今後の治水対策のあり方
国土交通省は、11月3日に、新たな治水対策を検討する「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」(座長・中川博次京大名誉教授)の初会合を開いた、と報じられている。
「民主党政策集INDEX2009」では、国土交通政策の中で、大型公共事業について、次のように記載している。
大型公共事業の見直し
川辺川ダム、八ッ場ダム建設を中止し、生活再建を支援します。そのため、「ダム事業の廃止等に伴う特定地域の振興に関する特別措置法(仮称)」の制定を目指し、国が行うダム事業を廃止した場合等には、特定地域について公共施設の整備や住民生活の利便性の向上および産業の振興に寄与する事業を行うことにより、当該地域の住民の生活の安定と福祉の向上を図ります。
水循環の確保
日本の水循環の状況を見ると、省庁縦割りの水管理によって、自然環境を活かした循環とはなっていません。現状では細分化され目的も異なる森林、河川、海岸等に関連する各法律を、水循環という観点から環境指向的な一つの法律として統合します。
その際には、住民参加と情報公開により、地域の自然的・文化的・社会的特性に応じて住民が森林や河川の問題に真剣に取り組むことのできるシステムを法律に組み込みます。
また、水不足が深刻な国々の貧困層に十分で安全な水が供給されるよう積極的に援助します。
1.幅広い治水対策の立案手法
2.新たな評価軸の検討
3.総合的な考え方の整理
4.今後の治水理念の構築
日本には、およそ2,600のダムのがあり、その総貯水量は202億トンだという。
これに対して、日本の森林2,500万ヘクタールの総貯水量は、1,894億トンであり、なんとダムの9倍にもなる。 さらに森林には貯水機能だけでなく、水源かんよう機能や土砂流出防止機能もあって、その効用はコンクリートのダムを、はるかに上回っている、という説がある。
http://d.hatena.ne.jp/naoshi11/20091003
しかし、もちろん、森林の貯水機能を短期的に管理することは不可能である。
台風が接近して、大雨が予想されるからといって、空にして大雨に備えるというわけにはいかない。
渇水だからといって、臨時に水を供給するわけにもいかない。
森林の貯水機能は、あくまで流出のピークを低減しボトムを上げて平滑化するだけである。
したがって、治水対策や水資源対策を、森林の貯水機能だけで行うことは不可能である。
それが水循環の様相を大きく変えてしまった。
そのため、雨が降った時に雨水が河川に流れ込む量が増大し、その変化が急速化した。
また、人口の密集する下流部では河道を拡げることが難しくなった。
そこで雨水の処理を「河川対策」だけに頼らず、一時的に雨水を貯めたり、地下に浸み込ませたりして流域全体雨水の流出を抑える「流域対策」の両面から水害を防ぐ考え方が生まれた。
「総合治水対策」と呼ばれるものである。http://www.ara.go.jp/category/09_pd/bousai/water/kouzui/syowa/chisui/chisui.html
果たして、「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」において、総合治水対策を超える発想が出てくるのかどうか。
また、治水だけでなく、利水や親水などを含めた水循環のあり方が議論されることが必要だろう。
しかし、言うは易く、行うは難し、の典型でもある。
それこそ、「百年河清をまつ」にならないように期待したい。
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