。
また、融資先約110社が加盟する「中小企業振興ネットワーク」の中核企業との間で、不良債権の付け替えを行っていたとされる。
中核企業とは、下図において、「中小企業○○機構」という名称のものである。
ネットワークは、任意団体であるが、実質的に銀行と個別企業との間にあって、外部からは銀行と個別企業の関係を分かり難くしている。
つまり、建前は「互恵互栄」であるが、内実は債権の焦げ付きを防ぐための迂回融資の受け皿とされる。
木村前会長らは、この会員企業との不透明な取引実態の発覚を防ぐため、業務用のメールを削除したと見られる。
木村前会長は、金融庁顧問に時、現在の金融検査マニュアルの原型を作ったとされる。
いわば、金融検査を熟知したプロ中のプロである。
どこに「抜け道」があるのかなどは、自分の庭を歩くようなものだろう。
竹中平蔵氏の盟友としても知られる。
この人がブレーンだった「小泉・竹中改革」とは何だったのか?
木村氏の逮捕に、政権交代が関係しているとすれば、民主党の不手際が目に余るにしても、再び自民党政権に戻るという選択肢はあり得ないのではないか。
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コメント
ホントに・・・
次から次へと事件がありますね。
この先、日本の国は大丈夫なんでしょうか???
なんだか頼りない・・・。
その後・・・順調ですか!?


ブログ拝見してますよ〜
いつも更新されてて凄いです。
でも、疲れないようにしてくださいね
私は平行線のまま現在に至っております。
いろいろ考える事も増える日々であります。
でも、そろそろ梅雨明け

大好きな夏なので・・・ファイト一発です!
投稿: RYOKO | 2010年7月16日 (金) 16時11分