専門家による「八ツ場ダム計画」擁護論(2)中条堤の遊水効果
虫明教授は、明治29(1896)年に制定された旧河川法による利根川沖積平野の洪水対策の転換を次のように整理している。
1.江戸時代から旧河川法制定まで
連続堤防ではなく、重要地域を守る地先堤防だった。
埼玉平野の上流部に築かれた中条堤は、上流区域に洪水を貯留・調整する遊水機能を持っていた。
中条堤により、下流の洪水氾濫を大幅に軽減させ得た。 http://www.jice.or.jp/room/200811140.html
虫明教授は、利根川治水の歴史に関しては、関東学院大学宮村忠教授の利根川研究の成果を参照していると書いている。
以下、宮村教授による中条堤の洪水調節効果の解説を見てみよう。
http://www.kubota.co.jp/urban/pdf/19/pdf/19_3_3_4.pdf
利根川治水の基本は,中条堤の機構によってささえられてきた.近世における各種の河川事業も,この機構を前堤として成立,または可能であった.
明治中期からの流域杜会の動向は,激しくこの機構をゆさぶり,ついに利根川治水の要をとりのぞいてしまった.そのため,治水計画は混乱し,混乱の中から次第に明瞭に利根川東遷が位置づけられるようになり,同時に江戸川拡大の方向が成立してきた.しかし,中条堤機構が破たんした負担分は,やっと高水計画にのった段階にすぎない.
……
に大きな差が生じる.そのことを考慮しながら仮りに11,000m3/s の効果を中条堤に期待して,明治33年改修計画の流量配分図と付合わせれば,図15のような流量配分図がえがける.この図で八斗島における14,750m3/s という数字は,現在の計画洪水流量14,000m3/s とほぼ一致する.
したがってこの図は,あたかも,中条堤を放棄したその負担分を,下流河道で受けもたせている構図のようになる.この意味では,利根川の治水は,基準地点(八斗島)流量で明治33年改修計画と変っていないことになる,他の主要河川は,すでに安全率を高める方向にすすんでいるが,利根川の場合は治水史の観点からみる限り,従来の治水の要の代替えをつくった段階といえよう,
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