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2010年6月17日 (木)

「恐竜の脳」の話」(4)山椒魚(続)

2010年5月23日 (日):「恐竜の脳」の話(4)山椒魚 の続き

山椒魚の「量」の増大によって(つまり、勤勉な労働力の増大によって)、人間は、生産と消費の活動レベルを高め、偉大な時代を迎えることになる。
山椒魚の取引に関して、ロンドンにおいて会議が開かれた。
テーマは、たとえば以下のようなものである(全部で37条項)。
・自国の山椒魚を、他国の領海内に送りこまないこと
・自国の山椒魚と他国の山椒魚とのあいだに、衝突が起こった場合に、ハーグの国際法廷に調停をゆだねること
……

山椒魚をある種の比喩と考えると、そのまま今の国際関係を表しているかのようである。
続けて、以下のような文章が続く。

これ(前記の37条項)に対して、いくつかの条項が否決されたが、それは、海洋諸国は、自国の山椒魚に軍事教練を課さない義務を負う、という英国の提案、山椒魚を国際化し、世界の水域の調整をその任務とする国際山椒魚事務局の管理下におくべきである、というフランスの提案、すべての山椒魚には、その所属する国家の焼き印を押すべきである、というドイツの提案、海洋国には、それぞれ一定の比率による数の山椒魚のみが割り当てられるべきであるという、もう一つのドイツの提案、山椒魚の過剰になやんでいる国にも、移住用の新たな海岸、もしくは海底の土地が割り当てられるべきである、というイタリアの提案、山椒魚(生まれつき黒い)に対する国際委任統治は、有色人種の代表として日本がおこなうべきである、という日本の提案であった。

何の予備知識もなしに読むと、国辱と受け取られかねない表現である。
しかし、作品が書かれた1936年という年を、次のような出来事の中に位置づけてみると、「大日本帝国」に対する痛烈な皮肉であることが分かる。

1931年9月:満州事変
1932年3月:「満州国」建国
1933年3月:国際連盟脱退
1936年2月:二・二六事件
1937年7月:廬溝橋事件、日中戦争始まる
いま振り返ると、坂道を転がるように、泥沼へ向かってつき進んでいた時代であった。

ロンドン会議の成果は、次のような新聞論評として語られている。

……ロンドン協定の条文にもられている山椒魚問題の非政治化こそ、世界平和を保証する、最も重要な前提条件の一つであることを、われわれは強調しておこう。とりわけ、山椒魚の非武装化は、種々の国家間に起こりうる海底紛争の可能性を少なくする。
ほとんどすべての大陸で、国境ならびに権力をめぐる紛争が、頻発しているにもかかわらず、少なくとも海の側からは、世界平和をおびやかす重要な脅威がぜんぜんないことは、事実である。……

何となくデジャビュ(既視感)を覚えるような文章であるが、現実は、シーレーン(sea lane)という言葉が古語になっていないように、海をめぐる国際紛争は絶えていない。
『文明の海洋史観』の著者であるわが静岡県知事・川勝平太氏は、この作品をどのように読んだであろうか?

佐藤優氏は、次の文章も、日本人に対する皮肉であるという。

山椒魚は外国語を、比較的気楽にそして熱心に学ぶのだが、彼らの言語能力には、奇妙な欠陥があった。それは一つには、発声器官の構造によるものであり、一つには、どちらかというと、心理的な原因によるものだった。たとえば、彼らは多音節から成る長い単語を発音するのが困難で、一音節にちぢめようとし、短く、すこしばかり蛙の鳴くような声で発音した。rと発音するところをlと発音し、歯擦音の場合は、心持ち舌たらずだった。文法上必要な語尾を落としたし、「私」と「われわれ」の区別が、どうしても覚えられなかった。彼らには、ある単語が女性であるか、男性であるかは、どうでもいいことだった(交尾期をのぞいて、性的に淡泊であることが、こういうところに現れているのかもしれない)。

確かに、言われてみれば思い当たる。というより、思わず膝を打ちたくなる気がする。
佐藤氏は、これを、平均的欧米人の日本人に対する偏見が、さりげなく埋め込まれているのだ、という。
確かに、上記の描写は、秀抜であると同時に侮蔑的である。
私も、血圧対策としてすっかり「草食系」 にならざるを得ないのだが、やはり「肉食系」に比べれば、日本人は本来的に性的に淡泊になのだろうか。

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