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2010年5月16日 (日)

「恐竜の脳」の話(3)ホリスティック医学の可能性

近代科学は、論拠をもとにした論理的推論によって組み立てられるが、同時に因果関係の再現性が重視される。
つまり、他人による追試という検証を経て、はじめて「真」であるとされる。
近代医学もまたそうである。
新薬や新しい施術の方法は、治験とよばれる十分な追試を経てオーソライズされる。

上記のような近代科学をベースとした医学は、基本的には西洋を中心として発達したので、西洋医学と呼ばれている。
西洋医学の特徴の一つとして、電子技術の発達によって開発されたさまざまな検査装置の利用がある。
MRI、CTスキャナー、超音波装置、胃カメラ等は、私もお世話になっている。
これらの装置類は、主として、特定の部位・器官の状態を細密に知るのに役立っている。

しかし、人間の身体というのは、きわめて高度に複雑であり、必ずしも因果関係が明確とは限らない。
特に、「脳」に係わる問題はそうである。
つまり、西洋医学的な方法の進歩は著しいが、同時に、限界があるということになる。

西洋医学に対するものとして、東洋医学と呼ばれる方法論がある。
たとえば、漢方薬や鍼灸などである。
西洋医学が、身体の器官を個別に、できるだけ細かく把握して対処しようとする(分析的)のに対し、東洋医学は、身体を全体として捉えようとする。
東洋医学を象徴する言葉として、「気」がある。

厳密な因果関係や再現性に拘らない東洋医学は、往々にして非科学的なように扱われてきた。
民間療法などとよばれるが、アカデミックな検証を経ていない、ということであろう。
しかし、複雑系の代表ともいえる人間に係わる諸現象は、パーツを細かく捉えることでは限界があることも当然である。
そこで、西洋医学的の方法に、東洋医学的な視点を取り入れることが試みられている。
ホリスティック医学と呼ばれる考え方である。

ホリスティック(holistic)とは、「全体論、全体観」を意味するholismに由来する。
かつて、畏友北矢行男氏によって提唱され、ブームにもなった「ホロン経営」は、組織と人間という古典的な経営の問題に対して、個の確立という視点からアプローチしたものであるが、「ホロン(holon)」も同じ語源である。
参照)北矢行男『ホロニック・カンパニー』TBSブリタニカ(1985)
特に、医学においては、「全体観的治療《人を肉体と精神の統一体と考えて治療する》考え方」として用いられる。

もう20年ほど前のことである。
ホリスティック医療を実施する施設を作りたい、という企画が持ち込まれたことがある。
そこで、実際にホリスティック医療に携わっている研究者と、現地調査に出かけた。
現地とは、関係者の間で聖地扱いされている、記憶に間違いがなければOrcas islandというアメリカ西海岸のカナダとの国境近くの離島である。
シアトルから北に向かって、ブリキのおもちゃのような水上飛行機に乗って行った。

風光明媚な静かな島だった。
その島の森の中に、教会が建っている。
その教会で、深夜に集まりがあった。
月の光以外には外部は漆黒の闇で、室内には僅かにロウソクの光が揺らめいている。
そこで、一緒に行った研究者は、自分の頭部を指して、「いま、ものすごく気が渦巻いている」と、ひどく興奮した口調で言った。
残念ながら、私には「気」は何も感じられなかった。
同行した会社の若い人間も、周りの様子を「気味が悪い」と私だけに聞こえる声で言った。

結局、その企画は実現に至らなかった。
しかしながら、そのとき、「気」を体感できなかったことは心残りである。
それは、多分、私に「恐竜の脳」の要素が足りなかったからであろう。
ホリスティック医療は、今後の医療のあり方を示していると思うし、ホロン経営という考え方や西大條ドクターの説なども、同じ方向を示すものではなかろうか。
そして、いささか先走っていえば、西洋文明がアルファベットを要素として構成しているのに対し(分析的)、東洋文明が漢字という語そのものが意味を持つ表意文字を基礎としていることに対応しているように思われる。

Orcas islandでの体験は、「気」を感知できる人間とできない人間がいることを示している。
「気」は、オカルト(occult:神秘的なこと。超自然的なさま)の一種かも知れない。
そして、それを感知する力は、カルト(cult:狂信的な崇拝)と紙一重でもあろう。

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